AIが「勝ち残る営業組織」の必須条件に
講演冒頭、今井氏は会場の参加者に対して、営業組織での生成AI活用状況を問いかけた。結果、全体の約3分の1が「使っている」と回答したものの、日常的に「毎日使っている」という回答は大きく減少する結果に。この状況はAI浸透におけるふたつの壁、すなわち「企業としてのAI導入」と「組織的活用への昇華」という課題を示している。
しかし、今井氏は「生成AI活用は、もはや不可避である」と断言する。その根拠として、まず「生産性の向上」を挙げた。労働人口の減少、採用難、退職・離職の増加といった深刻な課題を抱える現代において、既存の人材のパフォーマンスをいかに高めるかは喫緊の課題だ 。加えて、2018年には「親が子どもにならせたくない職業」の2位が営業職となる一方で、LinkedInのデータでは、2023年の求人数増加ランキングで法人営業が1位、インサイドセールスが3位であったという需給のミスマッチを指摘。この状況下で、ベテラン営業が持つ暗黙知をAIによって形式知化し、目標達成率が80%〜100%に留まる層の底上げを図ることの重要性を強調した。

また「優秀な人材の確保」も生成AI活用の大きな理由として挙げられた。今井氏のXによるセレブリックス営業総合研究所の簡易調査によると、「今働いている会社を仮に辞めるとしたら、次どんな会社に行きたいか」という質問に対し、実に74%が「生成AIや最新テクノロジーを使える会社に行きたい」と回答。このデータは、AI活用が進んでいない企業が今後、優秀な人材の採用や引き止めに苦戦する可能性を示唆している。
多くの企業がAIの重要性を認識しているにもかかわらず、なぜ組織的な浸透が進まないのか。今井氏はその理由を「使えるかがわからない」「AIの出した答えをどこまで信じて良いかわからない」「試してみたが思ったような答えが返ってこない」といった現場の声に求めた。しかし、これらの課題は乗り越えることができ、AIには非常に多くの「良い使い方」が存在すると、今後のAI活用への期待を高めた。