フィードバックの質も変化 AI活用を組織浸透させる秘訣
今井氏は、生成AIを単なる個人のツールに終わらせず、組織全体に浸透させるための具体的な戦略についても言及した。
セレブリックスでは、社員が共通して使えるプロンプトの雛形を「プロンプトライブラリ」として整備し、誰もが容易にアクセスできる環境を構築している。クリックひとつでプロンプトをセットアップできる仕組みを用意しており、これにより社員はゼロからプロンプトを考える手間が省け、AI活用のハードルが大幅に下がる。
ほかにも、AI利用率を高めるため、セレブリックスでは「専用チャンネル」や「AIアンバサダー」を設置し、社員が試して効果があった活用法を積極的に共有している。
さらに今井氏は、営業パーソンだけでなく、マネージャーがAIを使いこなせる環境を整えることの重要性も強調した。セレブリックスでは、セールスプロセスだけでなくマネジメントプロセスも細分化している。たとえば初回訪問前の準備確認項目を30個設けると同時に、各項目で活用可能なプロンプトを提示。競合分析が不足している部下に対して「やらなければだめだ」のような精神論ではなく、どのAIプロンプトを用いるべきかといった具体的なフィードバックができる環境を提供している。

営業の代わりにアイデアを議論 提案企画力を高めるAI活用
最後に今井氏は、顧客理解と提案企画力向上にAIを活用する事例として、食品業界の麺類メーカーのケースを挙げた。小売店に商品を並べてもらうには、その利益に貢献する理由付けが不可欠となる。1%でも利益を上げるためにはどうすれば良いかというと、麺類と一緒に野菜やたまごといった生鮮食品をセットで売るメニューを考えるのだ。これにより、小売店は売上が向上すると同時に、余剰在庫も解消できる。
従来はこうした「セット売りメニュー」を考案できる営業かどうかで、成果に差が生じていた。そこで今井氏は、AIに「アイデア会議」を開催させるプロンプトを紹介。「アイデア会議には営業先である小売店の部長、自社のトップセールス、食品コンサルタント、メイン顧客層の代表2名が参加します。5日間の議論を経て考え出した最適なメニューを、理由も添えて提案してください」と依頼すれば、営業は自分の仕事を進めながら質の高い提案を作成でき、企画書に落とし込むことができると説明した。