意外とできていない!? 相手が喜ぶ言葉を伝える
私もそうだが、日本人の多くが自分の気持ちや感情を伝えることを苦手としている。
「あうんの呼吸」
「以心伝心」
「背中で語る」
という言葉があるように、言葉ではなくお互いの心と心で通じ合うことを良しとすることも多い。それで問題ないこともあるが、何も表現しないことで誤解が生じるのもまた事実だ。
研修先のプレイングマネージャーの方が「若い営業スタッフとどう付き合えば良いかわからない」とよく嘆いていた。話しかけてもリアクションが薄く、付き合いにくいというのだ。若い営業スタッフたちはこれでずいぶん損をしていることに気がついていない。
その一方、会社でうまく立ち回っている人たちを見ると、ストレートに“相手が喜ぶ言葉”を伝えている。ときには「そんなことよく言えるな」といいう褒め言葉を伝えていることも。誰だって褒められればうれしい。そうやって嫌な上司ともうまく付き合っているのだ。
同じ営業所で働いていた後輩のこと。彼は、きちんと営業成績も上げていたが、上司に取り入るのも非常にうまかった。といっても、スマートではなくかなりベタな感じ。
飲み会では、真っ先に営業部長のところへ行き、「いやぁ~この会社があるのもすべて部長のおかげですよ!」と褒め倒す。聞いているこっちは少し恥ずかしくなるものの、部長はまんざらでもない様子だった。そんな後輩の様子を冷めた目で見ていたものだ。
ただその効果は絶大だった。彼は営業部長から一目置かれ、好きなように仕事をしていた。営業職の頂点である営業部長を味方につけておいて損はない。
一方、彼以外の営業スタッフは会社から厳しく管理され、不自由な営業活動をさせられていた。とくに当時ダメ営業スタッフだった私へのあたりは強かったものだ。
そして彼は宴会の初めから最後までお酌をしているわけではない。部長のそばでお酌をするのはほんの数分程度だが、得られるリターンは大きいことを十分に理解していた。非常に頭の良い男だったのだ。
私も含め、ほかのメンバーはいらぬプライドを持っていたため、上司が喜ぶ振る舞いをうまくできなかった。“相手が喜ぶ言葉を伝える”というのは会社で有利な立場を得るための立派な戦略だ。
この話を聞いて「うちの上司はそんなにかんたんじゃないよ」と思ったかもしれない。しかし大げさに褒められるのは、意外にうれしいものなのだ。