リンクアンドモチベーションのグループ会社であるリンクアカデミーは、企業のリスキリング施策導入者層(経営者・人事担当者)と、リスキリング対象者層(経営者・人事担当者以外の従業員)を対象に、「リスキリング対象者層のITスキル教育」に関する調査を実施した。
※本記事での「リスキリング」とは、「現職とは異なる職種、特にデジタル職種に転換するためにスキルを塗り替えること」と定義する。
リスキリングに「既に取り組んでいる」と回答したリスキリング施策導入者の割合は、昨年度調査から36.7pt増加
全員に「“リスキリング”について、ご自身で何らかの取り組みをされていますか?」と質問したところ、2022年度調査では、リスキリング施策導入者層の回答は「既に取り組んでいる(15.9%)」「取り組むことを決めている・検討している(31.0%)」という結果となった一方、2023年度調査では、「既に取り組んでいる(52.6%)」「取り組むことを決めている・検討している(42.4%)」という結果となった。
リスキリングの取り組み状況については、全体的に(リスキリング施策導入者層とリスキリング対象者層ともに)昨年よりも進捗している様子がうかがえる結果となった。
また、現在どのような取り組み状況にあるのか具体的に聞いたところ、次のような回答を得た。
リスキリングの取り組み状況について
(2023年度調査。リスキリング施策導入者・対象者のすべて)※一部抜粋
- 【既に取り組んでいる】DX戦略を行っているためITスキルを習得する必要があり、資格試験などを中心とした取り組みを行っています(20代/女性/会社員(人事部門以外)/北海道)
- 【取り組むことを決めている・検討している】ITスキルが身についていない社員がほとんどですが、小売業である当社は今後スキルをつけてもらう必要性を感じています。その上で、何ができないか何ができるかを考えたいです(40代/男性/会社員(人事部門以外)/千葉県)
- 【取り組むことを決めている・検討している】DXにより今までとは環境が変わる可能性があると考えているため、リスキリングに取り組むつもりではいるが、具体的に何から取り組めばよいのか分からないのが現状(40代/男性/経営者/大阪府)
- 【既に取り組んでいる】現代社会に必要不可欠なデジタル分野で日本は世界的に遅れをとっているため、ITに関するスキルを幾つか身につける必要があると思う(50代/男性/経営者/東京都)
リスキリング対象者が企業側に求めていること、「ITスキルに関する研修の提供」が最多 昨年より17.2pt増加
リスキリング対象者層に「“リスキリング”について、会社側にどのような機会を求めますか?」と質問した。その結果、2022年度調査では、「ITスキルに関する研修の提供(34.8%)」「ITスキルに関するeラーニングの提供(29.5%)」「外部からのIT人材(指導者)の確保(25.4%)」が上位3つとなっていた。一方、2023年度調査では「ITスキルに関する研修の提供(52.0%)」と回答した人の割合が増え、「OJTの場の提供(40.0%)」と回答した人の割合も増加するという特徴も見られた。
また、「“リスキリング”によって具体的にどのようなスキルを高めたいですか?」と質問したところ、2022年の調査では「ExcelやPowerPointなどの基本的スキル(28.4%)」「マーケティングなどの知識(25.8%)」「プログラミングなどの高度なスキル(22.1%)」が上位3つとなった一方、2023年に行った調査では3位だった「プログラミングなどの高度なスキル(30.2%)」がもっとも多い回答となり、次いで「ノーコードやRPAなどの中程度のスキル(23.6%)」が続いた。
※「RPA」=ソフトウェアロボットによる業務自動化
※「SaaS」=クラウドサーバーにあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス(例:Googleスライド、Googleスプレッドシート、Googleドキュメントなど)
2023年度調査におけるDX推進における課題、3~4社に1社が「コア人材が不足している」と回答
リスキリング施策導入者層に、「DX推進においてどのような課題がありますか?」と質問した。その結果、2022年度調査では「そもそもDX戦略を描けていない(30.0%)」が最多となり、次いで「とくに課題はない(28.0%)」「プロジェクトを推進するコア人材が不足している(24.1%)」「DX推進のための投資判断ができない(22.3%)」が続いた。
一方、2023年度調査では「DX推進のための投資判断ができない(35.3%)」が最多となり、次いで「レガシーシステムが残ってしまっている(34.0%)」「プロジェクトを推進するコア人材が不足している(32.8%)」「そもそもDX戦略を描けていない(28.8%)」が続いた。
「特に課題はない」と回答した人の割合が28.0%から7.5%に減少したことから、リスキリングの取り組み状況が進捗したことで新たな課題が浮上したと見られる。
2022年度・2023年度調査ともに、IT人材の不足の解決方法は「中途採用」が最多回答
リスキリング施策導入者層に、「IT人材の不足はどのように解決しようとしていますか?」と質問した。その結果、2022年度調査では「中途採用(46.8%)」と回答した人がもっとも多く、次いで「既存従業員へのITスキル育成(30.0%)」「フリーランスなどへの業務委託(24.1%)」となった。2023年度調査でも同じく「中途採用(43.0%)」が最多となり、次いで「派遣会社やアウトソーシングの活用(34.7%)」「既存従業員へのITスキル育成(28.6%)」と続いた。
また、「既存従業員へのITスキル育成に向けて、どのような機会を提供していますか?」と質問した。その結果、2023年度調査では「ITスキルに関する研修の提供(46.3%)」「外部からのIT人材確保(43.4%)」「OJTの場の提供(39.9%)」が上位に挙がった。
既存従業員に高めて欲しいITスキル、2023年度調査の最多回答は「ノーコードやRPAなどの中程度のスキル」
リスキリング施策導入者層に「既存従業員には具体的にどのようなITスキルを高めて欲しいですか?」と質問した。その結果、2023年度調査では「ノーコードやRPAなどの中程度のスキル(27.8%)」「ExcelやPowerPointなどの基本的スキル(25.0%)」「プログラミングなどの高度なスキル(23.6%)」が上位に挙がった。
DX推進のために必要なのは、若手よりも「管理職や中堅層」の育成と認識
リスキリング施策導入者層に対して、「DX推進を阻む人的要因・課題をどのように解決したいと思いますか?」と質問したところ、「中堅層の(IT研修など会社主導での)育成(31.3%)」が最多となり、次いで「管理職の(IT研修など会社主導での)育成(30.3%)」「若手の(IT研修など会社主導での)育成(25.9%)」が続いた。
その理由について具体的に次のような回答を得た。
なぜ管理職や中堅層にIT研修が必要? そう思う理由とは
(2023年度調査。リスキリング施策導入者)※一部抜粋
- 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成/中堅層の(IT研修など会社主導での)育成】上が変わらないと社員がついてこない(20代/女性/会社員(人事部門)/東京都)
- 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成】管理職の意識が変わらないと会社全体が変わらないと思うから(30代/男性/経営者/東京都)
- 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成】まずは指導者がITについて熟知しないといけないと思うため(50代/女性/経営者/神奈川県)
- 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成/中堅層の(IT研修など会社主導での)育成】まずはトップからの研修が最適だと感じるからです(50代/男性/会社員(人事部門)/埼玉県)
調査概要
- 調査概要:「リスキリング対象者層のITスキル教育」に関する調査
- 調査期間:
1)2022年2月25日~2022年2月28日
2)2023年3月23日~2023年3月27日- 調査方法:インターネット調査
- 調査人数:
1)1,015人(リスキリング施策導入者層507人/リスキリング対象者層508人)
2)1,054人(リスキリング施策導入者層521人/リスキリング対象者層533人)- 調査対象:
企業のリスキリング施策導入者層(経営者・人事担当者)
企業のリスキリング施策導入者層(経営者・人事担当者以外の従業員)- モニター提供元:ゼネラルリサーチ