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SalesZine Day(セールスジン・デイ)とは、テクノロジーで営業組織を支援するウェブマガジン「SalesZine」が主催するイベントです。 丸1日を通してSales Techのトレンドや最新事例を効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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大手企業への営業戦略と実践~持続的な事業成長に向けて~ 『エンタープライズセールス』出版記念イベント by SalesZine

2024年11月20日(水)15:00~17:10

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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SalesZine Day 2023 Winter(AD)

体験向上だけで顧客はつなぎとめられない Gainsight流・カスタマーサクセスな企業文化の作り方

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 2023年1月26日に開催された「SalesZine Day 2023 Winter」。今回のテーマは「共創のリーダーとなる営業組織づくりへ」だ。本稿では、Gainsight代表取締役社長の絹村悠氏と、同社のカスタマーサクセスディレクターを務める和久井かおり氏が、対談形式で登壇したセッション「組織の垣根を超えたカスタマーサクセスな企業文化の作り方」の様子をお届けする。

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関係が良好な顧客から解約されてしまう理由

 2009年に米国で創業し、世界トップシェアのカスタマーサクセスプラットフォームを提供するGainsight。業界の草分け的存在と言える同社が2022年4月に本格的な日本市場進出を果たしてから、まもなく1年を迎える。

 セッションに登壇するのは、長年SaaS企業で営業部門をリードしてきた絹村氏と、同じくSaaS企業でカスタマーサクセス部門をリードしてきた和久井氏だ。現場とマネジメントの両方を経験してきた共通点を持つふたりが、各部門の視点を交えながら、カスタマーサクセスな企業文化に必要な組織設計・営業プロセス・評価制度のあり方を議論する。

 そもそもカスタマーサクセスとは、カスタマーサポートやCX改善と何が違うのだろうか。これについて絹村氏は「顧客成果(カスタマーアウトカム)の視点を含んでいるかどうか」だと説明する。

Gainsight 代表取締役社長 絹村悠氏
Gainsight 代表取締役社長 絹村悠氏

 購入前後のプロセスで良いサービスを提供すれば、顧客体験は向上する。しかし、顧客の業績や市場の動きが悪化すると、体験向上だけでは顧客をつなぎとめられない。契約を継続する根拠としては弱く、社内を説得する材料にもなりにくいためだ。

 そこで「カスタマーサクセスのプロセスにおいては、お客様に成果を届ける視点が不可欠」と絹村氏。和久井氏は「良い関係を築けていたお客様から、突然解約されてしまった経験がある。要因はやはり、顧客成果の視点が抜け落ちていた点にあった」と振り返る。

Gainsight カスタマーサクセスディレクター 和久井かおり氏
Gainsight カスタマーサクセスディレクター 和久井かおり氏

ゴールが違うから足並みが揃わない

 顧客の成果が重要である一方、求める成果は顧客によって異なる。そのため、成果から逆算して達成までのプロセスを描くハードルは高い。ただでさえ難しい顧客成果の創出を、日々の売上獲得に追われる営業担当者がケアできないのも、ある意味では当然と言えるかもしれない。ここに、営業とカスタマーサクセスの連携の難しさがある。

 そんな中、Gainsightは営業とカスタマーサクセスの連携を成功させている。秘訣は「成果フレームワークの共有」にあるという。課題・指標・達成のプロセスをそれぞれ明確に定義することによって、プリセールスからポストセールスに至るまで、全員が同じ品質でサービスを届け、お客様を成功に導くことができているのだ。

成果フレームワーク
クリックすると拡大します

 絹村氏はGainsightに入社した当初、営業担当者がこのフレームワークを使い続けていることに驚きを覚えたという。新しい手法を取り入れても定着せず、形骸化する営業組織が多いためだ。多くの営業組織とGainsightの違いはどこにあるのだろうか。

 両者の違いを探るにあたり、和久井氏は浸透・定着の阻害要因に着目した。そもそも営業とカスタマーサクセスは、向かっている目標が大きく異なる。「営業の目標が売上の向上であるのに対し、カスタマーサクセスには『変な売り方をしないでほしい』という守りの意識が働く」と和久井氏。実際、営業とカスタマーサクセスのトップが異なるKGIやKPIを追っているケースも珍しくない。絹村氏は「ゴールが違えばやり方も変わり、足並みが揃わないのは当たり前」と指摘する。

「売上維持率」が共通のゴールになる

 もうひとつの阻害要因が「カスタマーサクセスよりも営業のほうが偉い」という空気感だ。和久井氏は「営業という職種が昔からあるのに対し、カスタマーサクセスは概念自体が新しく『担当者は一体何をしてくれるのか』というところからコミュニケーションが始まる。役割が明確になっていない以上、対等なやりとりが難しいのも頷ける」と分析する。

 実際、営業だけに表彰制度を設けるなど、営業とカスタマーサクセスで光の当たり方に差がある組織も多いのではないだろうか。こうした評価制度の設計も含め、カスタマーサクセスの立ち位置が明確になっていない状況は多くの組織で見られる。

 しかしながら、営業のように明確な評価指標を設定しづらい点がカスタマーサクセスの難しさだ。更新率や解約率を指標とするケースが一般的だが、「それだけでは現場のメンバーが手応えを得にくい」と和久井氏は語る。

 カスタマーサクセスチーム内でうまく機能する評価指標として、和久井氏は「NRR(Net Retention Rate:売上維持率)」を挙げる。契約の継続率だけでなく、売上の維持率も指標とすることで、営業と同じゴールを目指せるというわけだ。

 また絹村氏は「各社のコアバリューにカスタマーサクセスの要素を含めることも重要」と語る。トップが折に触れて発信することで、カスタマーサクセスを重要視するカルチャーが醸成されるためだ。

三段構えの指標で活動の“腹落ち感”を生む

 できることは発信だけに限らない。和久井氏は組織体制に関するポイントを紹介する。企業によっては、カスタマーサクセス部門が営業部門内の一チームやサポート部門の下部組織として機能しているが、「営業とカスタマーサクセスが対等になるためには、両部門のトップが対等な立場でなければならない」と和久井氏。「CCO(Chief Customer Officer:最高顧客責任者)のようなポジションの新設も有効だという。

 Gainsightでは、成果フレームワークとそれを浸透・定着させる仕組みの両輪で、営業とカスタマーサクセスの連携を成功させている。

 NRRは営業と共通の評価指標になるものの、カスタマーサクセスの現場にいる担当者にとっては日々の活動とのつながりを実感しにくい。そこでGainsightのカスタマーサクセスチームが取り入れているのは、「成果指標」「先行指標」「活動指標」の三段構えで指標を区別する考え方だ。

 最終的にはNRRや解約率などの成果指標を見据えつつ、その手前にヘルススコア(※)などの先行指標、さらにその手前に良い状態を維持するための活動指標を定めることで、日々の活動が成果につながる“腹落ち感”を生んでいるそうだ。この取り組みについて絹村氏は「『お客様にとって良いことをしよう』と思って進めた活動が、組織の目指す方向性とずれてしまうこともある。そうならないために、中間指標を設定することが重要」と話す。

※顧客の状態を数値化したもの

営業リーダーは「How」も評価せよ

 一方の営業部門においては、3つの指標を「What」と「How」に分類した上で担当者を評価しているという。売上(What)を成果指標としつつ、その売上をどうやって作ったか(How)も同じくらい重視する考え方だ。

 たとえば「継続的な関係を構築できる顧客の開拓」というミッションを達成するために「成功事例の創出数」というWhatを設定する。創出数が少ない担当者に対しては、リーダーが成功事例化に至らなかった要因を一緒に探りながらノウハウを伝える。このようにしてWhatとHowのサイクルを回し、達成までのプロセスを重視するスタイルがGainsight流の評価制度だという。

 Gainsightのカスタマーサクセスと営業はそれぞれの評価制度を持ちながら、成果指標・先行指標・活動指標という考え方のベースを共有している。和久井氏は「ひとつでも同じ指標を持つことで、それを目指すためのコミュニケーションが両者間に生まれ、連携しやすくなる」と話す。

 ここまで評価制度や組織体制のポイントを紹介してきたが「最終的にはふたつの組織の信頼関係が鍵になる」と絹村氏。カスタマーサクセス部門の人数は、営業部門の人数と比べて少ないケースがほとんどだ。仮にカスタマーサクセスの担当者が10名で、営業担当者が100名いるのであれば、1名と10名を丁寧にマッチングしながら信頼関係が生まれる土壌を作るのがトップの仕事だという。「信頼関係さえできれば、現場の担当者がお互いに納得できる役割分担を自然と考え出すものです」(絹村氏)

商談時の連携で顧客に成果イメージを見せる

 絹村氏と和久井氏は、営業とカスタマーサクセスが連携することによって生まれるメリットを、商談前・商談中・商談後のフェーズごとに、それぞれの視点から語った。

 和久井氏は「提案時にどのようなコミュニケーションがあったのかを把握できれば、受注後にスムーズな対応ができる」と語る。たとえば商談中に「今できること」と「将来的にしかできないこと」を伝えて顧客の期待値が調整できていれば、その後のプロジェクトをより安全に進められるという。

 商談後はカスタマーサクセスとして、自社の全製品を頭に浮かべながら顧客と会話を重ねているそうだ。会話の中でアップセル・クロスセルの機会を創出できた場合、営業担当者と連携すれば受注につなげることができる。

 一方、絹村氏は営業視点で次のように語る。

「さまざまなお客様の成功を支援するカスタマーサクセスは、自社製品が持つ価値を数多く把握しています。商談前にカスタマーサクセスが持つ豊富な“引き出し”の力を借りれば、良い提案を作ることができます。商談中のお客様は、製品の機能や特徴ではなく、成果に至るまでのプロセスを知りたいはずです。そこで、商談の最後にカスタマーサクセスの担当者を紹介して『この人が成功に導きます』とはっきり伝える。そうすれば、クロージングにも効果的です」(絹村氏)

 Gainsightでは、営業とカスタマーサクセスの連携をスムーズにするカスタマーサクセスプラットフォームを提供している。必要なデータを統合・可視化し、マーケティングやカスタマーサポートを含むすべての役割に対してアクションを促すプラットフォームだ。

 カスタマーサクセスが成功を積み上げることで顧客の中にファンが生まれ、ファンが新たな顧客を呼ぶ。絹村氏は「営業主導で新規顧客を獲得しながら成長していくこれまでのやり方に、カスタマーサクセスという新たな軸を追加することで、組織の持続的な成長モデルができる」と述べ、セッションを締め括った。

世界トップシェアのカスタマーサクセスプラットフォーム「Gainsight」

Gainsightは、カスタマーサクセス・製品体験・コミュニティエンゲージメントに焦点を当てた業界随一のカスタマーサクセスプラットフォームを提供し、あらゆる活動の中心にお客様を据えた“ヒューマンファースト”の活動を可能にします。関心をお持ちの方はGainsight公式サイトよりお問い合わせください。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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