デジタルセールスが追いかけるKPIとは
山下 マーケティングからもセールスからも独立した組織として、デジタルセールスではどのようなKPIを設けているのでしょうか。
友廣 よく「KPIはどうしたら良いか」と聞かれるんですが、回答が難しくて……。会社ごとに定めるべきだと思います。富士通の場合をお伝えすると、有効会話数やC-Suiteの開拓、女性幹部社員の比率まで、多岐にわたる指標を追っています。成約の件数や金額もKPIとして追ってはいますが、ここは完全にアンコントローラブルな領域。そのためデジタルセールスでは、セールスステージ3(商談化)の「金額」を重要指標としています。
山下 極論、売上に非常にインパクトのある受注確度の高い案件を新規開拓できたら、件数を獲得するよりも評価されるということでしょうか。
友廣 そうなりますね。ただ、インサイドセールスにはつねに「量か質か」という問題がついて回りますし、企業によって求められるものも違います。富士通の場合は、まず金額。そのうえで、少し欲張りですけど、数も多く開拓したいですね。
「三遊間ゴロ」「取捨選別しない覚悟」で実績を積む
山下 KPIを追う中で、営業との連携も非常に重要になると思います。その点について、意識したことはありますか。
友廣 たくさんあります(笑)。よくある失敗パターンが、「The Model」のかたちだけ模倣して各部門が分断してしまうこと。これを防ぐには、ウエットなコミュニケーションが求められます。たとえばチャットツールを使ってリアルタイムで情報共有したり、対面での定例会議を実施したり、半期に1回、本部長クラスへ数字ドリブンかつインサイトを含めた報告会を開いたり……つねに営業との「心の近さ」を意識しました。
山下 営業の反応はどうでしょう? 取り組みの中で徐々に変化していったのでしょうか。
友廣 最初は「お手並み拝見」だと、営業が一度も訪問したことがない出入り禁止のアカウントを渡されたこともあります。そこで成果が出せたら営業の反応は絶対に変わると信じて、難攻不落の案件を突破していきました。
現在は「デジタルセールスがいないと営業できない」と社内に発信してくれる営業もいますね。あまりの変わりように驚きましたが(笑)、そうしたアーリーアダプター的な存在も増えています。
山下 書籍でも、10%でも味方ができればキャズムを越えられるとありました。そのためにはどのアカウントに注力するか、ターゲティングすることも必要ですか。
友廣 そこは難しくて……。それこそ先ほどの「お手並み拝見」も含めて、最初は来るもの拒まずで始めました。その中で成果が見込めそうなアカウントにリソースを割いたり、事例をつくって社内に発信したり、そこは戦略的に。ただ、最初から案件を取捨選別するのは絶対にダメです。誰も号令をかけていない中ボトムアップで挑むからには、すべて受け入れる覚悟は必要ですね。
また、チームのカルチャーとして「良い意味でおせっかいになろう」を合言葉にしています。担当業務と担当業務の間にある“三遊間ゴロ”をあえて拾いに行く。そうすることで、我々のチームも、他部門との連携も強くなっていきます。