上流AI×人間の分類作業で実現する「傾向解析」
UpSighterは、営業担当者の営業トークの内容について傾向を把握できる製品だ。成績が優秀な営業のトークをモデル化して特徴を明示的にし、ほかの営業担当者のトークについて、抜けや漏れがないか、偏りがないかなど、成績優秀者とのトークとの違いをフィードバックとして出す。河野氏はここで「CogStructure」という情報分類技術を開発、特許を取得している。
AIとひと口に言ってもさまざまな技術があるが、河野氏はCogStructureを「AIの中でも上流のアプローチ」と説明する。「データを入れる前に人間の思考パターンが分類できれば、大量のデータがなくても高い精度で判別できる」(河野氏)。CogStructureは話した内容を要素に区切り、それがどういうロジック関係になっているのかを分類しているという。この分野では、「知識表現」といわれる領域だ。土台となっているのは、河野氏がたまたま見つけたと言うイギリスの認知言語学者のStephen Toulmin氏が約50年前に発表した論理モデルだ。
「”温泉に行きたい”と検索すると、SiriやAlexaなら人気の温泉ランキングがかえってくる。だが、私たちがやりたいのは、”温泉に行きたい”の本質部分を理解すること」(河野氏)
この場合、疲れているから癒しが欲しいのでは?→癒しは何になるのか?と進んでいくことで、「温泉にいくまででさらに疲れてしまう。それなら、近くにマッサージサービスがあるからそちらのほうが良いのでは?」と提案することも考えられるという。
「いまのインターネットには正解があるものしか解がない。いい聞き方をすればいいが、そうじゃないときは答えが得られない」と河野氏。これが最終的に目指す形だという。
UpSighterはまだそのレベルではないが、「この話題にさらに事例を話すと納得してもらえる」といったサジェスチョンを出すことはできる。仕組みはこうだ。まずはトークを録音してテキストに変換する。次に、テキストから「CogStructure」に変換するが、そこでは一部機械学習を利用しながら、人がアノテーションとしてタグ付けを行う。人が作業をすることでクオリティ担保が期待できる一方で、偏見やクセが入る可能性がある。そこで、単純化を徹底し「自動車の工場生産方式のように、多数の人が分類作業に関わっています」と言う。そうやって10以上の工程を経て、傾向解析が完了する。
これにより、特定の語句をどのぐらい使っているのかといったかんたんなことから、情報の種類別のトーク構成や、根拠となるロジックの有無を確認するなど複雑なことも割り出せるという。