大きく差がついてしまった日米のインサイドセールス
――最初に現職に至るまでのキャリアから教えていただけますか。
インサイドセールスの世界に入ったのは、Dellで営業責任者を務めたことがきっかけでした。元々、Dellは顧客への訪問なしで商談を完結させ、受け取った注文を基にPC やハードウェアを生産する「ダイレクトモデル」で成功した会社です。なので、Dellでは インサイドセールスのことをダイレクトのセールスレップ、訪問営業のことをフィールドセールスと呼んでいました。インサイドセールスからフィールドセールスにリードを渡す仕組みは、数100台単位の購入のような大口の契約を得られるようになってから確立したものです。この職種でのキャリアはかれこれ20年ぐらいになります。
――水嶋さんにとって、初めてインサイドセールスという職種に出会ったときの驚きはどんなものだったのでしょうか。
当時驚いたのが、ハードウェアを買うのにお客様が見ないで買うのを決めていることでした。実物を見せなくても電話だけで売れることに驚き、それができる仕組みがあることが信じられない思いでした。いまでこそPCをネットで買うのは当たり前になりましたが、当時はECの黎明期だったので。こんなに高額なものをECで買うのかと新鮮だったことを覚えています。
電話での営業スタイル自体は、それまでは営業の経験がなかったためか、かえってすんなりと馴染むことができました。「営業とはこうあるべき」という気負いのようなものもなく、合理的なやり方が好きなことも影響したかもしれません。電話でお客様と話ができ、商品を購入してもらえることがとにかく楽しかったですね。
――インサイドセールスとしての経験から見て、日米の違いをどのように見ていますか。環境や給与面などから教えてください。
大きな差がついてしまったと感じています。90年代までの世界経済における日本企業の存在感は非常に大きなものでしたが、米国企業は日本企業を上回る成長を遂げています。差が付いた原因として考えられるのが、企業におけるマーケティングや営業の位置づけの違いです。日本の営業の平均年収が400万円程度だとすると、インサイドセールスはおそらくそれ以下でしょう。これに対して、米国のインサイドセールスの年収は1,000万円を超えることも珍しくありません。専門性の高い職種として確立されているので給与が高いのです。一方の日本では年功序列の給与体系で、かつ新卒が多いので、営業と比べるとインサイドセールスはどうしても平均年収が低くなります。