「買ってくれた人」だけがお客様ではない
──テクノロジーを活用し、営業業務および組織の改革に本格的に挑んだ経緯についてお聞かせください。業界的な背景や、抱えていた営業課題など、どのような背景があったのでしょうか。
小山(専務取締役) 少子高齢化が進み日本全体の市場が縮小することが予想されるなかで、不動産業界もまた縮小傾向の業界であることは間違いありません。さらに若年層が少なくなる中で、それまで労働集約型で営業活動に携わっていた人材が不足すれば、その分売上の減少を避けられません。そうした事業環境下で企業として生き残っていくためには、しっかりとした戦略を打ち出し、テクノロジーを活用しながら営業組織自体を改革する必要がありました。
そこで真っ先に考えたのが、営業現場における「顧客の概念」を変えることでした。これまでとくに若いスタッフは、目の前のお客様しか追わない傾向があり、「物件を決めてくれた人」や「買ってくれた人」がお客様という考え方が見受けられました。可能性が高い顧客対応ばかりに熱心になってしまっていたのです。それを「ヘヤギメ!」に関わってくれたすべての方をお客様と見なそう、ファンになっていただこうと視点を変えたのです。そこで、社内キャンペーンとして「ヘヤギメ!ファン化プロジェクト」を行いました。
具体的には、インサイドセールスチームを立ち上げ、若いスタッフに継続的に顧客とつながる経験を積んでもらい、その経験をもとにあらためて営業現場に戻ってきてもらうというスキームを考えました。しかしながら、インサイドセールスにアナログで取り組むのは負担が大きすぎます。そこで、営業現場にSales Techを導入しようと考えるようになりました。
──実際にデジタル化をすすめるにあたり、どのあたりから手を付けられたのですか。
小山 まず2017年ごろに取り組んだのが、賃貸仲介部門の法人向け営業における業務フローの改善です。契約いただいた法人様の転勤者に向けて、転勤先の物件を検索して仲介するというサービスなのですが、営業担当者と契約担当者の情報連携時に紙の書類やメモを手渡しするというアナログな部分が残っており、齟齬や抜け漏れなど人的ミスが生じてしまう恐れが常につきまとっていました。そこで、顧客への信頼性を高めつつ、効率化を図ろうとSFAとCPQを導入し、業務連携をデジタル化することに取り組みました。