ボトムアップのSFA導入 “タカラの営業”の変化を具体化
──あらためてSFUG CUP 2023 大企業部門での優勝おめでとうございます。まずはタカラスタンダードさんが抱えていた営業課題について教えてください。
新實 ひと言で言うと、「売れる営業」を育てるためのノウハウがなく、「このままだとタカラの営業が大きく育っていかない」と危機感を抱いていました。人口減少の中で業界自体もシュリンクしていきますし、このままの営業では「勝てない」。そして、若手営業には昔ながらの営業スタイルは響きません。「昔は『不夜城』だったんだよ」という言葉がかつての飲み会では笑い話になりましたが、いまはそうもいかない。“昭和の営業”で成果を出してきた管理者が、いまのやり方で若手を成長させるためにツールと仕組みが必要だったんです。「管理職を変える」というのも一連の改革の大きなテーマでした。
森 営業向けの勉強会なども存在していましたが、「勘と経験がもたらした成功体験」や「その担当者だからこそできた成功体験」の共有が多かったですね。成果が出ているときはそれで良いのですが、“売れない”ときにデータをもとに課題を把握し、フィードバックできる状態になかったのは課題だったと言えます。
──SFUG CUP 2023のプレゼンテーションでは、新實さんも含めて「SFAの導入関して半信半疑」な方が多かったというお話が印象的でした。SFAの必要性を感じられた背景について掘り下げてお聞きしたいです。
新實 当初は我々の営業力を強化するためにコンサルからSFAの活用を進められたんです。ただ、この時点でまず半信半疑だったんですね(笑)。というのも、タカラスタンダードの営業が地道に毎日積み重ねている「営業」の仕事と、Sales Techを活用して行う「営業」のイメージが大きく乖離していて。
絵に描いた餅にしてしまわないように、営業出身のメンバーもいる営業企画部の中で「SFAを活用してタカラの営業はどう変わるのか」を具体的に考え、60枚くらいのスライドをつくりました。たとえば「訪問件数が具体的に可視化されることで、上司は『最近訪問できていないのでは?』という粒度ではなく、『今週の訪問件数は平均値より少なかったので、来週は挽回すべく先行して訪問予定を立てよう』と具体的な指示を出せるようになる」などです。
そうやって1つひとつの変化を書き出してみて、これらを実現するSFAとして柔軟性や拡張性があり、3rdパーティのアプリケーションも充実しているSalesforceが適切だろうと腹落ちしたというような感じです。
──必要に迫られているからとりあえず導入しよう、ではなくギャップを埋めたうえで導入に進んでいったんですね。
新實 当社のSFA導入はトップダウンではなかったんですよね。我々の部門のほうで副社長、社長、役員(取締役会)と複数のプレゼン機会を経て、導入に進んでいきました。かなりボトムアップです。
──導入当時、森さんはSFAの現地定着リーダーだったと思うのですが、率直にどう感じられましたか。
森 現場としては「反発」というよりも、「疑問」のほうが大きかったというのが正直なところです。社内には基幹のシステムもありますし、何がどう変わるのか、今のままで十分成り立っているはずなのに……と。
新實 まさにそこは伝え方が難しい部分でした。現在も基幹システムはあるのですが、基本的には見積もりや発注を管理するもので、営業成果を挙げるめのSFA機能は存在していなかったんです。両方必要なものなので、実際には基幹システムの一部機能をSFAのシステムを移管したのですが、現場からは「システムのリプレイスかな?」ととらえられてしまった部分もあったんですよね。いままでとはまったく違うことにチャレンジすることを当初からもっと上手く伝えられたのではないかなというのは反省点です。