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仕事と私生活の境界を適切に管理することで、継続就業意向やはたらく幸せ実感が上昇/パーソル総合研究所

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 パーソル総合研究所は、「仕事と私生活の境界マネジメントに関する定量調査」の結果を発表した。

調査の背景

 仕事と私生活の両立、切り分けの問題に関して、海外では2000年頃からBoundary Management(境界マネジメント)という概念に関する研究が行われてきた(Allen et al.,2021;Kossek,2016; Kreiner et al.,2009など)日本においても、共働き世帯の増加やテレワークの普及などを背景に、仕事と私生活の切り分けや時間管理の重要性が高まっている。

 本調査では、日本の正社員における仕事と私生活の切り分け実感を「境界コントロール実感」、仕事と私生活の境界を管理するための個人の方策を「境界マネジメント」として、主に次の3項目についての定量的な分析結果を報告する。

1. なぜ境界コントロールが重要なのか

2. 境界コントロール実感を高める要因

3. 育児期女性/テレワーカーの境界コントロール実感

  • 境界コントロール実感が高いと、継続就業意向や自発的貢献意欲、人生満足度やはたらく幸せ実感が高い。一方で、バーンアウト(燃え尽き)傾向が低い。

境界マネジメント/境界コントロールの定義

  • 「境界マネジメント」の6つの要素(定義)

 個人が仕事と私生活をうまく切り分けるための方策を境界マネジメントとして測定し(※1)、因子分析を行った結果、次の6つの要素が抽出された。これらの6つの要素の平均値を「境界マネジメント」として分析した。

※1 Kreiner et al.(2009)やAllen et al.(2021)の定性的研究において抽出された概念を参考に、日本の正社員に対して実施したヒアリングで得られた要素を加味して項目を作成した

  • 「境界コントロール実感」とは(定義)

 仕事と私生活で時間や気持ちの切り分けができている状態を「境界コントロール実感」として測定した(※2)。

※2 Kossek (2016)における境界コントロールの概念や日本の正社員に対して実施したヒアリングを参考にして項目を作成した

なぜ境界コントロールが重要なのか

1. 時間不足感を解消することよりも、境界コントロール実感を高めることが人生満足度とプラスに関連している。

2. 仕事に対するポジティブな心理状態であるワーク・エンゲージメントに加えて、境界コントロール実感が高いことが人生満足度の高さとプラスに関連している。

3. 属性別に、境界コントロール実感と人生満足度との関連性を見ると、とくに、20代男性や中学生以下の子どもがいる育児期男性で、境界コントロール実感が人生満足度と強く関連している。

4. 人事評価と境界コントロール実感の高低別に、継続就業意向・管理職昇進意向・バーンアウト傾向を見ると、人事評価が高く境界コントロール実感も高い層では、管理職昇進意向が高い。一方で、人事評価が高くても境界コントロール実感が低い層では、バーンアウト(燃え尽き)傾向が高い。

境界コントロール実感を高める要因

5. 境界マネジメントの実践度が高い層では、実践度が低い層よりも境界コントロール実感が高い。

6. 境界マネジメントの実践度は、性年代別で見ると、30~40代女性や 50代男性で高く、20~40代男性で低い。また、ライフステージ別で見ると、家族がいる女性(既婚子なし女性や子あり)で高く、シングル男性や育児期男性で低い。

7. 境界マネジメントの6つの要素別に実践状況を見ると、とくに「切断」や「感情制御」を実践していると、境界コントロール実感が高い。どの仕事にどのくらいの時間をかけるかを事前に計画しているといった「計画」や自分の感情をコントロールするように心がけているといった「感情制御」、予定していた退勤時間になったらきっぱりと仕事を止めるようにしているといった「切断」の実践度が高く、希望する働き方を職場で伝えているといった「調整」の実践度が低い。

8. 人事管理や上司のマネジメントの影響を加味しても、境界マネジメントは境界コントロール実感にプラスに影響している。

 個人が境界マネジメントを実践することに加えて、上司が柔軟な働き方を許容することや部下の仕事を理解していること、長時間労働是正、残業時間が短いことが境界コントロール実感にプラスに影響している。

9. 人事管理や上司のマネジメントが境界マネジメントに与える影響を見ると、「働き方についての制度を柔軟に利用させてくれる」「希望に応じて休みをとらせてくれる」といった、「長時間労働是正」や上司による「柔軟な働き方の許容」がメンバーの境界マネジメントの実践にとくに影響している。

10. 上司による柔軟な働き方の許容実態と部下の境界マネジメントとの関連性を見ると、「仕事よりも家庭を優先させてくれる」「勤務時間中の中抜けなどで時間を柔軟に使うことを認めてくれる」といった上司の柔軟な働き方の許容は、部下の境界マネジメントの実践とプラスに関連しているものの、そうした働き方を許容している上司は少ない結果となった。

11. 自らの人生(=ライフ)に対する主体的な意識や行動(=オーナーシップ)について因子分析を行った結果、「理想ライフの設計」「学びの拡張」「自己責任自覚」の3つの要素が抽出された。これらの要素はキャリアのWill/Can/Mustに近いことから人生のWill/Can/Mustとして整理し、これらの人生に対する主体性を総じて「人生主権(ライフ・オーナーシップ)」と名付けた。理想ライフの設計(Will)、学びの拡張(Can)、自己責任自覚(Must)の3つの要素が境界マネジメントの実践にプラスに影響している。

育児期女性の境界コントロール実感

12. 中学生以下の子どもがいる育児期女性の約6割が毎日時間に追われているが、時間不足を感じている育児期女性でも境界コントロール実感が高い人とそうでない人がいる。

13. 育児期女性においても、時間不足感の解消よりも境界コントロール実感を高めることが人生満足度とプラスに関連している。

14. 人事管理や上司のマネジメントが育児期女性の境界マネジメントに与える影響を見ると、「長時間労働是正」や上司による「アウトプットでの評価」が部下の育児期女性の境界マネジメントの実践にとくに影響している。正社員全体と比べるとアウトプットでの評価が強く影響していることが特徴。

テレワーカーの境界コントロール実感

15. 残業時間が長いテレワーカー(週3回以上のテレワークをしている人)は境界コントロール実感が低い。テレワーカーは、残業時間が短い場合には境界コントロール実感が正社員全体の平均より高いが、残業時間が長い場合には境界コントロール実感が大きく下がる。

 境界マネジメントの実践度別にみると、残業時間が長くて境界マネジメントの実践度が低いテレワーカーは、境界コントロール実感が低い。

【調査概要】

  • 調査名称/パーソル総合研究所「仕事と私生活の境界マネジメントに関する定量調査」
  • 調査目的/仕事と私生活の境界コントロール実感が個人と組織に与えるメリット、および、個人の境界マネジメントが境界コントロール実感に与える影響を確認するとともに、職場における境界マネジメント支援策について定量的に明らかにすること
  • 調査手法/調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
  • 調査時期/2023年9月20日 ~ 10月2日
  • 調査対象者
    <共通条件>
    全国男女20-50代正社員(代表取締役・社長をのぞく)
    従業員規模(正社員数)51人以上の企業、第一次産業をのぞく
    現在仕事をしていない人(産休・育休など)はのぞく
    【正社員全体】n=1021
    ※労働力調査(2022年)の性年代構成比を元に割付
    【育児期女性ブースト】n=1076
    共通条件に加えて、中学生以下の子どもと同居している女性
    ※国民生活基礎調査(2021年)の末子年齢構成比を元に割付
    【テレワーカーブースト】n=200
    共通条件に加えて、直近3ヵ月間で平均して週に3日以上のテレワークをしていた人
    ※労働力調査の性年代構成比に基づいて集計したスクリーニング調査におけるテレワーカーの性年代構成比を元に割付
    ※正社員全体/育児期女性/テレワーカーのサンプル数は重複ありでカウント
  • 実施主体/株式会社パーソル総合研究所
    ※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

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