パーソル総合研究所は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)および、欧米地域を含めた世界18ヵ国・地域における就業実態・成長意識についてインターネット調査を実施。その結果を発表した。
調査概要
調査結果
コロナ禍の影響で、働く実態にどのような変化があったかたずねた。調査対象のほとんどの国・地域で「テレワークが増えた」「所得が減少した」といった変化が多く挙がった。日本では、「将来のキャリアに関する不安が増加した」「仕事の生産性が下がった」が18ヵ国・地域の中でもっとも低くなった一方、「上司や同僚とのコミュニケーションが減った」「職場における部下マネジメントが複雑になった/負担が増えた」が他国・地域に比べ上位に挙がった。
コロナ禍の影響で、「働く意識」にどのような変化があったかたずねた。18ヵ国・地域全体で「現在の会社で安定して働き続けたい」(34.1%)がもっとも多く、「仕事の生産性を上げたい」(29.2%)、「業務のデジタル化を進めたい」(27.5%)が続いた。「現在の会社で安定して働き続けたい」はすべての国でトップ3にランクイン。「業務のデジタル化を進めたい」は「タイ」(36.6%)でとくに割合が高くなり、「韓国」「シンガポール」「マレーシア」「インド」でも上位に挙がった。日本では「労働時間を減らしたい」(33.9%)、「副業・兼業を行いたい」(28.8%)という意識が他国・地域に比べて高く、「独立・起業したい」(11.6%)、「業務のデジタル化を進めたい」(21.2%)という意識は低い傾向が見られた。
現在の勤務先で継続して働きたいかたずねた。「継続して働きたい」と答えた割合は全体で71.2%。「中国」「インド」では8割以上、「日本」は56.0%でもっとも低い結果になった。
一般社員・従業員に対して、現在の勤務先で管理職になりたいかたずねた。「管理職になりたい」と答えた割合は「インド」(90.5%)がもっとも高く、「ベトナム」(87.8%)、「フィリピン」(80.6%)と続いた。「日本」は19.8%で最下位となった。
ほかの会社に転職したいかたずねた。「転職したい」と答えた割合は全体で35.2%。「インド」(56.8%)がもっとも多く、「インドネシア」(20.2%)がもっとも少なくなった。「日本」(25.9%)は2番めに少ない結果となった。
会社を辞めて独立・起業したいかたずねた。「独立・起業したい」と答えた割合は全体で35.1%。「インド」(57.9%)と「インドネシア」(52.1%)は半数を超え、「フィリピン」(43.8%)、「アメリカ」(40.7%)、「中国」(40.4%)で4割以上となり、「日本」は20.0%でもっとも少なくなった。
はたらくことを通じて、幸せを感じている就業者の割合は、全体で74.7%。日本(49.1%)は18ヵ国・地域の中でもっとも少なくなった。
成長志向度と成長実感度について、日本では「働くことを通じた成長を重要だと考える人の割合(成長志向度)」「仕事を通じた成長を実感できている人の割合(成長実感度)」の割合が調査対象の国・地域の中でもっとも低くなった。
勤務先以外で自分の成長を目的に行っている学習・自己啓発活動をたずねた。18ヵ国・地域において共通して実施率が高い学習・自己啓発活動は、「読書」(34.5%)、「研修・セミナー、勉強会等への参加」(30.4%)という結果になった。とくに「フィリピン」「インドネシア」「マレーシア」「ベトナム」「インド」において勤務先以外での自己研鑽に意欲的な傾向が見られた。一方、「とくに何もおこなっていない」割合の全体平均が18.0%であるのに対し、「日本」は52.6%でもっとも高くなった。
勤務先以外での学習・自己啓発に対する自己投資についてたずねた。全体で7割以上が「既に自己投資している」と回答。とくに「インド」「ベトナム」「インドネシア」「フィリピン」「アメリカ」では8割を超えており、自己研鑽に意欲的な傾向が見られた。一方、「日本」における「既に自己投資している」割合は40.0%ともっとも低く、「現在は自己投資しておらず、今後も投資する予定はない」という割合も42.0%となった。
「組織文化」の特徴(10分類※)を用いて、類似度により18ヵ国・地域をマッピングした。「日本」は「韓国」と並び「権威主義・責任回避」に特徴づけられた。「オーストラリア」「アメリカ」「イギリス」「ドイツ」「スウェーデン」は個人を尊重した柔軟なマネジメント、「インドネシア」「フィリピン」「マレーシア」「ベトナム」は組織の調和を重視した自由闊達な風土に特徴づけられる傾向があった。
職場における「女性」「若手」「シニア層」「人種的・民族的マイノリティ」「LGBTQ」「移民や外国人労働者」の働きやすさをたずねたところ、「日本」はいずれも全体平均点を下回った。一方、「シニア層」の働きやすさは、全体平均の3.7に対し「日本」は3.6という結果になり、「若手」の働きやすさのスコア(3.4)を上回った。
働いてみたい国・地域をたずねた。全体では「アメリカ」が1位となり、「日本」「イギリス」「カナダ」「シンガポール」と続いた。「日本」では、「働きたい地域はない(自国のみで働きたい)」が2019年調査で57.0%、2022年調査で47.2%と、他国・地域に比べもっとも高くなった。 東南アジアの「タイ」「フィリピン」「インドネシア」「マレーシア」「ベトナム」や、「台湾」「香港」では、「日本」は働いてみたい国・地域の上位に挙がる一方、2019年調査と比べると、「タイ」「ベトナム」「台湾」では日本を希望する割合が10pt以上低下した。