クラウド型データ活用プラットフォーム「Domo」を提供するドーモは、島津製作所が、DXを加速する全社データ活用の推進に向けて、DX人材育成プログラムにDomoを活用していることを発表した。
導入の背景
島津製作所は、「データに基づいた製造」を実現するために2019年に製造部門からDomoを導入した。現在のDX・IT戦略統括部 DX戦略ユニット主任であり、当時の製造推進部の山川大幾氏はデータ活用のための仕組みを構築するため、必要な機能をオールインワンで提供しているDomoを選定した。Domo導入後は、情報収集とデータ加工が可能になり、MAIC(Measure, Analyze, Improve, Control/測定、分析、改善、管理)サイクルが回るようになった結果、製品の棚卸削減に成功し、製造部門でのDomoの活用が広がった。
データ活用定着化に向けた打開策:DXを加速させるデータアンバサダーの活動
製造部門のデータ活用の成功を受けて、社内のDXを推進していくデータアンバサダーとして活動していた山川氏は、データ活用の社内啓蒙活動やトレーニングを実施してデータ活用人材を増やしていった。しかし、全社データ活用の定着に向けたデータドリブン文化の醸成には至っておらず、全社データ活用にDomoを活用する意義を各部門に説明することに時間が取られていた。この状況を打開し、データドリブン文化を醸成する契機があった。
1.発想の転換:Domoをたんなるデータの可視化からアクションを取るためのダッシュボードとして活用
山川氏は、勉強会や社外交流会への参加、ドーモのコンサルタントからのアドバイスなどを通して、「Domoの活用の本質はたんなるデータの可視化ではなく、経営課題解決のためのKPI設定であり、そこから行動につなげることが重要だ」と考えるようになった。
2.グローバルSCMセンターでアクションにつながるダッシュボードを作成:情報共有にかかる工数を月間51時間削減
コロナ禍の分析計測事業部 グローバルSCMセンターでは、需給バランスの崩れによる物流停滞、部材入手難、納期遅延、さらに、海外販売会社の需要の変化が生産計画に反映され、これらの生産計画の状況がサプライヤーに伝わるまで最大2ヵ月以上を要していた。そこで、山川氏はグローバルSCMセンターの田口公史氏とドーモのコンサルタントとともに、グローバルSCMセンターの業務負担となっていたサプライチェーン関連部署との情報共有とデータに基づく判断が取れるように、グローバルの需要をできるかぎりリアルタイムに収集し、そのデータを生産計画や配送計画のアクションにつなげるダッシュボードを作成した。その結果として、サプライヤーへの情報共有にかかる工数を月間51時間削減した。
データ活用定着化の基盤となるDX人財育成の取り組み
1.ロールモデルから100名のDX人財育成プログラム立ち上げへ
グローバルSCMセンターの取り組みにより、人の勘・経験・度胸に依存した判断からデータに基づく意思決定へと変わり、かぎられた製造系のリソース(部品、人、設備)で連結売上・営業利益を最大化できる仕組みの基礎を構築した。これらの社内への貢献が評価され、本取り組みは、同社の改善活動大会で大賞を受賞した。さらに、受賞をきっかけにDomo利用者数が増加し、データ活用の定着化が進んだ。
この成果を受けて、山川氏は受賞者の田口氏をロールモデルとして、「課題解決に向けたアクションとストーリー設計」ができるビジネスアナリストを育成するDX人財育成プログラムを立ち上げ、「Domo Dive Program」と名づけた伴走型の研修を開始した。
2.伴走型DX人財育成プログラム「Domo Dive Program」の成果
DX人財育成プログラム「Domo Dive Program」を受講した分析計測事業部の松尾佳奈氏は、Domoを活用して、業務の一環である分析依頼のトレンド分析、受注・失注分析、機能改善情報の分析に要する工数を従来比60%削減した。この取り組みも同社の改善大会で表彰された。
受講者は同社のデータを使ったDomoの活用法、コンサルティングの手法として使われるビジネスクエスチョンやフレームワークなどのスキルを学ぶとともに、データからアクションにつなげるデータドリブンな思考法も習得する。「筋トレのように継続して考える癖をつけること、ニーズを具現化できるような質問の仕方が大切だと知りました」(松尾氏)
3.効率的で持続性のある人材育成プログラムの実施へ
DXを加速するには人材育成が必要であり、その人材育成プログラムを効率的に継続できる仕組みを作ることが成功の鍵となる。
島津製作所では、DX人財育成プログラムを実施するとともに、Domoを活用して、従業員の研修の受講状況や学習効果の分析をしている。DX人財の成長過程を把握して、ひとりもつまずくことなく、自走できるまで伴走する仕組みを作り上げている。「Domoを使って人財育成しているのが当たり前となり、今では切っても切り離せません」(山川氏) DX・IT戦略統括部では、中期経営計画の達成に向けて、2025年度末までに100名のビジネスアナリストを育成することを目標とし、人財育成に取り組んでいる。