ガートナーは国内企業のソフトウェア契約交渉に関する調査結果を発表。本調査は、国内のソフトウェア・ユーザー企業で、かつ、ソフトウェアの選定や導入に関与している担当者のみを対象に2019年5月にウェブにて実施。有効回答数は207人。
ソフトウェアのメトリック(課金形態)はさまざまだが、ソフトウェアに関しては利用する「ユーザー」数に基づく課金がもっとも一般的。ガートナーが国内で実施したユーザー調査の結果でも、業務ソフトウェアとデスクトップ・ソフトウェアの双方で「ユーザー課金」がもっとも多く、約半数を占めた。
ただし、この傾向がいま変化しているという。ガートナーのアナリストでバイスプレジデントの海老名剛氏は、次のように述べている。
「近年では、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA) といったデジタル・テクノロジを経由するなど、ソフトウェアへのアクセス方法が多様化しています。こうした中、何をもって『ユーザー』とするかの定義が曖昧になりつつあり、接続する『デバイス』の数を測定することはより難しくなってきています。一方で、多種多様なアクセスや利用が広がる中で、ソフトウェアが処理するトランザクションの量は、これまで以上のペースで増えることが見込まれます。ソフトウェアが扱うデータ・ボリュームをベースに課金することは、ベンダーにとって新たな『商機』になり得ます。実際にこうした提案が徐々に広がりつつあります」
今回の調査結果では、データ・ボリュームをメトリックとしてソフトウェアを契約する回答者の割合は、業務ソフトウェアで11.1%、デスクトップ・ソフトウェアで8.6%と、さほど高くなかった。ただし、データ・ボリューム以外のメトリックで業務ソフトウェアを契約する回答者に対し「データ・ボリュームへのメトリックの変更をベンダーから提案されたことがあるか」とたずねたところ、「ある」が77.4%と高い割合に。業務ソフトウェアを中心に、今後メトリックの変更を迫られるユーザー企業が広がるであろうとガートナーは見ている。
「データ・ボリュームはデジタル化を背景に、近年、一般化しつつある新たなメトリックといえます。このメトリックはユーザーにとっても、メリットをもたらします。例えば、契約ユーザー数やデバイス数が足りない、といったライセンス監査にありがちな指摘は、このメトリックではあり得ません。一方で新たなメトリックであるだけに、依然として不確定かつ未成熟な側面も見られます。ユーザー企業は、このことを念頭に置き、データ・ボリュームの測定方法や従来契約とのコストの違いについて、現在の利用状況を棚卸ししたり、ベンダーと協議したりする時間を確保し、十分に準備することが望まれます」(海老名氏)