アドバンテッジリスクマネジメントが新型コロナウイルス流行前後における「産業医の産業保健活動への影響および業務内容の変化」の把握を目的とした、産業医対象のアンケート調査を実施した。
結果概要
- 産業保健業務を実施している企業において、「半年以内に予定外の追加業務が発生した」旨の回答は6割以上
- 新型コロナウイルス流行依然と比較して、約半数が予定外の追加業務の発生頻度に関して「多い」(「とても多い」「やや多い」)と回答
- 予定外の追加業務が実施された形式は「訪問」「電話・メール」「オンラインツール」がそれぞれ同程度の割合に
- 追加業務の内容、「コロナ禍にともなうメンタル・フィジカル対応」「休復職者対応」が多数
- コロナ禍にともなうオンライン対応業務は「休復職者対応」が最多
- コロナ禍以前と比較した、産業医職務での大きな違いは「オンラインツールの活用」「健康意識の向上」の声が多数
- 担当企業における健康課題「メンタル不調者等への対応」が最多。次いで「フィジカルの発生予防や重症化予防」
アドバンテッジリスクマネジメントによる調査結果の考察
- オンラインツールの活用が進む中、訪問対応が必要となる業務は依然として存在している。対面での対応が推奨されるメンタル不調者対応は、訪問することが望ましいとされているが、オンラインでできること、直接確認でなければいけないことの整理をよりいっそう進める必要がある。
- 新型コロナウイルス流行を契機に健康意識が促進され、企業における産業医の重要性も高まりを見せた。一方、感染症対策に傾倒しすぎてる動きには懸念する声も聞かれる。企業の疾病予防の意識が高まったことを契機に、健康教育施策を受け入れやすい環境になっているともいえるが、いまだ感染症対策が優先事項のため、そのほかの健康施策を講じる時間が確保できないという課題も明らかに。
- 従業員の在宅勤務・オンライン化が進む中、職場巡視の形骸化も懸念され、時代に合わせた巡視実施方法の検討は今後も引き続き必要である。課題として挙げられるメンタル面、フィジカル面の不調は目に見えづらい状況となっているため、人事労務部門と連携して注視していく必要性が高まっている。
- 休復職者対応については、アドバンテッジリスクマネジメントが提供する産業医サービスにおいては、「復職者面談」の業務が増加傾向にある。リモートワークの浸透により、従前の出社を前提とした勤務形態からの変化や、一部企業で実施されてきた復職前の慣らし勤務等の実施が難しくなった。
- 人事部門の復職判断が従来よりもさらに困難になっていることも想定される。実際、復職判定にあたり「出社可能であること」が判定に大きな影響を及ぼすが、新しい就業形態における復職判定については、産業医間でも課題として認識されており、今後の議論が必要と考えられている。総じて企業の疾病予防・健康意識が高まってはいるが、その対応には格差が生じている可能性があり、実施の方向性に産業医は課題感を抱えている。