重要なのは「土台づくり」×「トップラインづくり」の連携
──まず、加藤さんが考える営業マネージャーの課題についてお聞かせください。
日本の営業マネージャーの約90%が、プレイングマネージャーとして売上目標をもちながら営業活動とマネジメントを両立していると言われています。営業マネージャーの仕事は大きくふたつあり、ひとつは組織の土台をつくること、もうひとつはトップラインをつくることです。土台づくりにはCRMの運用改善やチームのエンゲージメント向上、パイプラインのマネジメントなどが含まれますが、こうした業務に多くの時間を要するため、トップラインをつくるための戦略立案やメンバーへのフィードバックを通じた育成まで手が回らないケースが多いのが現状です。
この課題を解決するために、セールス・イネーブルメントの組織や役割を用意する企業が増えてきました。効果的なセールス・イネーブルメントには、営業現場の現状を正しく把握するための日々の商談データ入力と、その分析・活用を通じた意思決定や、施策の立案が求められます。しかし、多忙な営業担当者にとってこのデータ入力は大きな負担です。私も前職で営業マネージャーをしていたときは1日7件ほどの商談をこなし、その都度データ入力や議事録作成をしていましたが、そのために残業するのが日常になってしまっていました。
また、専任のチームがあれば必ずうまく機能するわけではなく、イネーブルメントを担う営業企画部署と営業マネージャーの間でコンフリクトが起こる傾向も見られます。営業マネージャーは、自身の営業経験や組織論への自負があることが多く、パワーバランスとしては営業マネージャーが強いケースも少なくありません。その結果、営業企画チームが研修実施部門のような位置づけになってしまい、「研修を実施しても売上が上がらない」といった見られ方をするなど、うまく接続できていない組織が多いように思います。当社もそのような状況からイネーブルメントが始まりました。
──土台づくりとトップラインづくりの役割分担、かつその連携が重要なのですね。
そうですね。最初に各役割の貢献範囲を明確にすることが大切だと思います。トップラインづくりは営業マネージャーの役割であり、その時間を生み出すためのデータ分析やCRM整備などを担うのが営業企画やセールス・イネーブルメントである、と明確化することで、良好なパートナーシップが築けると考えています。
マネージャーは「適切な」フィードバックをできているか?
──トップラインづくりに重要な「成果を高めるフィードバック」について、課題と重要性をあらためてお聞かせください。
私の経験上、成長にはふたつの方法があります。ひとつは自身でさまざまなプロジェクトを経験し、壁にぶつかりながら内省を通じて成長するやり方。もうひとつは、他者から適切なフィードバックを受け、新たな視点や視座を得てアップデートしていく方法です。
さまざまな企業にヒアリングしたところ、6〜7割の企業が上司からメンバーへの営業商談のフィードバックを実施していることがわかりました。一方で、この取り組みにはいくつかの課題があることも判明しました。まず、多忙なマネージャーにとってフィードバックの準備に割く時間は重要であるがゆえにも大きな負担となっています。また、マネージャー自身がその商材を扱った経験がなく、適切なフィードバックができているか不安を感じているケースもあります。さらに、組織の規模が大きくなると、ハラスメントへの懸念から踏み込んだフィードバックができないという課題も見られました。
こうした課題を乗り越えながら適切なフィードバックを提供していくことは、今後ますます重要になってくると思います。20代の退職者の多くが「成長機会」を求めて転職している現状からも、自社内でフィードバックを継続的に行い、エンゲージメントや成長実感につなげていくことは、組織戦略としても大切だからです。
──フィードバックに関する課題に対し、Zoomソリューション群をはじめとするSales Techをどのように活用することができるでしょうか。
フィードバックを行う際は、その基準が非常に重要です。たとえば独特な価値観を持つマネージャーからフィードバックを受けても、メンバーとしては受け入れにくいですよね。そこで注目されているのが、ハイパフォーマーの行動分析です。「ハイパフォーマーや成果が出ている営業がこのように行動しているからあなたも取り入れてみてはどうか?」という論理は、フィードバックを受ける側も納得しやすいと考えています。
この分析に非常に有効なのが、Zoomのソリューション群です。たとえばZoom MeetingsやZoom Phoneでは会話の録音・録画、文字起こしが可能で、商談の内容を振り返ることができます。また、Zoom Revenue Acceleratorというサービスには商談の分析に特化した機能があり、商談を場面ごとに切り分け、お客様の感情の変化を把握するといったことも可能です。
こうした情報が手軽に活用できるようになり、一歩踏み込んだフィードバックを行うための環境が整いつつあると感じています。
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ハイパフォーマーの実践値をベースに、行動を売上向上につなげる「ManeAI」
──そんななか、ブイキューブでは忙しい営業マネージャーのフィードバックを手助けするSales Tech「ManeAI」をローンチされています。
「ManeAI」という名称には、「マネジメントに愛を」「ハイパフォーマーをまねるAI」「マネジメントを支援するAI」の3つの意味が込められています。「ManeAI」は、ハイパフォーマーの商談データを解析し、どんなシーンでどのような対話が行われているかを分析することで、成功している営業担当者の特徴をAIに学習させることができます。
たとえば自分の商談データを「ManeAI」にインプットすると、ハイパフォーマーの基準に基づいて、評価できる点と改善点を具体的にフィードバックしてくれるんです。とくに初回商談は「型化」がしやすいため、多くの企業で活用されています。それ以外にも、決裁者への提案だったり、展示会での対応やショールームでの案内といったオフライン営業での活用だったりと、さまざまなシーンでの利用が広がっています。もちろん、アポイント取得のアウトバウンドコールの分析にも用いられています。
よく「うちにはハイパフォーマーがいない」という声も耳にしますが、そういった場合には、たとえば5人の営業担当者の商談を分析することで、各メンバーの長所を組み合わせて理想的な営業スタイルをつくり上げることができます。
「御社のハイパフォーマーはどういう営業をしているのか」という質問に対して、多くのマネージャーは答えに窮してしまうのではないでしょうか。ミクロなレベルまで把握できているマネージャーが少ないのはある意味で当然だとも思うので、まずは今の状態を把握したうえで、そこに踏み込んだソリューションを提供していきたいという思いがあります。
マネージャーとメンバーの「信頼関係」が成果につながる
──「ManeAI」の活用事例を教えてください。
ある企業では、毎週金曜日にメンバーの初回商談をピックアップして「ManeAI」に入力し、月曜日にそのフィードバックをもとに1on1を実施するというルーティンを確立しています。その企業はそもそもフィードバックができていない、離職が続いているといった課題を抱えていましたが、このような取り組みによってフィードバック文化が根づき始めているようです。
当初「ManeAI」は個人のスキル向上を主なミッションと考えていましたが、お客様の声を聞くと、マネージャーとメンバーのコミュニケーション活性化やフィードバック文化の醸成に価値を感じていただいているケースが多いです。また、マネージャーがメンバーの商談内容を把握することでスキルの見える化が進み、適切な人員配置やアサインにも役立つなど、私たちが想定していなかった便益を感じてくださるケースも出てきています。スキル向上も重要ですが、マネージャーとメンバーの適切なコミュニケーションを通じた信頼関係の構築が、結果的に成果につながっています。
もちろんブイキューブ社内でも「ManeAI」を活用しており、初回商談からの進捗率は着実に向上しています。また、これまではマネージャーからメンバーへのフィードバックが中心でしたが、メンバー自身が「ManeAI」と対話してセルフフィードバックを行う文化も生まれてきています。インサイドセールスにおいても、アポイント獲得率やSQL化率の向上にも成果が出ています。
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AIの活用が生む好循環 まずは一歩踏み出すことが重要
──ブイキューブとしても「ManeAI」を活用しているとのことですが、その知見を活かしたカスタマーサクセスチームによる支援体制を教えてください。
「ManeAI」の機能には、ブイキューブ自身が実践してきたセールス・イネーブルメントの手法が反映されています。つまり、セールス・イネーブルメントを推進している会社として蓄積してきた営業の知見が基盤となっているわけです。さらに、当社のカスタマーサクセス担当者が伴走支援を行い、フィードバックコミュニケーションの活性化といった文脈以外にも、我々自身の研修事例やデータ分析のアプローチを共有しながら、お客様とともにセールス・イネーブルメントの体制を構築していきます。
すでにAIを活用している企業に対しては、さらにトップラインを伸ばすためのフィードバック方法の提案を行ったり、AIを初めて活用する営業組織には、私たちが分析チームとなってデータ入力や分析の課題をサポートしたりします。後者については、まず現状の営業やハイパフォーマーの商談を解析するところから入らせていただき、その企業独自の営業の「型」を見出してAIに実装し、フィードバックサイクルを確立するといったイメージです。
「ハイパフォーマーがいない」という組織でも売上は上がっており、成功の理由が必ずあるはずです。その理由を言語化する過程を、コンサルティングではなくソリューションとして提供することで、スピーディーで低コストな支援を実現できる点が我々の特徴だと思います。
──今後「ManeAI」を通してどのような価値提供を目指していますか。
現在はフィードバックコミュニケーションを軸にマネージャーの負荷軽減に注力していますが、この領域をさらに広げていきたいです。たとえば、大口顧客を担当する営業チームにおいて「ManeAI」が過去の商談内容を分析し、アカウント開拓のアドバイスを提供するといった展開もあるのではないかと。
また、ヨミ会や採用面接にも活用できると考えています。理想的なヨミ会の定義に基づいて新任マネージャーのヨミ会を分析したり、採用面接官の「型」を可視化することで面接スキルの向上に貢献したりと、ハイパフォーマーがいる職種であればどんどん活用シーンを広げていけるのではないでしょうか。
──最後に、読者へのメッセージをお願いできますか。
実は営業マネージャーとしての私は、AI活用に抵抗があり、周囲に比べて少し出遅れてしまっていました。しかし、ChatGPTしかり「ManeAI」しかり、実際にAIサービスをマネジメントに活用してみたことで世界が一変しました。最初の一歩を踏み出すには心理的なハードルがあるかもしれませんが、AIを活用できる人は営業組織でも重宝されますし、伸びていく人材になると思います。
また、ブイキューブとZoomとのパートナーシップも進展しています。Zoomの機能に「ManeAI」のハイパフォーマンスロジックを組み合わせることでより効果的な営業支援が可能になるなど、Zoom Revenue Acceleratorと「ManeAI」には補完関係があります。両者を組み合わせた提案も増えており、共創関係がさらに発展していくことで、より多くの営業マネージャーに価値を提供していければと思っています。
──ありがとうございました!
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