営業組織に起きた急激な変化、経営・現場ともに課題感は残る
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 田宮康一氏はまず「コロナ禍における営業組織へのインパクト」について解説。営業領域におけるさまざまな影響は、経営課題にも直結すると述べた。実際に、帝国データバンクが実施した「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年7月)」によれば、約68%の企業がコロナ禍において経営状況に「既にマイナスの影響がある」と回答しており、「今後、マイナス影響がある」と回答している14%と合わせると実に80%以上にのぼる。対して「プラスの影響がある」と回答しているの企業は3%に過ぎない。
一方、IDC Japanによる「国内デジタルマーケティング関連サービス市場 セグメント別/産業分野別予測、2020~2024年」(2020年7月)によれば、経営課題のふたつめに「営業力の強化」が挙がっている。では現場の状況はどうか。セールスヴィガ―社が7月12日に発表した営業担当者への調査によれば、約半数が「顧客との関係構築」に課題を感じており、営業成績については約60%が「やや悪化」「悪化」と回答している。テレワーク、オンライン商談は進んだが、経営にも現場にも課題が残されているようだ。
オンライン商談の利用シーンは多岐にわたるが、新規商談やアップセル、クロスセルに課題を抱える営業組織が一定数あることもベルフェイス社の調査によってわかった。商談数や受注率、新規顧客拡大などの成果が下がったと回答した組織は約4分の1。営業経験の浅い若手ほどオンライン商談に順応しているが、長年対面営業に慣れてきたマネージャーがその若手を育成をする必要があるということも課題になっていくだろうと田宮氏は指摘した。
「顧客の行動は間違いなく変容していますが、一方で『状況が戻れば営業担当者に対面で相談したい』という顧客ニーズがあるという保険業界の調査も発表されています。コロナ禍の営業チャネル変革のポイントは3つ。ひとつめは、いまの顧客を知ること。コロナ禍における行動変容が一過性なのか継続されるか、さまざまなデータを分析し変化を捉える必要があります。ふたつめは、顧客ニーズ捉えたうえで、営業チャネルを再構築、再定義することです。そして3つめが、営業マネジメントのデジタル化推進です」(田宮氏)