無駄な営業をせず、最小限の労力で最大限の成果を上げる
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――今後、営業はどのようなかたちでデジタルと向き合っていくべきでしょうか。
田中 仮に3年後のことを考えるのであれば、日本国内ではそう大きな変化はないように思います。すでに導入しているツールを使いこなすことができている営業部隊はそう多くないので、ここから先の3~5年は組織におけるツール活用のキャッチアップが課題になっていくのではないかと思います。
今井 田中さんのご意見をお聞きしたいですが、これからデジタルがさらに営業と近くなるとして、改めて「人にしかできない仕事」はどのように考えたらいいですか?
田中 その人が本来持っている、その人ならではの強みをより発揮できるような環境へ変えていきたいです。人が何かを買ったり契約したりするときは、少なからず期待と不安が入り混じった「ドキドキ」がつきものです。しかし、そういった感情はロボットに投げかけても何も返ってきませんよね。その点、営業パーソンというのは、「情緒を共有できる存在」ではないかと思うんです。「人にしかできない仕事」の本質は、トークスクリプト云々ではなくて、「顧客と感情を共有すること」ではないでしょうか。デジタルツールの提供を通して、営業パーソンと顧客の双方が情緒を共有する時間を少しでも増やすことが理想です。
――それでは、人間らしい仕事に専念するために、営業パーソンが「しなくていい仕事」はどういったものが挙げられるでしょうか。
田中 営業パーソンは価値を届けたい顧客に対するアプローチ以外の業務はやらなくていいと思っています。
逆に、デジタル化とは相反するようかもしれませんが、アウトバウンドでしかリーチできない顧客が存在している以上、テレアポはやめるべきではないと思っています。アナログでしか届かない顧客がいるのであれば、手書きの手紙も立派な営業手法のひとつでしょう。とはいえ、電話や手紙のような営業手法は全員に対して実践する手法ではないので、デジタルツールを活用してスクリーニングをしていくのが理想ですよね。
今井 改めて「デジタル営業とは何か」という最初の問いに立ち返りたいと思います。僕はこれまでの話を踏まえて、「お客様になりえる人以外に営業しない環境を作ること」こそ、デジタル営業のあるべき姿ではないかと思わされました。
田中 デジタルの役割は適切な人に、適切なタイミングでアプローチする動きをサポートすること、という考え方ができますよね。
今井 「無駄な営業をせず、最小限の労力で最大限の成果を上げる」……非常に素敵です。デジタル営業の本質は、「会うべき顧客に集中する環境を作ること」、ひいては「最小限の労力で最大限の成果を出すこと」という点にあると思いますね。
ここで一度「最小限の労力で最大限の成果を出す」とはいったいどういうことなのか、整理させてください。「正しい情報を」「正しいターゲットに」「正しいタイミングで出す」という田中さんの意見に僕も同意です。注意するべき点としては、営業パーソン個人の感覚や属人性でこの3点にアプローチしてしまうと、「売れる人」「売れない人」との差が生じてしまうということ。そこで、個人の主観ではなく、できる限り「データ」を用いたアプローチを行って営業活動の確度を高めていくべきかなと。……いかがでしょうか?(笑)
田中 完璧にまとまっていました! ほかにも、自分の時間を投入せずとも顧客に製品の価値を伝えることができる「コンテンツ」の有無が明暗を分ける、という今井さんのお話も印象に残っています。