SalesZine(セールスジン)

注目テーマ

丁寧すぎる文章は逆効果? 読み手に気持ちよく行動してもらうための「UXライティング」を学ぶ

2020/12/14 07:00

 取引先とメールやチャットでやり取りするときやWebサイトに商品説明やヘルプを掲載するとき、丁寧な文章は不可欠です。しかし、丁寧すぎるとかえってイラッとさせてしまう場合も。必要なのは読み手が理解しやすく、課題解決や行動につながる文章です。そのための手法として注目されているのがユーザー体験(UX)の向上を目的とする「UXライティング」。今回は『ビジネスマンのための新教養 UXライティング』(翔泳社)から、UXを考慮した文章の書き方について紹介します。

本記事は髙橋慈子さんと冨永敦子さんによる『ビジネスマンのための新教養 UXライティング』の「4.1 とにかく短く、簡潔に」と「4.4 丁寧さのさじ加減を心得る」を抜粋したものです。掲載にあたり一部を編集しています。

4.1 とにかく短く、簡潔に

1つのことを1つの文で説明する(一文一義)

「1つのことを1つの文で説明する」ことを一文一義といいます。文章に関する書籍の多くは、一文一義で書くことを推奨しています。

なぜ、一文一義がわかりやすいのか?

 一文一義で書かれていると、読み手は1つの文で1つの事柄を読み取ることができます。1つの事柄だけなので、理解するのも簡単です。ちゃんと理解したうえで、次の文に進むことができます。1つずつ順番に理解しながら読み進めていけるので、一文一義で書かれた文章はわかりやすいのです。

盛りだくさん文はやめよう

 文例4.1.1と文例4.1.2は、インターネット上のレンタルサービスなどのサイトに会員登録した際に表示されるメッセージです。

文例4.1.1、文例4.1.2

 この文例で書き手が伝えたい事柄は次のとおりです。

  1. 登録手続きを完了すると、登録したメールアドレスが画面右上に表示される。
  2. 登録したメールアドレスに招待メールが自動配信される。
  3. 招待メールが届かない場合は、確認してほしい。
  4. 確認内容1:迷惑メールフォルダの中に招待メールがないか。
  5. 確認内容2:画面右上に表示されたメールアドレスに間違いはないか。

 文例4.1.1は、複数の事柄1〜5を1つの文に盛り込んでいるために、長い文になっています。1つの文の中で、次から次へと新しい事柄が出てくるので、一度読んだだけでは内容を理解できません。

 文例4.1.2は、書き手が伝えたい事柄1〜5をそれぞれ1つの文で説明しています。特に、確認内容は2つあることがはっきりとわかるように、箇条書きを使っています。

図4.1.1 一文一義で書くコツ
図4.1.1 一文一義で書くコツ

長い修飾語句は別の文にする

 修飾語句を文中に追加すると、より詳しい情報を読み手に伝えることができます。例えば、「新商品が発売される」は主語と述語だけのシンプルな構造です。この文を「A社の新商品が7月に発売される」に修正します。修飾語句「A社の」「7月に」を追加したことにより、「どこ」の新商品が「いつ」発売されるのかがわかります。

修飾語句の長さに注意!

 修飾語句の長さには注意が必要です。長い修飾語句を入れると、文が長くなるだけでなく、文の構造も複雑になってしまいます。

 文例4.1.3を読んでみましょう。この文は「プラチナポイント」というポイントについての説明ですが、肝心の「プラチナポイント」がなかなか出てきません。

文例4.1.3 長い修飾語句が含まれている
文例4.1.3 長い修飾語句が含まれている

 文例4.1.3の文の構造を図4.1.2に表してみました。冒頭の「6カ月間連続でオプションサービスを利用した場合に自動的に得ることができる」という長い修飾語句が、主語の「プラチナポイント」を修飾しています。長い修飾語句があるために文の構造が複雑になり、その結果、内容を読み取りにくくなっています。

図4.1.2 Before の文の構造
図4.1.2 Before の文の構造

長い修飾語句はどうする?

 長い修飾語句は、文の外に出して別の文にします。文例4.1.4では、長い修飾語句を独立させ、「6カ月間連続でオプションサービスを利用すると、プラチナポイントを自動的に得ることができます」という1つの文にしています。

文例4.1.4 長い修飾語句を別の文にする
文例4.1.4 長い修飾語句を別の文にする

 このように、長い修飾語句を文の外に出して別の文にすると、1つの文で1つのことを説明する一文一義になります。

4.4 丁寧さのさじ加減を心得る

その丁寧さは必要?

 ユーザーに対して丁寧に接することは大切ですが、過剰な丁寧さは読み手をいら立たせることもあります。

 文例4.4.1は、IDを忘れたときの対処法を説明したものです。インターネット上のサービスに登録したものの、ログインするためのIDやパスワードを忘れてしまうということはよくあることです。うっかり忘れたときのために、例のような対処法のページが用意されています。

文例4.4.1 敬語を多用、丁寧だけど……
文例4.4.1 敬語を多用、丁寧だけど……

 文例4.4.1は、相手がユーザーなので以下のように敬語を多用しています。

  • お選びください
  • ご登録いただいた
  • 入力いただき
  • お忘れになった
  • お受け取りになった
  • お探しください
  • ご確認ください

 1つの文の中に何回も敬語が出てくると、文字数も増えるし、まどろっこしい感じがします。

ユーザーが必要としていることはなに?

 IDを忘れて困っているときにユーザーが必要としているのは、丁寧な言葉遣いではなく、対処法がすぐにわかることです。

 文例4.4.2は過剰な敬語をなくし、対処法を簡潔に書いています。「お探しください」ではなく、「探してください」という普通の表現でも特に失礼な感じはしません。

文例4.4.2 過剰な敬語をなくし、対処法を簡潔に
文例4.4.2 過剰な敬語をなくし、対処法を簡潔に

読み手によって丁寧さの加減を決める

 どのくらい丁寧に書けばよいのかは、読み手によって違います。文章を書く前に、読み手は誰なのかを整理してみましょう。

 読み手は大きく分けると、ユーザー、社外の人、社内の人に分けることができます。

 ユーザーには、さらに特定のユーザー、不特定多数のユーザー、これからユーザーになってくれるかもしれないユーザー予備群がいます。

 社外の場合は、こちらから何らかの仕事を依頼している会社の人、あるいは同じプロジェクトを一緒に担当しているパートナー会社の人がいます。仕事によっては、監督官庁や自治体の人が読み手になることもあるでしょう。

 社内の場合も、同じ部署、違う部署、人事部や経理部のような管理部門、決定権を持つ経営陣などがあげられます。上司、同僚、部下という分け方もあります。

図4.4.1 読み手は誰?
図4.4.1 読み手は誰?

読み手との親しさ、状況は?

 読み手との親しさによっても、丁寧さは変わります。読み手との親しさは、お付き合いの期間と程度で捉えることができます。例えば、初めて会うユーザーと、長年お付き合いがあり気心の知れたユーザーとでは、丁寧さは違います。

 また、同じ読み手でも、状況が違えば丁寧さの加減も変わります。図4.4.2のチェックリストを使って、読み手の状況を緊急性、困っている程度、感情から整理してみましょう。

図4.4.2 読み手との親しさ・状況をチェック
図4.4.2 読み手との親しさ・状況をチェック

 どのくらい丁寧に書けばよいのか迷うときは、丁寧さの程度を変えて2種類書いてみるとよいでしょう。例えば、敬語を使った丁寧なパターンと簡潔なパターンを書いて、比べてみます。同僚に読んでもらい、感想を聞くのもよいでしょう。

ビジネスマンのための新教養 UXライティング

Amazon SEshop その他

ビジネスマンのための新教養 UXライティング

著者:髙橋慈子、冨永敦子
発売日:2020年11月30日(月)
定価:1,680円+税

本書について

「ユーザー体験」「読み手への配慮」という視点は、Webサイトやアプリの制作に携わっている方はもちろん、一般ビジネスマンにとっても必要な考え方、スキルの1つとなりました。そこで本書では、具体的な例を通してUXライティングの手法を紹介しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

All contents copyright © 2019 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5