パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」は、「リスキリング(学び直し)」(※1)に関するビジネスパーソンと企業とのギャップを調査し、その結果を発表した。
※1 技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために新しい知識やスキルを学ぶこと。
調査背景
dodaが扱う約17万件(※2)の求人票において、リスキリング関連の支援体制を記載している求人票数(※3)が2021年1月から約2.7倍の伸長を見せており、企業も採用におけるリスキリング関連支援制度の重要性を認識し始めていることがうかがえる。
そこで、現在と今後の実施状況・推奨制度の整備状況、実施の目的や学びたい/学ばせたいスキル、転職への影響度などについて、個人と企業に意識調査を実施した。
※2 2022年12月27日時点。
※3 求人票内に「リスキリング、リカレント、学び直し、教育支援、資格取得支援、自己啓発支援」のいずれかの文言を含む求人。
調査概要
<個人向け調査>
- 対象者:全国に住む、転職を検討している、または興味がありリスキリングを知っている20~30代男女会社員(正社員・契約社員) ※人事担当を除く
- 集計対象数:200名
- 調査手法:インターネット調査
- 調査期間:2022年12月10日~12月14日
<企業向け調査>
- 対象者:全国に住む、リスキリングを知っている20代~60代男女中途採用・人事担当者
- 集計対象数:200名
- 調査手法:インターネット調査
- 調査期間:2022年12月10日~12月14日
調査結果
社内でリスキリング推奨(※4)に取り組んでいる/取り組む予定と回答した企業が8割以上
個人に対してリスキリングに取り組んでいるかたずねたところ、「取り組んでいる」(60.0%)、「今後取り組む予定/検討中」(29.5%)を合わせると89.5%に上り、改めてリスキリングへの関心の高まりがわかる結果となった。
なお、個人の「取り組んでいる」(60.0%)の回答内訳を見ると、「現在自発的に個人で取り組んでいる」が40.0%、「現在勤務先の指示/推奨で取り組んでいる」が20.0%となった。
一方、企業に対して現状の社内でのリスキリング推奨状況を聞いたところ、「現在取り組んでいる」と回答した企業は38.0%、「今後取り組む予定/検討中」と回答した企業は44.5%となった。合算すると82.5%となり、今後、企業の制度整備が整うことで、よりリスキリングを行いやすい環境が生まれていくと推測される。
※4 セミナー受講、大学など教育機関への通学、オンラインコンテンツを使った学習、個人学習などを通して新しい知識やスキルを学ぶことに対し、教育支援・資格取得支援・自己啓発支援などの社内制度を通じて推奨すること。
リスキリングの目的は、個人・企業ともに「スキル向上」がトップ
リスキリングに取り組んでいる個人と、リスキリングの推奨に取り組んでいる企業それぞれに理由をたずねた。その結果、個人では「スキル向上のため」(47.5%)がもっとも多く、企業では「社員のスキル向上をサポートするため」(61.8%)がもっとも多い回答となった。
2位以下は個人と企業で異なる結果となり、とくに個人においては、2位が「転職活動を見越した自身の市場価値向上のため」(36.7%)となり、リスキリングを業務効率を上げる方法のみではなく、“転職を優位に進めるための方法”のひとつとしてもとらえていることが推測できる。
課題は、個人・企業ともに「時間の捻出」「モチベーション維持」が上位に
リスキリングに取り組んでいる個人と、リスキリング推奨に取り組んでいる企業に、リスキリングにおける課題をたずねた。その結果、「時間の捻出」(個人:37.5%、企業:36.8%)や「モチベーション維持」(個人:30.0%、企業:42.1%)が上位に挙がった。
また、個人の1位に挙がった「費用の捻出が難しい」(38.3%)は、企業では5位にとどまり、個人・企業間でギャップが見られた。
そのほか上位に挙がった「社内制度の未整備」(個人:24.2%、企業:30.3%)や、個人における「自分が取り組むべきことが何か分からない」「スキルを習得する方法が見つからない」(ともに22.5%)という回答からは、リスキリングへの機運は高まっているものの準備や制度が整っていない状況が推測される。
リスキリング制度の充実で、転職先の志望度合いが上がると回答した個人は8割以上
転職活動を行ううえで、リスキリング制度の充実具合により企業への志望度合いがどう変化するかをたずねた。その結果、個人では81.0%が「志望度合いが(とても/やや)上がる」と回答し、企業も69.0%が転職希望者の「志望度合いが(とても/やや)上がると思う」と回答した。
個人がもっとも学びたいことは「語学関連」 企業が学ばせたいこととギャップ
個人にはリスキリングで学びたいこと、企業には学ばせたいことについてたずねた。その結果、個人は「語学関連」(17.5%)がもっとも多かったのに対し、企業は「思考プロセス関連(※5)」(22.5%)がもっとも多く、個人・企業間で異なる結果となった。
それぞれの内訳を見ていくと、個人は1位から3位に「語学関連」(17.5%)、「思考プロセス関連」(16.5%)、「マネジメントスキル関連」(12.5%)と、汎用性の高いビジネス力が並ぶ一方、4位、5位に「IT・DX・AI関連」(11.0%)、「プログラミング関連」(10.0%)が並び、テクノロジー活用力への関心の高さが表れた。
企業は1位から3位に「思考プロセス関連」(22.5%)、「マネジメントスキル関連」(18.5%)、「IT・DX・AI関連」(15.0%)が並び、業種を問わず進んでいるDXに必要なスキルが上位に並んだと推察される。
※5 ロジカルシンキング・クリティカルシンキング・クリエイティブシンキングなど。