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アドビはなぜサブスクに舵を切ったか 分業とKPI相関からビジネスをグロースさせるGTMチーム

2020/07/07 07:00

 モノウリからソリューション営業へ。その流れをひと足先に経験しているサブスクリプションビジネスを提供する企業のマーケティング・セールス組織に迫るインタビュー連載。第1回は、アドビでサブスク移行に立ちあった同社 執行役員 本部長 西山正一さんに伺った。

アドビがサブスクリプションに舵を切ったわけ

――西山さんのキャリアをあらためて教えてください。

1995年にパソコン周辺機器のメーカーに入社しました。いまとはパソコンの文化が違いまして、本体にパーツを足していかないと満足なスペックを得られない時代でした。「サウンドカード」という基盤を差し込まないと、パソコンから音が出なかったんです。とても楽しい仕事だったのですが、携帯電話が登場するなどの時代の変化を感じとり、当時所属していたマーケティング部門でユーザーとして製品を活用していたアドビに関心を持ち2001年に入社しました。

しかし、入社してひと月後に911が起こります。ネット・ITバブルの時代だったのですが、一気に状況が変わり入社2ヵ月後に担当していたウェブ製品の開発中止が決定されました。そこで当時リリースしたばかりだった「InDesign」の担当になります。その後、アドビのビジネスの変化を受けながら、「Photoshop」や「Illustrator」をパッケージにした「Adobe Creative Suite」のプロダクトマネージャーや、アドビのウェブ製品全般のマーケティング担当をする機会も得るなど、常に新しいプロジェクトに携わりながらマーケティングのキャリアを積みました。

そして、3年前にセールス部門内に営業戦略を指揮する「Go To Marketチーム(以下、GTMチーム)」をつくろうという話が持ち上がりました。ビジネスを成長させるために、セールス・マーケティングの具体的なプランをつくるチームです。

 
アドビ株式会社 デジタルメディア事業統括本部 営業戦略本部 執行役員 本部長 西山正一さん

――長年アドビに所属され、社会やビジネスの変化とともに「売り方」も変化したような感覚がありますか?

大きなターニングポイントがいくつかありました。私が入社した当時、アドビはアプリケーションを1つひとつ単独で販売していました。それはお客様にとってはけっこうタフな時代だったとも言えます。それぞれの最新版のバージョンが、ばらばらで新バージョンの開発サイクルもアプリケーションによって異なるという状況でした。アプリケーション間のファイルの互換性を担保するために、お客様側は特定のバージョンを固定して運用する必要がありましたし、新しいバージョンの便利な機能をお客様の都合で使っていただけないという決してウィンウィンとは言えない状況が続いたわけです。

ソフト間の互換性を担保できるよう、「Adobe Creative Suite」というパッケージの販売を始め、バージョン6までリリースされるのですが、この間に興味深いことが起きます。まずは2009年、リーマンショックにより経済の停滞が著しくなりました。同時にモバイル時代が幕開けとなり、ウェブのテクノロジーが日進月歩で変化していく。FlashとHTML5がわかりやすい例でしょうか。それまではウェブのブラウザの互換性の問題やバージョン違いを「Flashプレイヤー」というテクノロジーが吸収し、ブラウザ上で動作するリッチインターネットアプリケーションが普及したのですが、スマートフォンの時代となりFlashコンテンツが利用できなくなってしまいました。

ブラウザ側のテクノロジーで吸収しようという動きが急激に進み、それがHTML5と呼ばれるものなのですが、その時点ではまだ正式な規格は存在していませんでした。HTML4が標準規格であり、「HTML5に入れるべき技術はこうあるべき!」という新しい技術が毎週のように出てきます。その変化にアドビ製品が対応しなければならない。次のHTML5に入りそうな技術をカバーしないといけない。従来我々が1~2年開発サイクルでバージョンアップをしてきたタイミングと、世の中の回転がかみ合わなくなったのがちょうどこのころでした。

結論として出てきたのが、サブスクリプション形式。アプリケーションをサービス化し、技術革新に対応しながら、顧客が必要なときに機能を利用できるモデルへと自然に舵を切らざるを得なかった。景気の後退もあり、新バージョンの買い控えも起きますから、ふたつの課題を解決するための決断でした。

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