9割方、契約は決まるだろう――というときこそ、注意!
私がハウスメーカーで営業をしていたときのこと。若いお客様と商談していた。このお客様とは話が合い、スムーズにコミュニケーションもとれる。そのうえ当社の鉄骨構造の建物を気に入ってくれたし、予算などの条件面もバッチリ合っていた。商談を進めるたびに「このお客様は間違いなく契約になるだろう」と思うようになった。
ある日の商談中、お客様が突然「木造の建物ってどうですか?」と聞いてきた。一般的にお客様は”木造好み”と”鉄骨好み”に分かれる。鉄骨のライバル社についての質問ならば本気で答えたが、木造に関する質問だったため深くは考えなかった。
「そうですね、良い部分もありますし悪い部分もあります」と軽く回答した。
この軽い回答では、建築に詳しくないお客様は納得できなかっただろう。本当は、もっと明確な「良し悪し」を理解したかったはず。その後、お客様は木造会社に話を聞きに行った。(私にとっては!)運が悪いことに、お客様はそこでトップ営業スタッフと出会ってしまう。結局、競合に逆転負けしたのだ。
「どうしてあのとき、しっかりと違いを説明なかったのか……」と死ぬほど後悔したものだ。
お客様からの質問に明確に回答し、しっかり差別化をはかる説明をしていたらどうだっただろうか? お客様の購買への気持ちを強固にできただろうし、お客様が他社に話を聞きに行くこともなくスムーズに契約となっただろう。この失敗商談で反省した私は商談の終盤で必ずダメを押すようになった。「9割型決まりだろう」と思うお客様こそ、手を抜かないようにしたのだ。
たとえばこのように話を展開させる。