日本企業に「RevOps」が必要な3つの理由
Xactlyは2021年に日本法人を設立し、日本企業の「稼ぐ力」の向上を支援している。福眞氏は同社が日本進出に至った3つの背景を次のように説明する。
「ひとつには、グローバルで“RevOps”が急速に発展してきたトレンドがあります。RevOpsはデータドリブンで収益を継続的に高めていくオペレーションのモデルで、Gartner社によると75%の企業が2025年までにこのモデルを導入すると言われています」(福眞氏)
RevOps関連のサービスを扱うXactlyは、2021年に前年比86%の成長を達成。需要の高まりがうかがえる。
「ふたつめは日本の経済の課題です。収益性の向上に課題を抱える日本企業は多く、G7の中でも1人当たりのGDPがもっとも低いといわれています。日本政府も収益向上のための取り組みを模索する中、Xactlyは売上のトップラインを上げるためのソリューションを提供しているため、貢献できるのではと考えました」(福眞氏)
3つめの背景として、福眞氏は日本企業における営業人材への投資強化を挙げる。
「先日、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が営業社員に最大で年収1億円を可能にする人事制度を発表したように、最近では非常に夢のある人材投資の話も出てきました。Xactlyはインセンティブ(報酬)管理ソリューションも提供しており、この分野でも日本企業に貢献できると考えています」(福眞氏)
では、昨今グローバルトレンドとなっているRevOpsとは何か。福眞氏は「企業の全部門において、データドリブンでリアルタイムに収益状況をモニタリングしながら売上向上していくモデル」と説明。次の図を示しながらその仕組みを説明する。
営業収益を向上させる中心には、やはりセールス部門がある。売上フォーキャストの精度を上げ、未来に対するリスクを正しく予測できるようになれば、営業リソース配置や計画を適切に変更することが可能となる。加えて、売上成果の上がった営業担当者に報いるためのインセンティブ(報酬)も、パフォーマンスを最大化するために重要だ。全部門でフォーキャスト(売上予測)とインセンティブ(報酬)のサイクルを回し、収益の最大化を目指すのがRevOpsの取り組みであるという。
営業目標の達成に自信があるリーダーはわずか6%
Xactlyは、日本においてRevOpsの「フォーキャスト管理」と「インセンティブ管理」のソリューションを提供。福眞氏はそれぞれのソリューションがどのように収益性向上へ貢献するのか、具体的に解説する。
まず、フォーキャスト管理を行うプロダクト「Xactly Forecasting」を紹介する。福眞氏は「『フォーキャスト』というと構えてしまうかもしれないが、日常にフォーキャストは溢れている」と前置き。たとえば、ゴルフが趣味の福眞氏は「月曜日から週末の天気予報が気になるため、あらゆる天気予報アプリを見て、雨が降りそうなら時間や場所を変えることで『ゴルフをする』という成果を出せている」と話す。
「Googleマップを使って渋滞を回避することもフォーキャスト」と福眞氏。日常生活に浸透しているにもかかわらず「未だにビジネスの世界、特に営業では勘や気合に頼りがちだ」と指摘する。
では、ビジネスの現場でフォーキャストする(売上を予測する)際に起きている課題は何か。福眞氏は調査会社のデータを参考に、実態を整理する。
ひとつは「これは間違いないだろう」とコミットしていた商談の成約率が、実は約半分以下であるという実態だ。案件数や営業メンバーの数が増えるとすべてをモニタリングするのが難しく、アクションの抜け漏れが出てきてしまうことに起因する。
ふたつめに「営業リーダーの6%しか営業目標の達成に自信がない」という実態を紹介。営業担当者によってフォーキャストの読みにばらつきが見られるうえ、リーダーも勘に頼ってしまっているため、フォーキャストの精度が低くなっているという。その結果「売上見込みを大幅に修正したり、大幅な目標未達になったりする現場も多いのでは」と指摘する。
3つめは、フォーキャストの標準的なモデルを構築できていないという実態だ。「グローバルにおいても3分の2の企業がモデルを構築できていない」と福眞氏。営業担当者がフォーキャストを立てても、各担当者のパソコンにエクセルデータとして眠っている状態が少なくないという。
「全社でタイムリーにフォーキャストデータを把握・共有できておらず、結果的にアクションや投資計画が誤ったものになってしまっているのが実態ではないでしょうか」(福眞氏)
販売単価6割増、セールスサイクルの大幅短縮を実現
これらの課題に対して適切なフォーキャストモデルの確立と、それに応じた営業管理を実現するのがXactlyのソリューション「Xactly Forecasting」だ。「Salesforce」など既存のCRMにプラグインで容易に実装でき、過去の営業データを含め商談パイプラインの量と質を分析し、着地予想を導き出す。
たとえばXactly Forecastingでは「商談の量」いわゆるパイプラインの増減や進捗を自動分析する機能を搭載。それも「新規・既存の契約ごと」「社員ごと」「チームごと」など、知りたい切り口ですぐに調べることが可能だ。
さらに、CRMのデータをリアルタイムで自動レビューする。アクションの抜け漏れがある場合は自動的に通知して各営業担当者の行動をコーチング。全商談をスコアリングし、確度を数値で見える化するため、営業担当者は結果的に商談の質向上が図れる。
そしてもっとも重要な「着地予想」だ。各担当者のパソコンに眠っているようなデータはXactly Forecastingで一元管理できるようになるため、AIや機械学習をフルに活用し、勘に頼らないデータドリブンな売上の着地予測が可能となる。
「実際にXactly Forecastingを導入した企業では、受注件数が約2割増、販売単価が約6割増、平均受注期間(セールスサイクル)が約60%短縮といった効果も出ています」(福眞氏)
そのほか、営業担当者ごとにどれぐらい各プロダクトが売れているかを分析できる機能も搭載。この機能はアップセル・クロスセルに有効だという。「非常に優秀で数字を達成している営業担当者でも、実は売っているプロダクトに偏りがあり、ほかのプロダクトもクロスセルすれば売上をより増やせる場合もある」と福眞氏。
さらに、CRMとは違い過去からのデータをスナップショットで蓄積している点が特徴だという。導入企業はこれまでのトレンドを見ながら商談停滞となっているのボトルネックを特定したり、営業担当者ごとの平均受注率といった特性を明らかにしたりできるほか、プロダクトごとの平均受注期間(セールスサイクル)の傾向など、過去のデータを参考にしながら将来の成果へ十二分に生かすことができるという。
インセンティブ管理が重要なわけ
RevOpsを支えるインセンティブ管理のサービスが「Xactly Incent」だ。このツールを紹介する前に、福眞氏は「なぜ今インセンティブ管理が注目されているのか」を解説する。
福眞氏によると、日本の平均賃金は30年間ほぼ上昇していない。社員の仕事に対するモチベーションが低いことを示す調査結果を紹介し「若い世代を中心に、成果に見合った報酬が得られないことを理由に退職するケースが増えている」と指摘する。
経営者にはその時々の経営戦略に応じて、たとえば「製品売り切りからサブスクリプション販売にフォーカスしてほしい」「既存顧客ばかりではなく新しい顧客を開拓してほしい」といった営業に求める方向性がある。この方向性を「インセンティブ制度」に反映することで、営業担当者のモチベーションがアップし、実際の行動変容につながってくるという。
「発破をかけるだけでは営業は動きません。経営者の描く方向性と営業のモチベーションの方向性の交差点に存在するのが当社のプラットフォーム、Xactly Incentです」(福眞氏)
Xactly Incentでは、パフォーマンスに応じたインセンティブの計算はもちろん、プロダクトや商談ごとの追加ボーナスといった柔軟なインセンティブの設定も自在にできる。支払いのプロセスにエラーが生じないよう、計算は自動化。さらに先述のXactly ForecastingとXactly Incentを連動することで、営業担当者は「この商談を成約させると自分はどれぐらいのインセンティブがもらえるのか」を確認できるという。
「達成時の報酬額が可視化されると、営業担当者のモチベーションは上がります。『ツールにデータを入力するのが億劫だ』という営業担当者もいますが、自身の報酬額を正確に把握するために、データ入力の定着化にもつながるはずです」(福眞氏)
営業担当者自ら報酬額を確認できる体制に
ここから、米国本社で多くの企業の営業パフォーマンス向上を支援してきたエリック・W・チャールズ氏と福眞氏が対談。インセンティブ(報酬)を企業が導入する意義やポイントについて語る。
チャールズ氏はまず、日本企業の生産性や従業員エンゲージメントの低さについて「成績優秀な従業員や期待以上のパフォーマンスが十分に報われていないこと」が一因と指摘。個人の生産性を向上するために個人インセンティブ制度の導入が寄与することは、さまざまな大学の研究で証明されていると語る。
福眞氏が「日本の多くの企業でチームボーナスが採用されているようだ」と話すと、チャールズ氏は「チームボーナス自体は悪くない。チーム内の調和や協力を促す効果はある。但し、生産性向上という観点では貢献しない」と強調する。
続いて福眞氏が「経営戦略に沿って営業担当者を行動させるには、どのようなインセンティブ(報酬)制度を目指せば良いか」と質問する。チャールズ氏は「まず従業員が報酬をどのように獲得できるかを正しく理解しましょう。たとえば『どの製品を売ればいくらもらえるのか』ということです。年度末になって初めて報酬の仕組みがわかるような制度ではいけません」と警告。さらに、営業担当者がスマホなどからかんたんに報酬額を確認できる仕組みの必要性を強調する。
営業変革のポイントはシステムと評価項目にあり
またチャールズ氏は、Xactly Incentの導入事例についても言及。Xactlyの製品を導入したLinkedIn社を例に挙げ「市場の急速な変化に対応しながら調整を行えるようになり、営業担当者は125人から5,000人以上にまで増えた」と紹介。Xactlyが小規模チームから世界最大級の営業部門まで対応できる、拡張性の高いソリューションであることを示す。
対談の最後にチャールズ氏は、インセンティブ制度を導入して営業改革を行う際のポイントを解説。まずはデータをリアルタイムで取り込み、共有するシステムを導入することが最優先で「制度を構築するのはそのあと」と語る。
さらに「評価項目を3つに絞ることが大切」とチャールズ氏。評価項目が4つ以上になると、従業員は自分が何を求められているのかがわからなくなり、パフォーマンスが低下することがXactlyの研究で明らかになっているからだ。さらに「会社への貢献度が高い」などの曖昧な評価基準は避け、明白な評価値を設定することも重要だと語る。
「報酬の支払いは年度末まで待たず、次の給料日で迅速に行うことが重要。人は報酬を早く受け取るほどその活動を繰り返す傾向があるからです」(チャールズ氏)
対談パートを終え、福眞氏は以下のように語りセッションを締めた。
「営業担当者1人ひとりが精度高くフォーキャストできるようになることで、確かな成果を出し、その成果に基づいて適切なインセンティブを得る。それによって営業担当者のエンゲージメントが高まり、さらなる収益性の向上へとつながっていきます。本日紹介したXactlyのソリューションに興味をお持ちの方は、ぜひホームページをご覧いただければと思います」