日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)は、新入社員の意識と行動、指導者の指導と育成に関する調査報告書「イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査」の最新版を公開した。
本調査は2022~2023年に入社した新入社員と、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員の計2,631名を対象に実施している。今回は、調査結果から、新入社員が課題・不安に感じることについて「内定時~配属前」と「配属1~3ヵ月後」「配属6~12ヵ月後」の時期別特徴や、2019年から2023年入社別の比較による、コロナ禍前後の影響や変化などについて調査結果を公開した(以下、調査結果の一部抜粋)。
調査概要
- 調査方法:インターネット調査
- 調査地域:全国
- 有効回答:2,631名(2022~2023年に入社した新入社員1,064名、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員1,567名)
- 調査期間:2023年6月
【内定~配属前】コロナ禍以降の課題は「上司・先輩との関係が築けない」が上位に
内定から入社すぐの状況としては、例年と変わらず「社会人としての生活リズム」(32.8%)に課題を感じる結果となった。また、「上司・先輩と良い関係が築けない」(25.2%)、「わからないことを聞けない」(25.0%)など、関係構築に不安を抱いている様子がうかがえる。一方、「大勢の前で上手く話せない」(+6.9%)が昨年と比較し増加していることから、リモート環境で学生時代を過ごしていた新入社員が、出社による対面コミュニケーションに苦慮していることが予想される。
【配属1~3ヵ月後】「何がわからないかわからない」新入社員が増加 フォロー体制の変化が影響している可能性
配属されて間もない時期の課題・不安は、「何がわからないかわからない」(18.8%/+4.7%)が、例年の結果と比較して上昇している。2020~2022年はコロナ禍で在宅勤務が増えていたにも関わらず4位に留まっていたことから、コロナ禍ゆえの新入社員への手厚いフォローがあったこと、それが現在は失われていることが推測できる。また、コロナ前の2019年には6位だった「仕事が自分にあっているか」(17.0%)が例年高順位であり、本年も2位だったことからも、働く場所が多様化した中での新入社員へのフォロー体制が確立されていない現状がうかがえる。
【配属6~12ヵ月後】「プライドが傷つき、自信をなくす」など、「組織社会化」の課題が浮き彫りに 対面コミュニケーションへの適応に課題
配属から半年経った時期においては、例年「組織社会化(※)」の課題が浮き彫りになっている。今回も、「担当する業務の知識・手順がわからない」(+4.6%)、「プライドが傷つき、自信をなくす」(+3.2%)、「大勢の前で上手く話せない」(+2.8%)などが増加していることから、組織に適応する過程に悩む様子が見受けられる。
※必要な社会的知識や技術を獲得し、周囲との関係性を築き、組織の価値観や規範を受け入れ、自らも組織の一員となっていくプロセスのこと
在宅勤務から出社に切り替わっている企業が多いことも予想されるが、学生時代の多くをオンライン環境で過ごしてきた新人の中には、対面コミュニケーションにおける関係構築を苦手とする人も多いことが考えられる。
【勤務場所別 配属6~12ヵ月の課題】在宅勤務派の新入社員は「上司・先輩と良い関係が築けない」 出社派と異なる課題が顕著
昨年と比べて在宅が多かった新人の割合が9.2%減少しており、在宅派は昨年よりもさらに少数になっている。そうした中、在宅派とオフィス派それぞれで上位の課題を比較すると、在宅派で昨年と大きく順位が変動していた。在宅が多かった新人が抱えている課題は、「上司・先輩と良い関係が築けない」(15.5%)が第1位。ほかにも、「萎縮してばかりで自分を出せない」「担当する業務の知識・手順がわからない」「思ったような成果・業績が出せない」(14.9%)が第2位で、昨年から大きく順位を上げた。在宅派は上司先輩との関係が築けず萎縮してしまい、結果として業務知識が不足するという「孤立化・孤独化」の傾向が強くなっていると言える。
一方、オフィス派の課題は昨年と大きく変わりはなく、抱えている課題は「仕事が自分にあっているか」(24.7%)が第1位、「この会社で成長していけるか」(16.8%)が第2位だった。このことから、組織の価値観と自分の価値観とのギャップへの悩みなどが顕在化してきていると考えられる。