営業における「資料」の役割
なかでも、営業プロセスにおける「資料」は、意思決定のための重要な材料だ。顧客の視点で見ても、いちばん触れている時間が長いものでもある。極論を言えば、良い資料を用意することができれば、セールスの口頭説明がなくても、資料が顧客の意思決定を促してくれることもある、と豊間根氏は語る。
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こうした効果を最大化するために必要なのは、「良い営業資料(ハード)」と「組織に落とし込まれた研修スキル(ソフト)」のかけ合わせることだ。豊間根氏は「顧客のニーズに基づいて営業が話している内容と、実際の資料に書かれた内容が乖離していることは多い。これを口頭説明で終わらせずに、文書化して提示することが重要。そして、こうした手法に、営業の思想が伴っていることが大切」と説明する。
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「スライド作り=資料作成」ではない
資料作りでまず念頭に置いておくべき点は、「パワポやGoogleスライドなどでスライドを作る作業」が資料作成ではないことだという。
豊間根氏は、資料作りの本質について次のように説明した。
「資料作成のためのスキルとして、ショートカットキーのような“操作”や、図形の挿入といった“機能”を覚えることが多いです。しかし、より重要なのは、ゴールを決めて、そこにたどり着くために必要な論点を設定し、情報収集と分析によって得た気づきを構造化しておくこと。これを図やスライドに変換し、それを使って人を巻き込み、お金が動くことでビジネスは前に進んでいく。我々は、こうしたフロー全体が資料作成であると捉えています」(豊間根氏)
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ゆえに、「資料に起こす」部分だけにフォーカスした研修や、スライドの外観を良くするための外注などは、成果に結びつきにくいわけだ。