ナーチャリングの目的を再定義する
多くの営業組織が見込み顧客に対して、「とりあえずメルマガを送る」「突然商談の依頼をする」という行動をとっていると思います。このときお客様は「ネガティブ」な状態にあると考えることが、「ナーチャリング」の第一歩です。
「見込み顧客(=リード)を獲得する手段」はさまざまあります。展示会で名刺をいただく、ホワイトペーパーのダウンロードやウェビナー参加のために個人情報を入力してもらう──。よくある勘違いが、「どんな接点にしろ個人情報を提供してくれているのだから、自社に多少興味を持ってもらっているに違いない」というもの。
しかし、売り手が提供しているプロダクトそのものに関心があれば、顧客は自ら問い合わせることができます。展示会での名刺交換の際に「もう少し話が聞きたいのですが」と伝えたり、企業の問い合わせフォームから連絡したり……この行動が起こっていない以上、個人情報が手に入っていたとしても見込み顧客は自社の製品やサービスに興味がないと思ってください。
「リードナーチャリング」の手法と言えばメールが一般的です。そこで、胸に手を当てて考えてほしいのですが、先週1週間で受けとったメルマガのうち印象に残ったメールを3つ挙げてくださいと言われて、挙げることはできますか。印象的なメルマガは稀です。たとえばセレブリックスさんのように読みたくなる工夫をしているメールであれば、興味がないところから興味があるところへステップアップしていく可能性がありますが、多くのメールは「興味のない状態を維持させている」だけだと言えると思います。
そして「興味のない状態を維持させるメールを送ってくる」企業のインサイドセールスからアポ依頼がくるわけです。「5分だけでも」「紹介だけでも」……と半ば無理やり(良くないアポのとり方についての参考記事:『嘘をついてアポをとる営業』の裏にある、KPIと組織文化の問題)。とにかくアポに至るまで、お客様は心地良くない状態にさらされています。そのうえ売り手は「商談」のつもりで「○○様へのご提案」なんて資料を持ってくる。売り手目線の営業プロセスはこんな齟齬を生み出してしまうんです。
では、ナーチャリングは何のためにあるのか。お客様に対して、どのようなパーセプションチェンジを促すべきなのでしょうか。ナーチャリングのゴールの定義は各社さまざまですが、「興味を持ってもらう」「好きになってもらう」「ファンになってもらう」など、一足飛びの目標になってしまっていることも多いです。そこで、関心を持ってもらう前に、「嫌いではない状態」を目指すのはどうでしょうか。つまり、「話を聞きたい」ではなく、「話を聞いても良いかな」という状態をまずは目指すのです。