「ニーズ」があっても、必ず売れるとは限らない
営業職なら必ず「顧客のニーズを把握し、応えなさい」と指導されるでしょう。一般的にニーズとは「顧客が求めているもの」と理解されています。しかし、実は顧客のニーズにはふたつのパターンがあることを知っていますか? ニーズのとらえ方を間違えると、せっかく顧客と真摯に向き合っているにも関わらず「売れないニーズ」に応えてしまうかもしれません。今回は顧客への訴求力を上げる「ニーズとウォンツ」について解説します。
コピーライティングの世界において、ニーズは「必要性」ととらえられます。今回初めて、ニーズを「マストニーズ」と「ベターニーズ」のふたつに分類しました。
- マストニーズ:自分にとってないと困るもの(商品・サービス)
- ベターニーズ:あったら良いけどなくても困らないもの(商品・サービス)
マストニーズは、たとえばトイレットペーパーやハンドソープなどの生活必需品が当てはまります。必要性が高いため安定して売れますが、緊急性はないため「安いものを選んで買おう」という意識が働き、価格が安くなる傾向があります。
マストニーズを満たす商品・サービスが高くても売れるのは、需給バランスが崩れたときです。たとえば、コロナ禍の初期はマスクの価格が高騰しましたね。供給が需要に追いつかず、さらに「今すぐないと困る」という緊急性の高い「差し迫ったニーズ」の場合、価格が高くなる傾向があります。
しかし、マスクの事例は感染症拡大という非常事態(外的要因)によって起こったもので、売り手がコントロールできませんし、需給バランスが正常に戻れば価格も元に戻ります。
売り手が意図的につくり出せる差し迫ったニーズの例として、「短期間集中の語学講座」が挙げられます。海外転勤の可能性がある方にとって語学習得は必要性が高いですが、いつ辞令が下るか明確でない限り「そのうち受講しよう」「安い教室を探そう」と考えるでしょう。
しかし、急に海外赴任が決まった人をターゲットにして売る場合はどうでしょうか。「今すぐ語学を習得しなくてはいけない」と緊急性が高まり、受講料が高くても講座に申し込むでしょう。このように、どのような人を対象に商品・サービスを訴求するかターゲット設定を考えることで、差し迫ったニーズをつくり出すことができるのです。