ネット不動産時代の到来 営業は“ハイブリッド型”へ
不動産売却のオンライン化は、まだ始まったばかりです。かつてリサイクルショップやフリーマーケットで行われていた個人売買がフリマアプリでオンライン完結するように、またネット証券やキャッシュレス決済が普及したように、不動産売却も数年後にはオンラインで完結するのがあたりまえになる「ネット不動産時代」が訪れるでしょう。
この進化において、従来の不動産営業モデルに見られた、営業担当者の経験や感覚に依存する属人的な構造は解消されていきます。AIやデジタルツールは、価格査定や進捗管理、契約手続きといった定型業務の効率化に加え、将来的には、新規顧客の創出や関心の高い顧客とのマッチングも自動化するでしょう。
これにより、営業担当者は事務作業や情報収集から解放されます。その結果として生まれた時間と余白は、顧客の心に届く提案や対話、状況理解へ向けられるようになるでしょう。これが、顧客満足の質を着実に高める現実的なアプローチだと考えています。

一方で、不動産取引には宅建業法をはじめとした法律が関わるため、書類作成などの業務は可能な限りAIが自動化しつつも、最終的な確認や承認は人が担わなければなりません。AIが作成した書類には、作成過程や根拠となるエビデンスをあわせて提示し、担当者が効率的に確認できる仕組みも整えることも重要です。
さらに、蓄積された業務データをAIで分析し、どこに課題があるのか、どの業務が属人化しやすいのかを把握することで、その知見を教育プログラムやマニュアルに落とし込んでいくことが業界全体の標準となるでしょう。標準化できる部分はAIエージェントが引き受け、人はより高度な判断やお客様対応に専念できるようになります。
テクノロジーと人がそれぞれの強みを活かし、共創しながら価値を生み出すことで、これからの不動産営業は、より高度で、より人間的な価値を提供する“ハイブリッド型”へと進化していくのです。