「待ちの営業」と「攻めの営業」の最大の違い
前回の記事「『攻めの営業』へ転換せよ! 顧客からの引き合いを待つ『待ちの営業』を脱するべき理由」では、顧客からの引き合い案件に頼る「待ちの営業」のままでは新規案件の受注が難しくなってきていること、そしてそれに伴い、営業パーソン自らが能動的に製品やサービスを提案していく「攻めの営業」への転換が求められていることをお伝えしました。
そもそも「待ちの営業」と「攻めの営業」の違いはどこにあるのでしょうか。大きなポイントとなるのが「顧客のニーズが顕在化しているかどうか」です。
まず、ニーズが顕在化されている状況であれば、営業の仕事は必然的に「ヒアリング」と「既存の製品紹介資料を活用した説明」が中心になります。具体的には、顧客の現状の課題を聞き出すと同時に予算感やスケジュールを探り、最適な製品・サービスを紹介する、という流れになるでしょう。
「この製品に興味がある」と製品名を指定されたうえで問い合わせがあった際には、まずは「興味を持ったきっかけ」をヒアリングして顧客自身の現況を聞き出します。その流れで製品の機能説明と質疑応答を行ったのち、次のステップの相談をする――これがもっとも一般的な初回商談の流れではないかと思います。
こうした「顧客からの引き合い」をきっかけに、ヒアリングと製品紹介を中心に商談を展開する「待ちの営業」スタイルは、顧客に最短ルートで必要な情報が届けられ、営業にとっても事前準備がほとんど必要ありません。その効率の良さから、非常に多くの営業現場で採用されている手法です。
「待ちの営業」は、担当顧客がある程度固定されていて、かつ顧客との関係性が強固な営業チームや、知名度やブランド力のある製品を持つ大手企業の営業チームで多く見られます。もちろん、会社から表彰されるような優秀な営業パーソンが在籍していることも珍しくありませんし、「待ちの営業」そのものは「決して間違いではない」ということは声を大にしてお伝えしたいです。
しかし、昨今は引き合い案件数・規模のそれぞれが減少しているため、「待ちの営業」スタイルを長年実践していた営業パーソンに試練が訪れています――まだ明確なニーズがない(潜在的にはあるかもしれないがまだ顕在化されていない、あるいは顧客自身がニーズに気づいていない)顧客に対しても積極的にニーズを開拓していく「攻めの営業」をするよう指示する企業が増えてきているのです。
すでに売れ行きが好調な既存製品を拡販する営業パーソンに対して「来月リリース予定の新製品を売ってきてほしい」というミッションが与えられたり、既存顧客へのクロスセル・アップセルをかけ続けてきた営業パーソンが「これまで注力してきた顧客層とは異なる、新規顧客層の開拓をしてくれ」と命じられたりするなどのケースが、決して珍しい光景ではなくなってきています。
営業パーソンたちは、これまでのやり方で十分な成功体験を積み上げてきているため、新製品拡販や新規顧客開拓などの「攻めの営業」の場においても、長年の引き合い案件対応で培ってきた「待ちの営業」の手法で営業をしていきます。すると、彼らの予想に反して「商談が次に進まない」「顧客の反応が悪い」「ヒアリングしてもはぐらかされてしまう」と、苦戦を強いられる様子が散見されます。原因はいったい何なのでしょうか。