本記事は『富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法』の「第3章 営業と経営を味方にしてD X 推進を加速」から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。
DX推進の2つの課題
チームづくりの過程には、営業(フィールドセールス)や経営をはじめとするデジタルセールス外から理解や協力を獲得するための外向きの施策と、デジタルセールスのメンバー内で目標やKPIを設定したり、成長に向けたロードマップを策定する内向きの施策があります。
まず外向きの施策について解説します。そこには、次の2つの目的があります。
- フィールドセールスにデジタルセールスの価値を理解してもらう
- 経営層にデータ活用と営業DXの価値を理解してもらう
1つ目の目的のためには、まずフィールドセールスが新たに「食べられる」案件を創出し、強い味方として認知され、信頼される立ち位置を確立しながら、営業活動全体を一緒に変革していくバディの関係を築く必要があります。
2つ目の目的については、営業DXのような新しい活動を社内に広げるうえで、経営層の理解と協力を得て、ヒト・モノ・カネのリソースを支援してもらう必要、また、企業のサステナブルな成長に営業DXが不可欠だと考えてもらう必要があります。
DXプロジェクトが頓挫する企業のほとんどでは、これら目的のどちらか、または両方を達成できておらず、表面的な取り組みで終わっています。
例えば、営業部門の力が強い企業では、他部門が意見できずに非効率な業務が放置されることがあります。その遠慮と、営業に物申すことをタブー視する社風により変革の一歩が踏み出せないのです。
DXプロジェクトで外部コンサルタントを活用するのも「社内の人間が言えない」実態の表れです。外のヒトは良い意味で無責任な提案ができ、それが既存の業務をディスラプトするきっかけになっているのです。しかし、本気で変革を実現したいのであれば、内部のメンバーが1人目の提案者となる必要があります。
富士通の場合は私たちがその役目を担いましたが、他の企業でも同様に、営業と経営に向けて変革の必要性を主張するリーダーが求められます。
フィールドセールスとの協業は最大の難関
富士通の改革では、フィールドセールスの理解獲得から手をつけました。そのための道筋は、フィールドセールスが狙いたい企業や業界をデジタルセールスが提案し、アプローチのためのプロセスを構築することです。受注が増えれば、DXやデジタルセールスに対する期待が膨らみ、「バディ」の関係性が構築しやすくなります。
ただし、「言うは易く行うは難し」です。前述の通り、もしご用聞き営業や既存顧客からの紹介で一定の売上を確保できている場合、データ活用やインサイドセールスとの協業によって新たな案件を増やす必要性を感じず、今の営業スタイルのままで問題ないと考えるでしょう。分業化に慣れていないと「日本企業にはそもそも馴染まない」「単一商品を扱う外資やスタートアップ企業だから通用する」といった先入観があり、「オレ客」「ワタシ客」の情報を共有する抵抗感があるため、「築き上げてきた顧客の印象や信頼を壊す気か」「クレームになったら誰が責任を取るのか」と考えます。
さらに大きな課題は、物理的に時間が割けないことです。先発完投型の営業が定着し、見積りの作成から納品後の対応まで幅広い顧客対応をしているため、新規顧客の開拓が重要だと認識していたとしても、工数をあてられないことがほとんどです。過去の経験より、「マーケティングから受け取る案件はゴミばかり」とそもそも体感済みにもかかわらず、すでに知る自分の担当顧客をさも新規案件のように渡され、フォローするよう追い立てられているようなことなど加算されれば、ますます他部署との連携に否定的になります。
前例主義で「どうせうまくいかないだろう」と思う悲観論者もいますし、社内のパワーバランスとして営業が絶対的に強い企業は、まずフィールドセールスに提言することすら難しいケースもあります。
重い石を動かせばラクに進める
フィールドセールスの業務は一朝一夕で変わるものではありません。逆に言えば、時間をかけてでも先に挙げた課題さえ解決できれば、その先の取り組みがラクになります。例えば、The Model型の営業体制に移行して、案件創出に関わる業務はインサイドセールスに、アフターフォローに関する業務はカスタマーサクセスに振り分けが実現できれば、フィールドセールスの負担が軽くなり、良質な案件を存分に食べられるようになるかもしれません。
重い石を動かすためには、初動に最も大きな力が必要です。JTCと揶揄される日本企業は、良くも悪くも「失われた30年」の間に従来型の営業スキルを追求し、その成果として、着々と売上を伸ばしてきた経緯(今はその方法では成果につながらない)があります。
その一方でデジタル活用を通じた変革を避けてきた結果、非常に重い石を抱えることになりました。ただし、この30年居座り続けた負の遺産も、勢いづけば自分で転がり始めます。
営業活動の変革も同じで、フィールドセールスが専門分業化の価値を理解し、「デジタルセールスから引き継ぐ新規案件の中にダイヤモンドの原石が含まれている」と認識されれば、その後の営業DXは自走していきます。
味方を増やしてキャズムを飛び越える
重い石は、あるポイントを通過すると勢いづいて転がり始めます。そのポイントは、一般論として全体の30%を味方につけた時と言われます。実際に営業DXを推進してきた私たちの経験則では、特定の部門と組む、または特定の業界に絞り、小さなプロジェクトで営業DXをスタートするのであれば、関係者の半分を味方につけた時、会社全体に浸透させる場合は、関係者全員のうちの10%を味方にした時です。
会社方針としてインサイドセールスを新設する場合や、営業DXを推進する場合「面白そう」「やってみたい」などと前向きに飛びついてくれることは極めて少なく、ほとんどは受動的かつ「面倒だ」と感じながら方針に従います。従来の業務の進め方に疑問を持つこともほとんどなく、他社で経験を重ねた知識豊富な強い力を外圧として加えない限り、変革の必要性にすら気づきません。
営業DXの推進に立ちはだかるキャズム
変革のほとんどは、この状態が硬直して立ち消えになります。
マーケティング用語で言えば、ここにキャズムがあります(図1)。キャズムとは、新たな商品やサービスが市場に普及していく際に、飛び越えなければならない溝のことです。
組織の変革も同じで、キャズムを越えなければならず、言い換えると、失敗するプロジェクトはその手前で諦めているケースがほとんどです。具体的には、新しいもの(営業DXも含まれる)は、その革新性を面白がってわれ先へと味方になってくれるイノベーター、その価値を早期に見つけ出して取り入れるアーリーアダプター、このあとにキャズムが待ち構え、続いて少し遅れて取り入れるアーリーマジョリティとレイトマジョリティ、そして新しさや社会の動きへの関心がないラガードの5分類の順に浸透していきます。
キャズム理論では、市場のイノベーターの割合を「2.5%」、アーリーアダプターを「13.5%」とし、これを合計した16%を超えて普及した場合に「キャズムを飛び越えた」と判断します。
組織の変革では、お仕着せの改革に気後れしながら取り組んでいるだけではキャズムを超えることができません。社内の反発や抵抗があることを前提として、それでもやり遂げる意思と目標を持てるか、「Fail Fast, Fail ften」の精神で失敗を次の糧にする姿勢でぶつかれるかどうかが重要なのです。
誰と一緒にスタートするかを決める
キャズム理論を紹介しましたが、前述の通り、私たちの感覚知では16%までいかなくとも、10%が価値や効果を理解すれば、大きな石が動き出します。
その取っ掛かりとなるのが小さなプロジェクトで、徐々に味方を増やし、その割合が半数を超えるくらいになると、懐疑派が少数となって逆転現象が起こります。当初の、会社方針だから仕方なく「付き合ってやってもいい」という消極的な考えを持つヒトも、「取り入れないわけにいかない」「デジタルセールスと付き合った方が良い」と手のひらを返したように推進派へと変わります。
このことから、営業DXの推進は、まず興味や関心のあるイノベーター的なフィールドセールスとともにPoC(Proof of Concept:実験的な検証)から取り組むのがお勧めです。そのような部門が増えることで、フィールドセールス全体のアーリーアダプターに影響を与え、10%のキャズムを超えることができます。ここを超えれば、アーリーマジョリティでも営業DXに取り組むことが当たり前になり、全体でより好意的に受容されていきます。
言い換えると、営業DXの立ち上げは、誰と一緒にスタートし、どの部門での理解を獲得するかを精査する必要があるということです。スタート時点で否定的なレイトマジョリティの後半やラガードの部門と組んでも、重い石はびくともしません。この選択が肝要です。つまり営業DXを推進していくうえで、どこと協業するかを考えると同時に、付き合わなくても良い、後回しで良い部門も見極める必要があります。
アンケートで営業活動の実態を把握する
フィールドセールスの理解を獲得するためには、まず営業の現場を把握し、新規顧客対応において何がボトルネックとなっているのかを形式知化することが大切です。DXはデータドリブンの取り組みであるため、実態把握も定量的なデータを踏まえて見える化します。
そのための方法として、各営業本部のマネジメント層と現場の担当者を対象としたアンケートを行うのが良いでしょう。
営業DXによって実現したいアイデアや構想があっても、想像を膨らませるだけでは具体的な課題が見えず、方針も絞り込めません。そこで私たちは営業DXで取り組む課題を定量的に抽出するために、フィールドセールスに対してアンケートを実施しました。結果を現場の実態として把握することで、フィールドセールスと目線を合わせ、課題解決に向けた仮説を立てることができます。
実態把握だけでなく、彼らが抱えている業務上の課題を踏まえたうえで、どこに、どのように役立つかを伝えることもできます。営業部門の力が強く、巻き込みにくい場合にも、アンケートが1つの接点となるでしょう。
私たちの場合、チーム発足当初はマーケティング部門内に所属していたため、マーケティング部門のメンバーが偏りの出ないように意識しながら、手分けして知り合いのフィールドセールスに依頼をかけました。全体に向けて一斉に依頼することもできますが、個別アプローチの方が回答率、回収率が高くなり丁寧に答えてくれるはずです。
アンケートでは、日々の営業活動の時間配分や活動内容などを質問します。その内容を整理すると、新規顧客の獲得、市場分析、顧客への提案、提案に向けた社内での調整などにどれくらいの時間を使っているかが浮き彫りになります。複数部門ある場合には、部門間や顧客別の差、役職など階層ごとの差も把握できます。
私たちの場合、フィールドセールスが顧客への提案活動で使っている時間が営業の総時間の約半分にとどまっていること、民間企業の担当者の方が顧客の情報収集や分析に時間を取られていること、業界によって社内会議や社内向け資料の作成にかかる時間の違いがあることなどが分かりました(図2)。
実はアンケートには副次的な狙いがあります。それは、集計結果をフィールドセールスにフィードバックし、現状の営業活動が非効率であるという気づきを与えることです。日々の業務は慣習的に行うため、資料づくりや、既存顧客の対応に時間を取られていても、それを「当たり前」と捉えているケースがほとんどです。そこで、時間配分などを定量的に可視化すると、営業活動を変革する必要性を実感してもらいやすくなります。
伝わりやすい資料でDXの価値を説明する
次は、アンケート結果を踏まえて、DXで解決できる課題を抽出します。そして、フィールドセールスがDXによって得られる効果を事実をもとに伝え、その有用性を理解してもらいましょう。
この点は、根気強く伝える必要があります。私たちも社内の各部門を行脚し、2カ月半で300回以上の説明を繰り返しました。大企業の場合は役職の階層が深いため、部門のトップから理解を得ても、その下のレイヤーでは資料が展開されているだけで、またはじめから説明しなければならないケースがほとんどです。「上はどういう見解なのか」「他の部門はどういう反応か」といった質問を受けることを念頭に置いて、1つずつレイヤーに合わせて攻略していく粘り強さが求められます。
一方、現場の営業担当者レイヤーには、デジタル化やデータ活用の価値を生まれながらにして理解しているデジタルネイティブが多く、日頃の業務負荷に課題を感じている人材も多いため比較的関心を示してくれたり、価値に納得してくれる傾向にあります。無駄や無理を省いた最短距離を知っているため、協業には前向きなのです。
商品やサービスを扱う部門では、「デジタルセールスは売りづらい商品でも売り先を見つけてくれる」「売ってくれるフィールドセールスにつないでくれる」といった噂が先行するケースがあります。そうした過度な期待を抑えるためにも、デジタルセールスがどのような役割を持ち、どのような成果を出す部門なのかを正しく伝えることが必要です。
「オレ客」「ワタシ客」の問題や、先発完投型の営業スタイルは、良くも悪くもフィールドセールスの文化として定着しています。この慣習的な営業活動を変えるために、外資系企業が実践する生産性が高い営業活動を実例として示しながら理解を促進しましょう。
その時は、外資系企業のやり方をそのまま押しつけるのではなく、日本企業の社風に馴染みやすい方法をフィールドセールスと腹を割って話し合い、一緒に実現するイメージを伝えることが大切です。すると、「DXで成果が伸びるかもしれない」「自分たちは変われるかもしれない」といった期待が生まれ、賛同者と協力者を獲得できます。
相手の目線に合わせた丁寧な資料づくりも肝要
社内に複数の営業部門がある場合、DXへの関心度合いには濃淡があるものです。そのため、各部門への説明では、ワンパターンの資料を使い回すのではなく、それぞれが抱える個別の課題を主題として、どこが、どのように解決できるのかを丁寧に説明しましょう。
資料に詰め込む基本的な内容は同じでも、「神は細部に宿る」ことを意識して、その部門と営業担当者にどのようなメリットがあるか、読後感ある内容に仕上げると、参加者に刺さりやすい資料になります。関心を持つ部門が現れ、協業によって実績を出せれば、それが重い石を動かすきっかけになります。
また、資料に使う文言は各部門の目線に立ち、伝わりやすく置き換える必要があります。私は外資系企業に長く勤めていたため、日々の業務でカタカナ言葉を使う癖がついていました。特にインダストリー、セグメント、ウィンレートといった言葉を多用し、MQLやSTPなどアルファベットの略語を使うことにも、何の違和感も持ちませんでした。
しかし、これらの文言は担当者の理解を妨げます。「ウィンレートってどういう意味だろう」「MQLはマーケティングの何かなのだろう」といった小さなつまずきによって説明の内容が伝わらず、The Modelのような新しい営業モデルへの違和感や拒否反応を助長させてしまいます。
ひと通り説明した後で、反応が鈍かった場合や、質問が出なかった場合、おそらく相手は内容を理解できていません。「何となく分かりました」「イメージはつかめました」といった反応も同様です。データドリブンやPоCなど、ある程度の市民権を得ている言葉は別として、カタカナ用語とアルファベットの略語は基本的に全て伝わりやすい日本語に訳して、誰にでも理解できる資料にすることが必要です。
中長期の効果を可視化して経営層の納得を得る
現場の理解がある程度進んだ後、私たちは経営層の納得を得るための施策に着手しました。企業規模が大きくなるほど、営業現場は階層を踏まえた指示系統を重視する傾向があるからです。営業現場に展開する時に反発が起こりそうな場合は、経営層に後ろ盾となってもらい、「役員の了承を得ています」「経営方針に則って取り組んでいます」と言える状態まで外堀を固め、DX推進が会社の公の取り組みであると証明しました。
また、全社規模の変革の布石としても、ここで経営層の強い意志とリーダーシップを引き出すことが欠かせません。長期的に見れば、DXは営業活動の生産性向上のみならず、新規市場への参入や既存事業からの撤退、部門間連携の強化、DXパートナーとなる企業への融資や投資といった経営判断に影響します。DX人材を育成して増やすことを見据えた採用、評価、報酬といった制度の再構築にもつながるでしょう。
説明と資料を経営層向けに置き換えるポイント
経営層向けの取り組みも、フィールドセールスの理解を獲得する時と同じで、資料をつくり、根気強く説明して回ります。特に営業やSE出身の経営層は、従来型の営業や紹介獲得での成功体験が豊富なため、そもそも新規顧客開拓の必要性を感じていません。また、必要だとしてもフィールドセールスがやるべき仕事だと考えています。
さらに、営業活動の変革は、「そのためのシステムを導入すれば良い」「システムを入れれば生産性が上がる」とも認識しています。このような誤解があることを念頭に置いて、営業DXの価値を粘り強く説明しましょう。
私たちは、役員のみならず、部門長や本部長も対象とし、社内の10名以上の役員に向けて計30回を超える説明を繰り返しました。
注意点は、資料や説明の内容を経営層向けに変えることです。フィールドセールスは自分たちの営業活動の効率化や業務手順の変化などに関心を持つため、それらの項目をポイントに資料を構成します。
一方、経営層は企業全体の戦略的な視点で考えるため、DXによって中長期の収益性がどう変わり、どのような成長が見込めるか、コストはどれくらいか、市場での競争優位性にどう影響するかといったビジネスインパクトをより定量的に説明します。
外部環境としては、市場で競合が前期比の2倍、3倍となる売上を狙っていることや、そのためにDXを急ピッチで推進していることも加えます。私たちの場合は、私が前職で外資系企業に勤めていたことを踏まえて、彼らがどのような戦略で動いているか、そのために何に投資しているのかにも触れました。また、営業活動を分業する方法やKPIの立て方、さらに実現するための組織構成なども強調して繰り返しました。
従来型の営業活動で一定の成功体験を得ている企業は、役員や部長などの中間層が「このまま来期も同程度の売上が得られるはず」「営業活動を大きく変える必要はないだろう」と高をくくっています。外部環境の動向を客観的に伝えてこの安心感を危機感に変え、経営層の理解を得ましょう。
営業に寄り添って協力体制を構築する
フィールドセールスと経営層への説明では、データを根拠に示しながら営業DXに取り組む効果を客観的に伝えます。同時に、目標や課題の共有によって心理的な結びつきを強くし、営業DXに取り組む意識を1つにまとめていくことも欠かせません。
外資系企業のようにトップダウンで動く組織は、経営層が「DXを推進する」と号令をかければ脊髄反射で組織全体が動き始めます。営業担当者も自分の成績の良し悪しが収入に直結するため従うしかないのですが、DXによって成果が伸びることがデータで裏づけられれば、それが説得材料となりデータ活用へ前向きに取り組むようになります。
一方の日本企業は、周りの動向を窺いながら行動するハイパーコンテクストな人材が多いこともあり、そこまでドライにはなりきれません。そのため、DX推進という目標を共有するためには、トップからの指示を出したり、データを踏まえて理詰めで説得するだけでなく、あえて隙間をつくるためにも、熱意を持って人情に訴えかけるようなアプローチをします。一緒に営業DXを推進し、営業活動を変革する仲間意識を醸成する ことで、「協力しよう」という気持ちを引き出します。
言い換えれば、営業DXの価値を体系的に伝えることは大事ですが、それ以上に、一緒に目標達成を目指せるかどうかが肝要ということです。
例えば、マーケティングがリードを獲得し、その情報を引き渡してしまえば「あとはフィールドセールスの責任」「自分たちはやることをやった」と禁断の言葉を発したが最後、「ゴミを渡された」と不成功体験が積み重なるばかりで二度と連携してもらえない状況を生み出します。すると、フィールドセールス側では「自分たちでやる方が早い」と舵を切り始めます。これは最大限避けるべき頻出ケースです。
デジタルセールスが特徴的なのは、案件化するだけではなく、その先の商談の進捗もCRMで管理しながらフィールドセールスに寄り添う点です。さらに言えば、なかなか進まない案件を戻してもらい温めもします。渡した案件の質が良くない場合はフィードバックをもらい、改善に取り組みます。DXの積極的な活用とは対極的に見えるかもしれませんが、逃げない、諦めない、やり切る、寄り添うといった精神的な強さも求められるのです。