今回お話を伺った達人は?
●元木雄介さん
株式会社ベーシックで月間100商談をこなす元木さんは、2017年時点でオンライン商談の受注最高額を記録し、社内の「ギネス樹立者」に!圧倒的仮説力でヒアリングの質は変わる、受注できるかは提案前の「課題整理」で7割決まるという元木さんのスキルアップ術について伺いました。
「音声写経」でトップセールスの売りかたをインプット
――元木さんのキャリアについて教えてください。
キャリアは営業ひと筋です。ベーシックは2社めで、新卒時はホームページの制作を行うCMSの会社に入社しました。1社めは当時は多かった「ザ・営業会社」で1日350件アウトバウンドコールをこなし、受注につながるアポイントにつなげられるようになると外勤営業になれるという仕組みでした。
最初は非常に苦しみました。新卒にも入社してすぐに査定までの4ヵ月間、売上競争があるのですが、僕だけが売上ゼロで周りはすでに2~300万円売り上げていたときは挫折を味わいました。とはいえ、少しずつ成果を出せるようになり外勤営業として東京の新卒で年間売上1位を達成できました。営業の力をつけるなかで、もっと顧客のサクセスに寄り添える営業活動をしたいと考えるようになりました。
CMSの会社だと、顧客のホームページ作成がゴールになることが多かったのですが、ウェブマーケティングの観点で考えれば、ホームページを作成するのはあくまでスタート地点で、顧客の成功にはその後の運用が非常に大事です。ベーシックが提供するSaaS型のマーケティング支援のビジネスは、お客様をサクセスさせないと自分たちも売上が立たない構造ですから、面白いと思って入社を決めました。
――入社してからすぐにオンラインセールスになったのですか。
はい。すでに2017年当時に当社ではオンラインセールスが普及している状態だったので、面接で自分の営業キャリアを話したところ、「営業はしてもらうけど、訪問はしなくていいよ」と言われて、なんだそれと(笑)。アポをとったら訪問するのが当たり前の営業を経験してきていたので、びっくりしました。前職では、初めての訪問アポは静岡まで行きましたから、オフィスに座ったままの営業は想像がつかなかったです。
初めは難しいことも多かったです。初回商談でお客様の課題整理が追いつかないことがひとつ。先方のカメラがオンでないときはとくにお客様の気持ちを察しづらく、複数商談では誰が話しているか、誰がキーマンかを掴みづらかったです。
そこで4~5名を複数商談の際は、参加者全員の名前と役割を確認し、役割と性別や声の特徴をすべてメモします。商談中にキーマンを特定できなければ、予算をとるためのスケジュールを具体的に決めるなど話を進めることができないので、キーマン特定のために各担当者の特徴把握は必須です。
ちなみに、キーマンを見極めるポイントは目標に対しての発言です。たとえば僕らの場合はマーケティング支援をしていますが、「問い合わせ数を増やしたい」だけでなく、その後の受注率やアポ率などより具体的なKPIに言及する人が事業を推進しているキーマンだろうと察知します。
――元木さんはどのようにオンラインでの営業スキルを高めたのでしょうか?
オンラインセールスの良いところはすべて録音できることです。自分の商談とエースの商談を録音したものをすべて書き起こす「音声写経」を実施しました。ヒアリング手法やトーク構成をすべて分析することで、真似をしやすくなります。具体的には、トークは「アイスブレイク」「ヒアリング」「課題整理」「相手に気づきを与える」などの構成に分かれているので、エース営業のトークをブロック化して四角で囲い、カテゴリ分けするとインプットしやすくなるのです。
2時間の商談だと書き起こすのに4時間くらいはかかりますし、当時は書き起こすのは僕くらいでしたが、僕の受注率が写経を始めてからめちゃくちゃ上がったので、ほかのメンバーもやるようになりました。実は1~2個実施しても意味はないです。僕は40時間くらいかけて10商談分書いたのですが(笑)。それくらいやると、次第にお客様のこの反応にはこの構成で進めるべきだと、構成やノウハウが頭や体に染みついているような感覚になります。