「顧客と向き合う時間が少ない」営業職の実態
そもそもなぜ営業生産性を上げなければいけないのか。鳴海氏はマクロな視点から解説した。
コロナ禍以前と比較して、日本の生産性は1.7ポイント低下した。グローバルで日本の生産性が相対的に低いことは知られているが、コロナ禍以降、この問題はさらに深刻化している。2030年には就業人口が644万人も減少すると予想されており、ひとりの営業がより短時間でこれまで以上の成果を上げることが、企業にとって喫緊の課題となっている。
続いて鳴海氏は、日本企業の生産性が低い理由を解説した。マッキンゼーのレポートによると、日本企業のBtoB営業部門は、多くの時間を「商談の準備」や「社内のミーティング」といった付随業務に費やしているという。営業部門であるにもかかわらず、顧客と直接向き合っている時間が少ないのが実態なのである。
この課題の解決策として「顧客と会う時間をとにかく増やそう」と考えるかもしれないが、時間が有限である以上、現実的には困難だろう。生産性を上げる鍵は「付随業務に費やす時間をいかに削減するか」にある。
数々の調査レポートから、「顧客の情報を知る」という行為に多くの時間が費やされていることがわかった。顧客に関する情報があらゆるツールやメールボックスなどに異なる粒度で保管され、一元管理できていないことで、情報の収集・整理に手間取ってしまうのだ。
別の調査結果によると、1回の商談準備にかかる時間は平均で約43分、約7割の人が「商談に向けた十分な準備ができていない」と感じているという。43分という時間が長いか短いかはさておき、43分を費やしているにも関わらず、約7割の人々が十分な準備ができていないと感じていること自体が問題だと鳴海氏は指摘する。
「現場のメンバーやマネージャー、そして経営層、すべてのレイヤーが向き合わなければならないのがこの部分です」(鳴海氏)
名刺管理から営業生産性の向上へ 「Sansan」の提供価値
「営業生産性の向上」に対するひとつの解となるのが、営業DXサービス「Sansan」だ。
「Sansan」と聞いて、名刺管理を想起する人も多いだろうと鳴海氏。メールによるコミュニケーションが主流となったことやコロナ禍を経て名刺の価値・使用シーンが大きく変化したことを受けて、「Sansan」もまた、名刺管理サービスから営業DXサービスへと大きく舵を切った。
鳴海氏は、名刺管理にとどまらない「Sansan」の具体的な活用シーンを紹介した。たとえば、アプローチ先とつながっている人物を社内で探したい場合や、顧客の最新ニュースをタイムリーに把握して商談に臨みたい場合。また、退職した社員の商談記録やノウハウが失われてしまう問題に対しても、「Sansan」は解決策を提供する。部門を越えた社内の人脈の活用、接点がある人物の異動情報や企業のニュースの通知、過去のアプローチ履歴の蓄積など、すべてが「Sansan」で実現するのだ。
これだけ聞くと、複雑なシステムなのではないかと身構えてしまう人もいるかもしれない。しかし「Sansan」は、スマートフォンのカメラで名刺を撮影するか、専用のSansanスキャナで名刺をスキャンするだけで、あらゆる機能をすぐに利用できるという。名刺の登録だけすれば、その後のデータ化や情報の紐づけはすべて「Sansan」が行ってくれるのだ。こうして構造化された情報は、CRMとも連携し、スマートフォンからも確認することができる。
商談準備にかかる時間を約9,000時間削減
名刺交換をせずにZoomでいきなりオンライン商談をする時代。Sansanはこうした時代の変化にも対応した。100万件を超える企業の人事情報や反社会的勢力に関するリスクチェック、導入しているITツールなどの情報を網羅的に搭載し、現在は名刺交換をしていない企業の情報も検索可能だ。
これにより、まるでインターネットで検索するように「Sansan」で顧客情報を調べられるようになった。たとえば浅羽建設の田中さんに会おうとしている営業担当者が「浅羽建設 田中」と検索すると、2年前に社内の別の営業担当が田中さんと名刺交換した履歴や、田中さんの役職がその時点から変わっているという情報、実は田中さんが所属する部門の役員と自社の役員が同級生であることなど、“人”に紐づく情報を知ることができる。
さらに浅羽建設という企業について、注力している事業や過去3年間の業績など、最新のニュースに基づいた定性的・定量的な情報も把握できる。「Sansan」が名刺管理ツールからアップデートしたことで、営業生産性の低下を招く“顧客の情報を知る”業務を大幅に軽減したのだ。
鳴海氏によれば「Sansan」は、社内でも大きな成果を生み出したという。「Sansan」の活用によって、さまざまなツールやチャネルの情報を確認する必要がなくなったことで、従来は43分かかっていた商談準備時間を15分まで短縮。約30分の準備時間を削減した。「単純なかけ算ではありますが」(鳴海氏)、全社における月間の推定削減時間は約9,000時間に及ぶという。
こうして創出した時間を「顧客と向き合う時間」に充てることで、従来は気づかなかったさまざまな可能性が見えてくる。たとえば、アプローチしたい企業の役員と自社の役員の接点情報を早々にキャッチすることで、自社の役員に紹介を依頼するファーストアクションが可能になる。また、中期経営計画の発表をいち早くキャッチすることで、経営計画に寄り添った提案を考えることもできるだろう。「Sansan」の活用により、営業は本来注力すべき業務にリソースを割くことが可能になるのだ。
「顧客マスタデータ」として存在感を発揮
「Sansan」の活用によって情報収集にかかる時間を削減しただけでなく、把握できる情報の質も上がったと鳴海氏。実際の操作画面を見せながら、「Sansan」の効果的な活用例を浅羽建設の例に沿って紹介した。
<「Sansan」からわかること・判断できること>
「Sansan」から得られた情報をもとに、自社の高橋さんへ現大阪支店長の情報を事前にヒアリングすれば、挨拶や商談がより有意義なものになるだろう。過去の接点を含めるこれらの情報は、どれだけインターネットで検索してもわからない。しかし「Sansan」を使えば、これらの情報を速やかに解像度高く抽出できるのだ。
さらに社内の接点情報を活用すれば、自社の管理部門へアプローチしてきた企業に対して“逆提案”も可能になる。重要な顧客と接点がない場合やマネージャーとメンバーの間で認識の齟齬が生じている場合も、「Sansan」で可視化することで解決できる。SalesforceやMicrosoft Dynamicsなど外部ツールとも連携でき、情報を正確に分析するための顧客マスタとして「Sansan」は存在感を発揮するだろうと鳴海氏は語る。
講演の最後に鳴海氏は、日本通運での「Sansan」導入事例を紹介した。日本通運は2022年1月にホールディングス体制へ移行し、グループ名も日本通運グループからNXグループへと刷新。顧客の本質的なニーズを把握するため営業情報の重要性が高まり、データドリブンな営業マネジメント変革を推進する重要なツールとして「Sansan」の全社導入を決定したという。
経営層が導入目的をしっかりと従業員全員へ説明することで、現在は各部門へ浸透。事例紹介動画では、社内の人脈情報を活かした営業シナリオの作成、同じ顧客を担当する別拠点の営業担当と情報共有や営業戦略の相談、新規顧客の開拓など、現場社員が「Sansan」活用の効果と今後への期待を語った。
営業生産性の向上は一筋縄ではいかない。だからこそ、いかに素早く顧客を知れるかが重要なファクターになるという。「お客様の情報が散らばりやすいこの時代、さまざまなツールが散在する時代だからこそ、マスタとなる顧客データとして『Sansan』を活用していただき、営業生産性を高めていただければと思います」(鳴海氏)