未来の働き方に向かう変化とは? Work Happyの実現へ
今回の「Zoom Experience Day Summer」は、オンラインとオフラインのハイブリッドで開催した。
基調講演では、日本でZoomを提供する ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏が登壇。「未来の働き方に向けたAIの活用とコミュニケーションの総点検」というテーマで語った。
下垣氏は、未来の働き方にまつわるトレンドを4つ挙げた。
Zoom社ももちろん、コロナ禍以降もオフラインのワークスタイルに戻らず、ハイブリッドな新しい働き方が定着している企業が64%に上る。また、75%以上のビジネスリーダーが2年以内に働き方を変えようとしている。「もっと言えば、良い環境により良い人が集まるようになっている」と下垣氏は語る。
さらに、AIの活用は言わずもがな昨今の注目トピックである。IT部門のみならず、チームリーダーの75%がAIを活用することによって新しく効率的な働き方ができないか模索しているという。
顧客体験(CX)に関して言えば、その投資の70%がAI分野に対するものであることがわかっている。多くのプレイヤーが、音声分析や音声認識、プロセスの自動化によって顧客体験を向上しようとしている。
「こういうトレンドが今、皆さんの間近で起きている」と下垣氏。とくに生成AIの市場は2030年までに世界で20倍に拡大すると予想されており、「どういうテクノロジーを導入するかではなく、AIを使って何ができるかを考えることが重要な時代」と強調した。
Zoomというツールも、こうした時代の変化に伴って進化している。4月に発表されたとおり「Zoom Workplace」というAI搭載のコミュニケーションプラットフォームへと進化しているのだ。下垣氏はZoom Workplaceの特徴として、次の5点を挙げた。
Zoom Workplaceには、次々と新しい機能が追加されている。たとえば、2024年 8月5日より提供を開始したAIファーストなドキュメント作成ソリューション「Zoom Docs」は、これまでブラウザで開いて画面共有していたドキュメントをZoom Workplace内に組み込み、部門間のコラボレーションを促進する機能。AI搭載で、議事録やTODOリストの作成を支援してくれるのも特徴だ。
また、新機能「Zoom Workflow Automation」はベータ版として公開中だ。多くの企業で、承認依頼のアプリケーションとチャットなどのコミュニケーションツールは分かれており、チャットにリンクを貼って「承認お願いします」と上司にリマインドを送ることもしばしばだろう。この手間を省き、チャット上でワークフローを完結できるのがこのWorkflow Automationである。
Zoom Workplaceは、こうした機能で業務を効率化し仕事をもっと楽しくする「Work Happy」を実現すると宣言した。
AIが実現する「シームレスで新しい顧客体験」
Zoomは、効率化やスキル強化をサポートするスマートアシスタント「Zoom AI Companion」を発表している。これは3つの理念に基づいて提供されている。ほかのツールと柔軟に連携できる「フェデレーテッド」、Zoom プラットフォーム全体に搭載され使いやすさを担保する「エンパワーメント」、顧客のデータを侵害せず信頼に応える「責任あるコミットメント」の3つだ。
「AI Companionは有償版を使っている方なら追加費用なしでご利用いただけるので、ぜひ試してみてください」(下垣氏)
また、顧客とのコミュニケーションプロセスを支援するサービス群 「Business Service」でもAIを活用したサービスを提供している。
たとえばそのひとつ「Zoom Contact Center」は、ビデオ、音声、チャットなどで顧客にパーソナライズされた応答を提供する。また、「Zoom Revenue Accelerator」は会話型AIを搭載し、顧客との通話内容を分析、営業スキルの向上に活かすことができる。英語版ではAIによるコーチングまで提供されている。
Zoomが提供するAIを活用した顧客体験は、顧客から見てどのような世界になるのか。下垣氏は、ひとつのイメージを共有した。
チャットでコンタクトしてきた顧客には、AIを搭載したバーチャルエージェントが回答し、対応が上手くいかなければコールセンターに接続。その時点で顧客の問い合わせ内容や背景は把握されている状態だ。通話後のアフターコールワーク(サマリー)は、AIのサポートで効率化される。そして、蓄積された通話データはセンチメント分析され、管理者は通話時間やスピードまで把握できる。
こうしたサービスはすでに米国の多くのエンタープライズ企業でされており、たとえばMLB(Major League Baseball)のアウト・セーフの判定会議やドラフト会議もZoom Contact Centerで行われているという。
【事例】老舗井村屋がZoom Workplaceで社内コミュニケーションを統合
続いて、Zoomの導入事例として老舗食品メーカーの井村屋グループと、東京大学の事例が紹介された。はじめに、井村屋グループのデジタル戦略室長 岡田孝平氏が登壇した。
井村屋は1896年創業、今年で128年めを迎える歴史ある企業だ。下垣氏は「正直に言うと、Zoomを積極的に活用し、新しい取り組みをしていることに驚いた。非常に先進的なユーザー」と紹介する。
2018年からZoomを導入した同社は、現在Zoom Workplaceを導入。オンプレミスだったグループウェアをZoom Workplaceに刷新することを決定した。
「コミュニケーションツールをひとつに統合することで、グループ全体でのシナジーを高めていきたい」と岡田氏。海外拠点とも統一されることで、現地社員とのコミュニケーションがスムーズになることが期待できる。
また、同社は食品メーカーとして工場勤務のPCを使わない社員も多く抱えている。
「これまで工場では掲示や伝言で情報伝達していたが、工場内に大型モニターを設置した。経営トップのメッセージ、社内イベントや新製品の情報を、テキストだけでなく写真や映像といった興味を惹くコンテンツで届けていく」(岡田氏)
コロナ前の日本でZoomの知名度は今ほど高くなかったが、導入に反対はなかったのか。下垣氏がたずねると「提案したときは知らない人がほとんどだったが、無償でスタートできる点が功を奏した」と岡田氏。フリーミアムゆえの導入しやすさがあったようだ。
最後に岡田氏は「Zoom社は非常にユーザーに寄り添った企業。これからもよりいっそう日本の企業にも使いやすいツールを提供していただきたい」と期待を寄せた。
【事例】東京大学のオンラインサポート窓口をZoom Contact Centerで支援
次に東京大学がZoom Contact Centerを活用し、オンラインサポート窓口を運営している事例が紹介された。
コロナ禍で大学のさまざまな活動がオンラインに切り替わった際、経済産業省の支援を受けてZoomの利用を開始した。その後、2021年に学生・教職員が一体となって全学のオンライン活動をサポートする「uteleconプロジェクト」がスタート。学生が常駐し、ZoomやZendeskを活用してワンストップでサポートしている。uteleconプロジェクト担当の玉造潤史准教授いわく「たらい回しをせず、正解に近いものを少ない工数で提供する」のが特徴だ。
今回、Zoom Contact Centerを活用したサポート窓口を構築したのは総合文化研究科 大学院生の德永紗英氏だ。徳永氏は、Zoom Contact Center導入前には「さまざまな課題があった」と振り返る。
チャット、Zoom、メールの3種類のシステムを利用していたため、すべてを同時に把握するのが難しかったこと。また、対応の記録もバラバラに蓄積されるため過去の事例を参照しづらい状況だったことが挙げられた。さらに、チャットシステムとZoom Meetingsを使ったリアルタイムでの対応について、案件をエージェントに割り振る仕組みがなかった。気がついた人が自主的に対応することになり、真面目なスタッフに業務が偏る問題があった。
これらの課題を、Zoom Contact Centerの導入によって解消した。「チャットと音声による対応をひとつのシステムで行うことができ、案件割り振りのシステムについても一元的な形で実装することができた」と徳永氏。
Zoomでは「フェデレーテッド」の理念のもと、ほかのツールと柔軟に連携できるコネクタが提供されている。そのため、既存ツールZendeskとの相性も良い。今後は、Zendeskの画面中にZoom Contact Centerが表示され、チャット・Zoom・メールすべてに対応、記録もひとつに集約されて蓄積されていくかたちを目指して実装を行う予定だ。
実は、この件でZoom Contact Center導入の第一号となった東京大学。徳永氏は、Zoomの信頼できる理念・技術だけでなく、丁寧なサポート体制がZoom Contact Centerの導入につながったと述べた。
基調講演と、2社の事例を受けて、下垣氏は以下のようにまとめた。
「『働き方の未来』は実はもうそこにある。1個ボタンを押すだけで導入できる世界だと理解いただけたのではないでしょうか。AIを活用して効率的に働き、Work Happyを実現できる環境があることを、今日のイベントの中で少しでも体感いただけたらと思います」(下垣氏)
【事例】インサイドセールスにおけるZoom Phone活用事例
基調講演のあとに行われた事例セッションでは、SNSマーケティング支援企業であるテテマーチの出口潤氏と司法書士法人みつ葉グループの保坂勇太氏が登壇。Zoom Phone導入のメリットや活用の実態が語られた。
テテマーチでは他社のクラウドPBXを使っていたが、出口氏のもとにインサイドセールスのメンバーから「接続が不安定で、お客様に聞き返される」という報告が入った。音声が不安定では、お客様のCX以前に安心したコミュニケーションもできないため、品質の安定しているZoom Phoneにリプレイスしたという。
「インサイドセールスは5分や10分という短時間で、どれだけお客様の現状の課題をヒアリングし、次のセールスにパスを渡せるかが重要。品質の安定性が決め手になりました」(出口氏)
一方のみつ葉グループでは、業務の性質上30分以上の長い通話も多い。他社の従量課金制のクラウドPBXでは通信料のコストがかさむことが課題だった。かけ放題のパッケージであるZoom Phoneに切り替えたことで、80%以上のコストカットを実現したという。
では、両者はZoom Phoneの導入によって、これからどんなことを実現しようとしているのか。
テテマーチのインサイドセールスでは、通話の安定によって架電時の不安が払しょくされたことに加え、通話時間が長くなっているほか、感情スコアも向上している。出口氏は、営業のパフォーマンス向上を支援する会話型インテリジェンス「Zoom Revenue Accelerator」を使って分析を進めているという。
「コミュニケーションが円滑になり、会話が弾んでいるから結果につながっているのではないか。インサイドセールスが明確にお客様の課題をヒアリングできており、質の高い商談が設定できている状態。今後も受注に向かって良い商談をつくるために、分析を重ねていきたい」(出口氏)
また、コストカットを実現したみつ葉グループは、今後全国の拠点でZoom Phoneを導入し、電話を取り次ぐ手間を軽減したいという。「すべてをZoomでまとめることによって、部署間、また拠点間での連携が非常に取りやすくなると思う」と保坂氏は言う。
ひとつのプラットフォームとして完結する点は、Zoomのメリットだ。出口氏も実感していると言い、「管理者として複数のツールからデータを集めるのがストレスだったが、Zoomのアプリで管理コストが軽減された」と語った。
最後に、今後Zoomに期待することを出口氏、保坂氏がそれぞれ語った。
「基調講演で語られたWork Happyの考え方を啓蒙していってほしい。また、プロダクトが網羅されている分、次に何をアドオンして良いか迷うため、提案やレコメンドがあるとうれしいですね。ユーザー同士が活用のノウハウを共有できる、ユーザーコミュニティがあればぜひ参加したいです」(出口氏)
「追加で(リアルタイム分析ダッシュボード)パワーパックを利用しているのですが、細かいカスタマイズ機能がもっとあると目標達成につながりそう。Revenue AcceleratorもAIがかなりわかりやすくまとめてくれるため、文字起こしや要約の機能の精度がさらに上がると嬉しいです」(保坂氏)
これを受けてZVC JAPANの澁谷氏は、「たくさんのチャレンジをして新しいプロダクトにつなげていきたい。失敗もすると思うが、使い勝手が良くないと思ったら優しく教えてほしい」と語り、さらなる進化への姿勢を見せた。
もっと「Zoom」について知りたい方へ! おすすめの資料と動画を公開中
- 資料「Zoom Workplaceの基本的な12のユースケース」
- 資料「AI搭載の電話が起こすモダンワークプレイスの変革」
- 9/7まで無料見逃し配信中 !「Zoom Experience Day Summer キーノート、スペシャルセッション、お客様事例セッション」