営業組織の不確実性も高まる時代に見直すべきポイント
RevCommはAIを搭載したクラウド型のIP電話サービス「MiiTel」を提供している。通話内容を録音・解析し可視化するサービスだ。ユーザー数は約3万6,000、通話実績は1億回を超える。芦田氏は「とくにインサイドセールス組織での活用が非常に多くなっています。インサイドセールスを導入している方や、立ち上げを検討している方にお役に立てるお話ができたら」とセッションを始めた。
VUCA時代といわれる昨今、市場の不確実性はもちろん、営業組織においてはオンライン商談やリモートマネジメントの必要性などオペレーション面での変化が起きている。こうした変化に対応できるよう、「従来の手法・体制を見直し、組織の持続的な成長を支えることが重要なポイント」と芦田氏は言う。
見直し、改善していくポイントとして、芦田氏は3点を挙げた。ひとつめは「可視化」。勘や経験に頼っていた営業活動を、データドリブンに変えていく必要がある。ふたつめは「仕組み化」で個々人に依存していた営業スキルを言語化して再現性を持たせていくことだ。3つめは「安定化」。優秀な担当者がひとり離脱すると大きく売上が崩れてしまうことが起きないように、安定的に売上を積み上げられる組織づくりをしていくことである。
土台となるシステムを整理する
実際、営業組織のDX化に取り組む企業は増えており、SFAやMAをはじめ、営業の業務にまつわるツールはたくさん登場している。しかしどのタイミングでどんなツールを導入するべきかは悩ましい問題だろう。芦田氏は手始めに「SFA」と「CTI(IP電話)」ツールを導入することを勧めた。
SFAはすでに導入している企業が多いが、CTIも「SaaS企業以外でも営業組織の分業化が進んでいる現在、非常に便利」と芦田氏は言う。SFAだけでは、インサイドセールスの通話の記録は担当者の記憶頼りになり網羅的に残りにくい。入力漏れや、バイアスのかかった情報になってしまうおそれもある。「それらの課題を解消するのにCTIは適切。ファクトベースで架電情報の自動記録や、情報の共有・管理を進められます」(芦田氏)
変化に強い営業オペレーション構築のステップ
変化に強い営業組織を目指すため、どのような営業組織・オペレーションを構築すれば良いのか。芦田氏は、4つの切り口に沿って解説をした。
ひとつめは部署の分け方について。分業化が進み「インサイドセールス」「フィールドセールス」と分かれることの多い営業組織だが、なんとなくではなく、自社の目的に沿った分業が重要になる。
商談獲得をミッションにするインサイドセールスは、反響型の営業対応をするインバウンド型と、購買力の高くない顧客に気づきを与えて行動変容を起こしていくアウトバウンド型の2種類に分けられる。「アウトバウンド型には、電話というツールが効果的」だと芦田氏。また、フィールドセールスは意思決定のリードタイムが大きく異なる「大企業」と「中小企業」で分けるのが吉だとした。
とはいえ、「売り切り型のプロダクトを提供する企業では、分業することで逆に生産性が落ちる可能性もあるため、自社プロダクトの特性に合わせて設計を検討すると良い」と芦田氏は強調した。
ふたつめの切り口は、取得/可視化すべきデータについて。インサイドセールスにおいて可視化すべきは「活動量」と「成果」だと芦田氏は明言する。活動の可視化は、「CTIを導入しているとすべて自動で取得できる」部分だ。また成果の可視化は、商談が獲得できなかった場合こそ重要だという。データを基に要素分解をし、なぜダメだったのか、課題の特定をしていく。芦田氏は「うまくいかなかったものを徹底的分析して、機会損失をゼロにしていくことが、パフォーマンスの向上に有効」と説明した。フィールドセールスも同様で、成果と活動量を可視化し、リードが足りているか、案件のフェーズ別に適切なアプローチができているかを確認できると良い。
「具体的にどれくらいの行動量が担保できているのか、失注の要因などがデータとして取得できていない場合は、フィードバックと改善の精度も落ちてしまう」と芦田氏。「アクションの改善につながる情報を、いかに細かい網を張って取得できるかが、リモート環境も増えてきている営業組織において重要」だとした。
3つめの切り口「部門間の連携」については、主にインサイドセールスからフィールドセールスに情報を引き継ぐやりとりを、どう最適化できるのか説明した。ポイントは、フィールドセールスが商談をする際に重要な情報と、マストではないがあればうれしい情報、といったかたちで、情報に優先順位をつけておくことだという。また、顧客の言葉のニュアンスを間違って捉えてしまうと、商談時に認識齟齬が生まれ不信感を覚えられてしまう。「お客様の話した内容を正しく情報共有するということが成約率にもつながるため重要です」と芦田氏は強調した。
さらに、インサイドセールスとマーケティングチームの連携も重要だという。競合とか市場環境に変化があった場合にいち早くキャッチアップできるのが顧客と会話しているインサイドセールスであるからだ。「パイプラインの入り口となるリードの拡大を実現するためにも、密にマーケチームとも連携することが重要です」(芦田氏)。
リモート環境の育成 基本の3つのアプローチ
4つめの切り口は、教育・営業スキルの底上げだ。とくにリモート環境において人材育成に課題を抱える営業組織は多い。基本のアプローチとして、芦田氏はまず次の3つを紹介した。
ひとつめの「活動量の担保」は、データをもとにきちんと振り返りをすることでメンバーにとっても管理者にとっても健全なコミュニケーションにつながるという。
とはいえ、数をこなすだけではいつか頭打ちになるため、量から質への転換も必要になってくる。そこでふたつめの「ハイパフォーマーの営業を言語化して、勝ちパターンを横展開する」が重要だ。変化の早い時代の中で、顧客の購買行動に合わせた営業トークや手法はアップデートしていく必要がある。過去のマニュアルを使うのではなく、実際に現場で活躍するメンバーを真似ることで適切かつ、早期の立ち上がりにつながるわけだ。
3つめが「実際の応対内容に対してのフィードバック」。芦田氏は「新人もベテランも、苦手領域を克服できない理由は自覚がないため」と指摘。感覚的で場当たり的なフィードバックでは、そこは改善できないという。そこで、実際の通話音声などに向き合い、定量的なフィードバックを繰り返す必要がある。
ここまで育成のポイントが紹介されたが、芦田氏はさらにマネジメントのポイントをふたつ挙げた。ひとつめは「数値はメンバーに常時公開する」というもの、ふたつめは「プロジェクトリードを現場に任せる」ことだ。メンバーがいつでも情報にアクセスできることで、自分自身で現状について考察できる。また、「ほかのメンバーと比較できる環境であれば、マイクロマネジメントをしなくても自然と活動量が増える好循環が生まれる」と芦田氏は言う。
さらに、トークスクリプトの改善や数値管理といったプロジェクトを現場に任せることで、メンバー自ら改善施策を考えることにつながる。成果だけでなくプロセスを褒める機会も生まれるため、「リーダー以上にはこのような視点が必要」だと話した。
「お客様の課題」を正しく引き継ぐことができるMiiTel
最後に、MiiTelを活用してどうインサイドセールスの生産性を向上できるのかについて解説した。芦田氏は「お客様と担当者が何をどのように話しているのか本人にしかわからない」ことで社内共有がうまくいかない「ブラックボックス化」が営業組織の大きな課題だと指摘。そうすると、なぜ成約したのか、なぜ失注したのかという要因もわからないまま、労働集約的に数をこなして「当てていく」営業になりがちだという。
MiiTelはこのブラックボックスを「見える化」することで営業組織の生産性向上に寄与する。まず、担当者と顧客がどのように話しているのか、話し方の特徴が数値化される。芦田氏はMiiTelの画面を示しながら説明した。
電話のマークを押すと左側のMiiTel Phoneが立ち上がり、パソコン上で電話ができ、通話の履歴は記録される。赤と青の波形は、担当者と顧客それぞれの声の大小を表しており、どこで話が盛り上がっているのか、どこでとくに顧客が話しているのかひと目でわかるようになっている。さらに、応対評価の項目ではカラオケの精密採点のように担当者の話し方の癖や特徴を点数化して評価できる。
もちろん、具体的に話した内容も記録され可視化される。何分何秒に何を言った、といったキーワードも可視化され、そこをクリックすると該当箇所の録音が再生される。通話の録音だけではなくて、文字起こしもあるためテキストで確認することもできるほか、内容が要約されたものまで参照できるので便利だという。
これによって、インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎも最適化できる。「ここでお客様が課題をお話ししています」などの重要な部分を、URLを発行することで共有できるのだ。実際に次の図のように、シンプルな説明で引き継ぎが可能になる。
このように、顧客とのやりとりを可視化することで共有がしやすくなるMiiTelだが、チームや個人の状態・スキルも見える化できるのが特徴だ。たとえば、「誰がいつ何回電話をしたのか」「成約したのか失注したのか」といった活動の実態と成果がサマリーで見られるようになっている。
「トップセールスの話し方の特徴を自社の型として見える化し、その型をほかのメンバーが真似ていくことで、高い成果の再現性につなげられる」と芦田氏。また、新人は研修期間の中でどれくらい成長したのか自覚するのは難しい。MiiTelで自分のトークが改善していることがわかるとモチベーションにもつながるだろう。
もちろん、MiiTelで効果が出るまでにはデータをためる期間も必要だ。「最初は普段と同じように通話し、約1ヵ月データをためていただきます。その後トップセールスとミドルパフォーマーの違いを基に、勝ちパターンを言語化。改善につなげていきます」と導入から改善の流れを説明した。
芦田氏は「まず早期のSFA・CTIの導入を進めることで顧客情報の資産化をする。そして、活動の見える化、部門間の連携を強化することが重要です」と改めて強調。そしてMiiTelによる営業オペレーション改善のメリットについて、「リモートワークでは付きっきりで教えることは難しいため、自分自身でいかに課題を見つけて改善の具体的なアクションにつなげていくかが鍵。これをモチベーション高く続けていける環境づくりができる」とした。最後に次のように述べてセッションを締めくくった。
「どの組織においても一定まではマンパワーでパフォーマンスを上げられますが、どこかで必ず頭打ちになる。そうすると労働集約型になり特定の人に負荷がかかって、人が離脱するといったサイクルが生まれます。そうなる前に、組織のスケールに耐えられるデータの蓄積とツールの活用をお勧めします。環境の変化の多い時代にも、営業組織を常にアップデートしていくために、今日のお話が少しでもヒントになるとうれしいです」(芦田氏)
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