現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、多くの企業がテレワークの緊急導入に迫られている。そこで、2015年よりテレワークを実施しているワークスイッチコンサルティングのテレワークに関するデータと、アトラエの運営するエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」のエンゲージメントデータをもとに、テレワークとエンゲージメントの関連についての共同分析を実施した。
分析の結果、テレワークの継続により、エンゲージメントが低下するパターンが少なくともふたつあることがわかった。なお、同分析では低下したエンゲージメントに対して有効であったと思われる対処法も判明。両社はこれを発表した。
テレワークの長期継続による組織への共感とチームワークへの悪影響
次のグラフは、wevoxのエンゲージメントスコアを5つの要素に分解し、その推移を今回の調査対象の部署(group_2)についてプロットしたグラフ。
この部署においては、「チームワーク」と「組織への共感」のエンゲージメントスコアが長期的に下降トレンドであることがわかる。これは多くの人々が懸念する通り、長期間のテレワークにより人と人とが直接会えない時期が続くことで、人とのつながりが弱まってくる可能性があることを示唆している。
新入社員・異動した社員のエンゲージメント低下について
次のグラフは、wevoxで測定されるエンゲージメントスコアの推移を、調査対象の2部署に対してプロットしたもの。2019年10月の前後で、異動があったgroup_1の部署のみスコアが急落している。詳細を確認すると、group_1のみ仕事への熱中度合いが低下していることがわかる。
以上の事実を総合すると、テレワークの実施と人事異動が重なると、仕事への熱中度合いが低下する事があることを示している。(同時期にgroup_2のスコアに変化はないので、全社的な要因ではなく、group_1に固有である異動が原因であると考えられる)
これは、テレワークによって次のふたつの実施が困難であったことが理由として推察される。
- 新しい業務について、自分のやるべき仕事やその意義を明確にしていくこと
- 新しい環境において、一緒に働くメンバーの人となりを知っていくこと
これはこの4月に入社した新卒・中途の社員でも当てはまる可能性が高いと考えられ、何らかの対応が求められる。同共同分析では、実際に効果があったと思われる施策が見つかった。
エンゲージメント低下へ対するテレワーク時の対処について
group_1の場合も、2019年11月以降、仕事への熱中度合いが回復したのみならず、他のほぼすべての項目で状態が改善している。
この背景には、ワークスイッチコンサルティングにて行われているいくつかの施策があると考えられる。
- オンライン通話サービスを利用した1on1
- 週次の部署全体のオンラインMTG
- 月次のワークショップ
これらによる組織方針の共有を密に実施していた。
特に「仕事への熱中」に関するスコアの低下を察知したあと、1on1などの施策を通して目標設定を集中的に行うことで、2019年12月以降には、異動前と同等レベルかそれ以上を達成している。
また、group_2での低下が指摘されていた「組織への共感」や「チームワーク」の項目もともに改善していることが確認できる。これは、テレワーク環境下で直接顔を合わせることができなくとも、1on1などのコミュニケーションを適切に実行することで、組織への共感やチームワークを維持・強化することが可能であることを示している。
同分析の結果は、この緊急時においてもオンラインでのコミュニケーションなどを工夫し活用することで、エンゲージメントの低下を防ぎ、活き活きと仕事を行うことが可能であることを示唆する結果となったと考える。
分析概要
対象者
ワークスイッチコンサルティング内でテレワークを実践している社員を約20名選出
- Group1:テレワークを実施しており、2019年10月に人事異動があった組織
- Group2:テレワーク実施中の組織(同10月には大きな人事異動なし)
※約半数が4月入社の新卒メンバー
分析対象期間
2019年10月〜2020年03月
※直近の人事異動があった期間が調査対象
テレワーク実施状況
調査対象のチームでは、週4~5回のテレワークを実施
エンゲージメントデータ
2019年10月〜2020年03月の分析対象期間の「wevox」のエンゲージメントスコアを活用