テレビ番組形式で業界理解を深める⁉ 具体的なAI活用例
今井氏は、生成AIが営業活動で具体的にどのように役立つのかを、分析、準備、相談、整理の4つに大別できると述べた。とくに「準備」と「相談」に焦点を当て、具体的なデモンストレーションを交えながら、その可能性を示した。
分析
AIは、営業リストの分析において強力なツールとなる。今井氏は、営業リストの精度を高めるプロンプトを紹介。セキュリティが確保された環境下で過去3年間の受注企業データをAIに読み込ませ、「企業属性、営業所、社員数、業種・業態、担当者の役職などを分析したうえで、受注に因果関係が大きい項目をランキング形式で抽出させる」という活用法を示した。この分析結果を既存のリードリストに適用し、AIに優先順位づけをさせることで、今アプローチすべき「ホットな営業リスト」を効率的に作成できると説明した。
準備
商談準備は、生成AIがもっとも身近に活用できる領域である。セレブリックスの実際の活用例として、今井氏との重要な商談を想定した準備のデモンストレーションが披露された。AIに対し、「来週に予定しているセレブリックス CMOの今井さんとの重要な商談に向けた準備をお願いします。まず、今井さんの著者や直近3年間のインタビュー記事、SNSなどで発信している営業哲学や、今後のビジョンや事業戦略について深く分析してください。そしてその分析結果を踏まえて、商談で議論の主導権を握るような核心を突く質問や効果的なテーマを5つ、ビジネスコンサルタントとして提案してください」と依頼する。
このプロンプトのポイントは、「深く考察をしてください」と指示を与え、AIが焦らないようにすること、そして「あなたはビジネスコンサルタントです」のように役割を与えることだ。これにより、回答の精度が飛躍的に向上する。また、今井氏は「プロンプトや細かい情報の与えかたにこだわるよりも、むしろ、一度の会話で終わらせずに対話を重ねることで、より質の高い回答が得られる」と強調した。

さらにユニークな活用法として、AIに営業対象企業の社員や部長を「演じさせる」ことで、顧客解像度を高める方法も紹介された。たとえば、展示会運営会社への営業を想定し、「あなたは展示会の開催経験が豊富で、部長ですね。展示会を成功させるための段取りを、専門家ではない私にもわかるように教えてください」と依頼する。その際、「インターン生だと思って説明して」「高校生でもわかるように解説してください」といった具体的な指示を加えることで、より平易で理解しやすい情報を引き出せると解説した。
また、新しい業界やターゲットへの営業に際しては、「テレビ番組形式」で業界理解を深める方法が提案された。たとえば「展示会ビジネスをテーマにバラエティ番組を企画してください。ゲストには辛口コメントで有名なタレントの●●さんを呼んでください」とAIに依頼。これにより、ゲスト役のAIが業界の核心を突く質問を投げかけ、楽しく効率的に業界知識を習得できると述べた。
相談
マネージャーや上司への相談内容をAIに持ちかけ、自身の営業スキルを高める方法も示された。セレブリックスでは、営業ロールプレイングにAIを活用している。AIが「嫌な顧客役」を演じることで、実際の商談に近い環境で練習し、フィードバックを得ることが可能である。
デモンストレーションでは、AIが会話のラリーや切り返しの内容に基づき、お客様役の購買意欲をスコアリングする様子が紹介された。ここでは、お客様の購買意欲スコアが変動するように、あえて単純なアルゴリズムを採用していると今井氏は説明。これにより、現実の人間相手の商談と同様に、相手の「気分」や状況に応じて対応をアレンジする訓練ができるとのことである。また、ロールプレイングは敬遠されがちだが、AI相手だと社員が積極的に取り組む傾向があるという副次効果も語られた。
整理
議事録や打ち合わせ内容の要約、自身の困りごとの整理など、多岐にわたる場面でAIを活用し、効率的な情報整理・アウトプットが可能であると示唆された。