エンタープライズ企業を中心に資料作成を支援するシリョサク
シリョサクは2022年1月に設立された、企業活動における言語化やアウトプットを支援するクリエイティブカンパニーだ。企業向けにPowerPointの制作支援やスキル育成を手がける。
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1994年東京都生まれ。東京大学工学部卒。サントリーで通販事業のCRM・広告などを担当する傍ら、趣味のPowerPointで作成したスライドがSNSで反響を呼び、12万人以上のフォロワーを集める。2022年に独立し、ビジネスパーソンが仕事をおもしろがり、クリエイティブに働く世界を目指す会社「シリョサク株式会社」を創業。著書に『秒で伝わるパワポ術』『秒で使えるパワポ術』(KADOKAWA)
具体的には、組織における資料作成のガイドラインルール作成や、資料作成ノウハウを浸透させるための伴走型のコンサルティングや研修を実施している。また、顧客の半数以上は、社員数1,000名以上のエンタープライズ企業だという。
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社名の「シリョサク」は、「思慮に時間を割く」と「資料をサクッと作る」をかけたダブルミーニングになっている。「資料を作ること」を目的にするのではなく、「誰に何を伝えてどうすることが目的なのか」という本質に時間をかけるというメッセージが込められている。
「資料作成スキル」が目的とされる4つの文脈
同講演の冒頭で、豊間根氏が「資料に関して困ったことがある方は手を挙げていただけますか?」と質問を投げると、会場にいるイベント出席者のほとんど全員が手を挙げた。あえて声をあげることは少ないテーマかもしれないが、仕事の基本であるからこそ、多くの人が悩みを感じたことがあるのは間違いないようだ。
同氏は「資料作成は仕事の中において、抽象的な提案を組み立てるときに重要になる。地味で泥くさい資料にこそ、実は営業組織改革の本質があるのだろうと着目している」と話を進めた。
シリョサクが企業を支援する際には、大きく4つのパターンがある。ひとつめは、営業部や営業企画部向けに「顧客向けの提案力の向上」を図るもの。ふたつめは、企画経営や人事部向けに「社内稟議を通すための提案力を向上」を目的としたもの。3つめは、企画経営やDX推進部などに向けて「業務効率化」を狙ったもの。4つめは、人事部や人材育成系の部署に向けて「研修や社内のナレッジの整備」をするためのものだ。
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営業における「資料」の役割
なかでも、営業プロセスにおける「資料」は、意思決定のための重要な材料だ。顧客の視点で見ても、いちばん触れている時間が長いものでもある。極論を言えば、良い資料を用意することができれば、セールスの口頭説明がなくても、資料が顧客の意思決定を促してくれることもある、と豊間根氏は語る。
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こうした効果を最大化するために必要なのは、「良い営業資料(ハード)」と「組織に落とし込まれた研修スキル(ソフト)」のかけ合わせることだ。豊間根氏は「顧客のニーズに基づいて営業が話している内容と、実際の資料に書かれた内容が乖離していることは多い。これを口頭説明で終わらせずに、文書化して提示することが重要。そして、こうした手法に、営業の思想が伴っていることが大切」と説明する。
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「スライド作り=資料作成」ではない
資料作りでまず念頭に置いておくべき点は、「パワポやGoogleスライドなどでスライドを作る作業」が資料作成ではないことだという。
豊間根氏は、資料作りの本質について次のように説明した。
「資料作成のためのスキルとして、ショートカットキーのような“操作”や、図形の挿入といった“機能”を覚えることが多いです。しかし、より重要なのは、ゴールを決めて、そこにたどり着くために必要な論点を設定し、情報収集と分析によって得た気づきを構造化しておくこと。これを図やスライドに変換し、それを使って人を巻き込み、お金が動くことでビジネスは前に進んでいく。我々は、こうしたフロー全体が資料作成であると捉えています」(豊間根氏)
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ゆえに、「資料に起こす」部分だけにフォーカスした研修や、スライドの外観を良くするための外注などは、成果に結びつきにくいわけだ。
案件化率2倍! シリョサクの支援事例
シリョサクによる支援事例として、2024年末に上場したリーガルテック企業、GVA TECHの例が挙げられた。このケースでは、営業資料の刷新を図ることで、顧客が展開しているSaaSの案件化率と顧客単価のアップにつながったという。
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「GVA TECH様の課題は、営業資料がプロダクトセールスの視点から抜け出せずにいたこと。技術面に重きを置いた資料は、スペックの説明や、導入手順の説明になりがち。『他社プロダクトと比較した機能の違い』といった情報だけでは、金額ほどの価値を感じてもらえていなかった。その資料を、その商品がどんな価値を持つのか、というストーリーをお客様視点で提示ができるように作り変えたことで、商品の価値が正しく伝わるようになり、案件化率が2倍になった」と豊間根氏。
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資料作成のための3つのキーワード
シリョサクでは、良い資料を作るためのキーワードとして、「#QAR」「#キメヘン」「#あげよう」という3つの造語を掲げている。講演の最後には、とくに重要だとする「QAR」が紹介された。
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「QAR」とは、「Question・Answer・Reason」の頭文字だ。要するに、“問い”を立てることで、作り手は伝えるべき情報が限定できるようになり、聞き手は複雑な情報の山から必要な情報をピックアップできるようになるということ。これによって、コミュニケーションコストを下げる効果が期待できるため、資料作成の際には、ぜひ意識してみよう。
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シリョサクでは本稿で紹介してきたようなポイントをもとに、資料作成に関する伴走はもちろん、研修プログラムによる「提案型営業人材の育成支援」も行っている。豊間根氏は、「営業組織にとって重要な『資料作成』を変革していきたい、本格的に取り組みたいと考える営業リーダーは、ぜひ当社にお問い合わせいただければと思います」と講演を締めくくった。