1年で変化した職場環境 次の課題は"ニューノーマルに対応できる人材"の強化
筆者は人材・組織開発のコンサルタントとして企業のコミュニケーション強化に携わっています。特に、営業組織は顧客対応と社内協働のコミュニケーションの質によって業績に大きな影響を及ぼすため、多くの相談をいただいています。ニューノーマルでのビジネス・コミュニケーションの今後を考えるうえで営業組織の変化はとても参考になると考えています。そこで、本連載「顧客との『オンラインの場づくり』」では、コロナ禍での職場環境の変化を整理したうえで、顧客との商談に関する「4つの場」を取り上げ、コロナ禍による場の変化と対応策について解説します。
「4つの場」を説明する前にコロナ禍の1年で我々の環境はどのように変化をしたのかデータを見てみましょう。図1は経団連が2021年1月に実施した調査結果です。多くの企業が情報機器や通信環境を整備するとともに業務内容やプロセスの見直しを行っており、人事制度や勤務体系の改定が続いています。一方、研修の実施は30%に留まっています。これを企業がニューノーマルの対応を行ううえでの順番を示すものと捉えると非常に興味深いデータです。
コロナ禍によって、リモートでの業務を余儀なくされる中、まずはオンライン会議などの環境整備を行う必要がありました。次に、リモートでも業務が運営できるように会議や管理方法の見直しなどを行い、そして、業務の評価や労務管理などへの対応が必要となります。ところが、これらの職場環境の変化に順応するための従業員のスキル・知識強化は後回しになる傾向がありました。しかし、最初の緊急事態宣言から1年が経過し、ある程度の環境整備が見えてきた組織にとって、次の大きな課題は、ニューノーマルに対応できる人材の強化になります。
もっとも優先順位の高い人事施策は「職場内コミュニケーション強化」
次に、図2はリクルートマネジメントソリューションズが2020年11月に企業の人事部門を対象に実施した調査結果です。2021年度の人事施策として優先順位を上げた項目のうち、もっとも多いのは「職場内コミュニケーション」(56.4%)となっています。ソフトウエアの導入や在宅勤務可能な制度改定など業務に必要なシステムの整備はされたものの、新たなコミュニケーション手段に従業員が適応することが求められています。