「ちょっと近くに寄ったので」が通用しないコロナ禍
桑野氏が所属するAIQVE ONEは、ゲーム業界を中心に品質保証事業を展開している。中でもテストの分野において、AIの活用や自動化を進めるなど、新たな取り組みにも積極的な企業だ。桑野氏は営業としてゲームやVRなど、エンターテインメント業界を中心に担当しており、法人営業の経験は約20年。まずは、顧客との接点づくりに課題を抱えたコロナ禍以降に立ち上げたコミュニティについて解説があった。
「ゲーム開発にはさまざまなジャンルがあります。開発だけではなく、サウンドから、ミドルウェアやクラウドサーバー、ローカライズまで、業界の方に役立つことなら何でも情報発信を行うコミュニティが『これからのゲーム開発を語るコミュニティ・FDGC』で、AIQVE ONEとは関係なく個人で立ち上げたコミュニティです。基本無料で、connpassなどを活用して集客を行っています」(桑野氏)
参加者は、ゲーム業界に入ったばかりの若手から業界のベテランまでさまざま。現在の登録人数は622名で、開かれた場所では話しづらい「しくじり話」などもコミュニティ内のチャットで行われているという。
ゲーム業界での経験が長い桑野氏だが、業界においてはいわゆるマーケティング施策や「新規リードを獲得施策」が成功しづらい背景があった。そこで桑野氏自身も、知り合いからの紹介やイベントや交流会をきっかけに案件をつくることが多かったという。
「業界での知名度がない企業の場合は、交流会などで知っていただくほうが早いですね。また、営業は1日3件回ったとしても1ヵ月20営業日ですから、最大でも60社としか接点を持つことができません。なるべく多くの企業の方と接点を持てるように、セミナーを自分で企画するなど営業としての工夫を長年行っていました」(桑野氏)
AIQVE ONEにおいても同様の取り組みを行っていたが、2020年コロナ禍になった。
「視聴されている皆さんも、2020年4月以降、かなり苦労されたと思います。当社でもこれまでのスタイルが通用しなくなりました。『ちょっと近くに寄ったので』の武器も活かせなくなったわけです」(桑野氏)
自宅に籠りがちとなった2020年4月の緊急事態宣言の際には、「営業に行けず、会社に貢献できていない。何のために自分が存在しているんだろう」と気分が落ち込み、「誰かと話したい」という気持ちが高まっていったという。