「Salesforce の最新セールスメソッド」をすばやく吸収
――まずは「Fleekdrive」誕生までの上家さんのキャリアについて教えてください。
22年ほど前に常駐派遣のSIerとしてIT業界に入り、組み込み系の仕事からキャリアをスタートしました。その次は商社に常駐してERPの仕事に出会い、その会社にそのまま引き抜かれ、社内システムを提供していました。社内システムの企画はお金もたくさんかける長いプロジェクトです。当時は4~5年間、10億円ほどかけたプロジェクトに携わりました。ただ、一度行えばそれほど変化がない仕事でもありました。自分がエンジニアとして成長するためにSIerのキャリアをここで終え、パッケージベンダーへと入社します。
初めは普通にエンジニアとして業務をしていたのですが、いつの 間にか製品をすべて監督する開発本部長の役割を担うようになりました。仕事の範囲を広げていくなかで、人の開発したものでなく、自分自身で開発したサービスでもっと顧客に価値を提供できるのではないかと考えるようになりました。当時提供していたパッケージはカスタマイズも行っていたのですが、それではユーザーの情報やデータが統合されませんし、そもそも誰もが使えるようなUX 設計ができていないとも考えられました。それから、Fleekdriveの原型のようなものの設計を開始したのです。
――FleekdriveはSalesforce上でも提供されています。上家さんはいつセールスフォース・ドットコムと出会ったのでしょう。
ユーザーとしてはかなり古いです。2000年、セールスフォース・ドットコムが日本に来たときぐらいですかね。経験してきた3社でSalesforceが使われていたので、開発基盤として使ったことはありました。ただ営業業務には携わっていなかったので、アプリをつくることができるプラットフォームという印象でした。
Fleekdriveの事業を始めたばかりのとき、自分でサービスを売ら なければなりませんでした。僕の周りはエンジニアばかりで、売るノウハウがなかったのですが、まずオフラインのイベントでサービスのコンセプトを広げていこうと考えました。そうすることで見込み顧客データが集まってきたタイミングで、Salesforceで管理することにしたのです。Salesforceを使うことで初めて「SFAとは何か」「営業プロセスはどういうものか」を学んでいきました。営業未経験で、昭和の営業的な感覚がなかったからこそ「Salesforceの最新セールスメソッド」を早く吸収できたように思います。セールスは、学問的で体系的なものであると感じながら、営業の仕組みを構築していきました。
小さいながらも前向きな雰囲気に包まれていた
AppExchangeコミュニティ
――セールスフォース・ドットコムとパートナーになったきっかけについて教えてください。
事業をスタートした2011年は1年間ずっと開発をしていました。実は最初はAWS版を出そうと思っていたのですが、Salesforceで営業を学ぶうちに、今後セールスのプロセスにおいても重要なドキュメントのやりとりがクラウド上で行われていくだろうと感じたのです。そこで、Salesforce上で動くサービスとして提供できないかと、直接訪問し「パートナーとしてビジネスをしたいです」と伝えました。セールスフォース・ドットコムもAppExchangeの拡大期にあって割とスムーズに協業が始まりました。
――上家さんから見て同社が提供するエコシステムはどう変化してきたように見えますか。
2011年ごろ、同社の主催するイベントに参加し、日本全国いろいろなところへ行きました。当時のコミュニティは小さく、SalesforceユーザーもAppExchangeのことをまだ知らなかったり、「Salesforceとは何か」という来場者もいたりしました。
AppExchangeパートナーのブースに来る人は多くはなく、小さなブースにひとりずつ立っていたのですが「これからだよね」という前向きな雰囲気がそこにはありました。お手洗いに立っている間に、別の人が代わりにサービスを説明してくれることもあって、本当に家族みたいな雰囲気でした。チームスピリットさんや、UPWARDさんともそのころに出会っています。最初はとても小さなコミュニティでしたが、この5年ぐらいで一気に大きくなり、Dreamforceに参加したときはその拡大を、身を持って感じました。その盛り上がりが、我々パートナーにもきちんと循環してきています。
同時にExcel更新も可能!
ファイルコラボレーションが実現する業務効率化
――Fleekdriveを活用している企業はどのような課題をお持ちだったのでしょうか。
ファイルの分離です。SFAやMAの活用で、セールス・マーケティングのプロセスのデジタル化が進んでいる一方、営業資料は社内のファイルサーバー上、もしくは個々の営業担当者のPC内だけに置いてあるという企業様もいらっしゃいます。このギャップを埋めることができないかと、当社のサービスを選んでいただくことが多いです。
ファイルサーバーは拡張もしませんし、スケールもしません。リッチになるわけでもないです。たとえば、Fleekdriveでできることのひとつに、ファイルのアップロード・ダウンロード範囲を制限することがあります。あるファイルに関しては、アップロードだけできるように、あるものに関してはダウンロードだけできるように。これはファイルサーバーではできないことです。ファイル共有は双方向のものという考えもあると思うのですが、実際の業務においては双方向だと困ることも多いでしょう。またファイルサーバーの場合は、自社ネットワークにつないだうえで、ユーザーが自分でファイルにアクセスする必要があるわけですが、そのような共有時の手間やコストをゼロにすることを目指すのがFleekdriveです。
――ファイルコラボレーションがスムーズに行えることは業務効率の観点から見ても非常に重要ですよね。一方で、営業組織の最終目標はやはり売上を上げ続けることです。Fleekdriveを使うことで、営業組織が管理の面だけでなく、得られるメリットはありますか。
たとえば、日本企業ではパートナーにも営業してもらうスタイルが多いと思います。そのパートナーが自由にアクセスできるエリアをFleekdriveの中に設け、活用しているお客様も多いです。そうすると、パートナー側から「このコンテンツは使いづらい」というフィードバックや、資料を評価し「レーティング」を行うことができます。メーカー側はこれまで、静的な場所にファイルを置き、提供するだけのプロセスで可視化されていなかったパートナーの生の声を知ることで、セールスコンテンツの改善スピ―ドを上げています。それまでは可視化のためにアンケートの回収などを行っていたわけです。
――メーカーとパートナー間でタイムラグなくフィードバックが行えるのは案件創出や売上向上にも良い影響がありそうです。組織内でのファイルコラボレーションにも使うことができるのでしょうか。
もちろんです。とくにExcelを売上台帳のように使っている場合、それぞれが記入したものを、結局誰かがコピペも行いながら整理しているということがあると思います。ちょっとしたことですけれど、それが1日2回もあると十分に業務の妨げになりますよね。Fleekdriveを使えば、Office365が入っていなくてもExcelを複数人で同時に更新できます。誰がどのように更新したかも、きちんと履歴が残りますし、その場でチャットも立ち上げられるので、該当箇所を指示して「ここを直してほしい」とファイル上で伝えることもできます。
この機能は、当社の開発チームでも使っています。人数が増えてきたときにこそコラボレーションの観点が重要だと思っています。
同じ業務を行っている人同士の、点と点がつながっていくコラボレーションではなく、さまざまな業務を行う人たちのばらばらの点をすべてつないでいくコラボレーションを実現するためには、やり方も変えなければなりません。
――これから御社がさらに挑戦していきたいこと、提供していきたい価値について教えてください。
営業担当者はまずは自分の取引先や商談が最優先になるとは思うのですが、マネージャーはすべてを統合的に見たり、かけ合わせたりしながらビジネスを伸ばしていく必要がありますから、コラボレーションツールやその考え方は必然のものとなっていくと信じています。
まだ現時点では、ファイルをシェアしたり、管理したりするという点でFleekdriveを選んでくださっているお客様が多いです。ただ、これからは多くのビジネスパーソンがさまざまな場所で働くような時代が必ず来ます。離れていながらも顧客やパートナーとビジネス上の距離を縮め、互いの労力を小さくするようなコラボレーションを実現するものを、さらに提供していこうと考えています。