パーソル総合研究所が、大森隆司名誉教授(玉川大学)らと共同研究を実施し、対面と非対面(VRアバター、Web会議)のコミュニケーションの違いに関する実験結果を発表した。
実験方法
協力企業(IT系広告会社)の営業担当者13名を被験者として、「対面営業」「VRアバター営業」「Web会議営業」の3つのコミュニケーション形態において、「Ⅰ.アンケートデータ」「Ⅱ.心拍データ」「Ⅲ.映像・音声データ」を用いて比較分析した。なお、日常的な商談場面に近い状況で実験を行うため、営業部門責任者への事前インタビューを基に、次の3種類のシナリオを用意した。
シナリオB:新規顧客に対し、自社サービスを提案するが、懐疑的で厳しい質問が次々にされる
シナリオC:担当変更あいさつとともに受託案件の悪い成果報告を行うが、前任者や成果に対し、厳しい反応
実験結果
Ⅰ.アンケートデータ
被験者に対し、3つのコミュニケーション形態それぞれを体験した直後にアンケートを実施したところ、「自分の意図が伝わった」「相手の意図を理解できた」と感じる度合いは、「対面」がもっとも高い傾向にあった【図1】。また、営業場面を体験した被験者の感性評価を3つのコミュニケーション形態別に分析したところ、対面は「近く」「信用できる」が「緊張した」、VRアバターは「わくわく」するが「うそくさい」、Web会議は「誇らしい」と評価していた【図2】。
Ⅱ.心拍データ
被験者に対し、3つのコミュニケーション形態ごとに3種類のシナリオを設定し、商談実験を実施。それぞれの心拍数を比較分析したところ、「対面」での「初対面(実験1回目)」は心拍数が高くなるが、「VRアバター」「Web会議」では高くならないことが確認された。なお、実験順やシナリオにかかわらず全般的に、営業熟練者の平均心拍数は、非熟練者の平均心拍数より低い傾向も確認された【図3】。
Ⅲ.映像・音声データ
3つのコミュニケーション形態における被験者の営業場面を撮影した動画に対し、専門職者が意味づけ記録を行う「アノテーション」により、特徴的な行動傾向を分析したところ、高圧的な態度をとる営業相手には、営業経験年数にかかわらず緊張度が高まるが、「対面」よりも、「VRアバター」や「Web会議」などのオンライン環境のほうが心拍数を低く抑えられるという傾向が確認された【図4】。
出典:パーソル総合研究所&玉川大学「メタバース社会における対人インタラクション研究(Phase1)」