既存営業は、新規事業も販売できるわけではない
――キリンビバレッジの事業内容と善田さんの担当業務についてまずは教えてください。
清涼飲料の製造および販売を行っている会社です。その中で、私が担当しているのは「KIRIN naturals」という新規事業です。朝食の欠食率が高く、野菜・果物の摂取が不足しがちな20~40代の働く人たちの食生活改善と、働き方改革や健康経営に積極的に取り組む企業の支援を目的に「KIRIN naturals」のテストマーケティングを始めたのは2017年10月、サービスローンチは2019年1月下旬でした。スムージーのデリバリーと健康セミナーの出張サービスをパッケージで提供することで、企業とそこで働く人の健康を支援しています。
――これまでの御社の営業スタイルはどのようなものだったのでしょうか?
弊社には、さまざまな営業部門がありますが、KIRIN naturalsと同じように法人企業を対象にした営業として自動販売機の設置交渉をする法人営業というものがあります。従来、自動販売機の営業は、各営業担当が足しげく法人企業に通い関係を構築していくことで、お取り引きさせていただいております。
――新規事業は既存の法人営業に販売してもらうのではなく、自分たちで営業されているのですよね。
事業を立ち上げたとき、一緒に営業を担ってほしいと考えたのは法人企業と接点をすでに持っている法人営業担当でした。「健康経営」のニーズ自体も、法人営業が担当する大手企業を中心に取り組みが進んでいたので、きっと成果が出ると考えたのです。
しかし実際のところ、そうかんたんにはいきませんでした。まず、自動販売機の商談相手は総務の担当者です。健康経営は人事や労務が担当するケースが多いので、スタッフ部門と言えど微妙に違いがありました。
もうひとつ、法人営業部は当然ながら主事業である自動販売機が最優先です。その営業活動を行いながら、担当者も違う新規事業の営業を並行して行うのは活動量に限界がありました。既存事業の足かせになるのは望ましい姿ではないため、人手をかけずに販路を広げることに舵を切りました。