4.1 とにかく短く、簡潔に
1つのことを1つの文で説明する(一文一義)
「1つのことを1つの文で説明する」ことを一文一義といいます。文章に関する書籍の多くは、一文一義で書くことを推奨しています。
なぜ、一文一義がわかりやすいのか?
一文一義で書かれていると、読み手は1つの文で1つの事柄を読み取ることができます。1つの事柄だけなので、理解するのも簡単です。ちゃんと理解したうえで、次の文に進むことができます。1つずつ順番に理解しながら読み進めていけるので、一文一義で書かれた文章はわかりやすいのです。
盛りだくさん文はやめよう
文例4.1.1と文例4.1.2は、インターネット上のレンタルサービスなどのサイトに会員登録した際に表示されるメッセージです。
この文例で書き手が伝えたい事柄は次のとおりです。
- 登録手続きを完了すると、登録したメールアドレスが画面右上に表示される。
- 登録したメールアドレスに招待メールが自動配信される。
- 招待メールが届かない場合は、確認してほしい。
- 確認内容1:迷惑メールフォルダの中に招待メールがないか。
- 確認内容2:画面右上に表示されたメールアドレスに間違いはないか。
文例4.1.1は、複数の事柄1〜5を1つの文に盛り込んでいるために、長い文になっています。1つの文の中で、次から次へと新しい事柄が出てくるので、一度読んだだけでは内容を理解できません。
文例4.1.2は、書き手が伝えたい事柄1〜5をそれぞれ1つの文で説明しています。特に、確認内容は2つあることがはっきりとわかるように、箇条書きを使っています。
長い修飾語句は別の文にする
修飾語句を文中に追加すると、より詳しい情報を読み手に伝えることができます。例えば、「新商品が発売される」は主語と述語だけのシンプルな構造です。この文を「A社の新商品が7月に発売される」に修正します。修飾語句「A社の」「7月に」を追加したことにより、「どこ」の新商品が「いつ」発売されるのかがわかります。
修飾語句の長さに注意!
修飾語句の長さには注意が必要です。長い修飾語句を入れると、文が長くなるだけでなく、文の構造も複雑になってしまいます。
文例4.1.3を読んでみましょう。この文は「プラチナポイント」というポイントについての説明ですが、肝心の「プラチナポイント」がなかなか出てきません。
文例4.1.3の文の構造を図4.1.2に表してみました。冒頭の「6カ月間連続でオプションサービスを利用した場合に自動的に得ることができる」という長い修飾語句が、主語の「プラチナポイント」を修飾しています。長い修飾語句があるために文の構造が複雑になり、その結果、内容を読み取りにくくなっています。
長い修飾語句はどうする?
長い修飾語句は、文の外に出して別の文にします。文例4.1.4では、長い修飾語句を独立させ、「6カ月間連続でオプションサービスを利用すると、プラチナポイントを自動的に得ることができます」という1つの文にしています。
このように、長い修飾語句を文の外に出して別の文にすると、1つの文で1つのことを説明する一文一義になります。
4.4 丁寧さのさじ加減を心得る
その丁寧さは必要?
ユーザーに対して丁寧に接することは大切ですが、過剰な丁寧さは読み手をいら立たせることもあります。
文例4.4.1は、IDを忘れたときの対処法を説明したものです。インターネット上のサービスに登録したものの、ログインするためのIDやパスワードを忘れてしまうということはよくあることです。うっかり忘れたときのために、例のような対処法のページが用意されています。
文例4.4.1は、相手がユーザーなので以下のように敬語を多用しています。
- お選びください
- ご登録いただいた
- 入力いただき
- お忘れになった
- お受け取りになった
- お探しください
- ご確認ください
1つの文の中に何回も敬語が出てくると、文字数も増えるし、まどろっこしい感じがします。
ユーザーが必要としていることはなに?
IDを忘れて困っているときにユーザーが必要としているのは、丁寧な言葉遣いではなく、対処法がすぐにわかることです。
文例4.4.2は過剰な敬語をなくし、対処法を簡潔に書いています。「お探しください」ではなく、「探してください」という普通の表現でも特に失礼な感じはしません。
読み手によって丁寧さの加減を決める
どのくらい丁寧に書けばよいのかは、読み手によって違います。文章を書く前に、読み手は誰なのかを整理してみましょう。
読み手は大きく分けると、ユーザー、社外の人、社内の人に分けることができます。
ユーザーには、さらに特定のユーザー、不特定多数のユーザー、これからユーザーになってくれるかもしれないユーザー予備群がいます。
社外の場合は、こちらから何らかの仕事を依頼している会社の人、あるいは同じプロジェクトを一緒に担当しているパートナー会社の人がいます。仕事によっては、監督官庁や自治体の人が読み手になることもあるでしょう。
社内の場合も、同じ部署、違う部署、人事部や経理部のような管理部門、決定権を持つ経営陣などがあげられます。上司、同僚、部下という分け方もあります。
読み手との親しさ、状況は?
読み手との親しさによっても、丁寧さは変わります。読み手との親しさは、お付き合いの期間と程度で捉えることができます。例えば、初めて会うユーザーと、長年お付き合いがあり気心の知れたユーザーとでは、丁寧さは違います。
また、同じ読み手でも、状況が違えば丁寧さの加減も変わります。図4.4.2のチェックリストを使って、読み手の状況を緊急性、困っている程度、感情から整理してみましょう。
どのくらい丁寧に書けばよいのか迷うときは、丁寧さの程度を変えて2種類書いてみるとよいでしょう。例えば、敬語を使った丁寧なパターンと簡潔なパターンを書いて、比べてみます。同僚に読んでもらい、感想を聞くのもよいでしょう。