企業は、近年多発している異常気象による自然災害や新型コロナウイルス感染症の流行、サイバー攻撃など、さまざまなリスクに晒されている。また、従業員による情報漏洩やパワハラ・セクハラといった、企業の内部で発生する要因によって損害賠償請求を受けるなどのリスクも抱えている。
そこで日本損害保険協会は、中小企業の経営者と従業員を対象に、企業を取り巻くリスクに対する意識・対策実態調査を実施。多様化・複雑化するリスクに対する中小企業の意識、実際の被害内容や被害額、損害保険への加入状況などについて把握することができた。
同調査結果の詳細は、次のとおり。
約6割がリスクの増加を感じるも3割以上が対策無し
企業を取り巻くリスクについて、60.4%が「近年リスクが増えていると思う」と回答。直近2~3年で増えたリスクとしては、「自然災害」「感染症」「取引先の廃業などによる売上の減少」「サイバーリスク」の順に多く挙げられた。
「リスクに関して何かしら対策/対処をしているか」を聞くと、「特に対策/対処をしていない」が36.6%。その理由としては「対策をする費用に余裕がない」が21.0%、次いで「具体的な対策方法がわからない(相談先がわからない)」が13.5%となった。また、「リスクが発生する可能性は低いと考えている」も11.7%で、リスクに対する意識の低さもうかがえる。そのほか、中小企業の従業員へのインタビューでは、「自分たちではどうにもならない」「リスクが発生するパターンは様々なのでその都度対応するしかない」などの声もあった。
4社に1社が被害経験あり 被害額は「1億円以上」というケースも
勤め先の企業で「何らかのリスクにより被害を受けたことがあるか」を聞くと、27.0%が「ある」と回答。被害内容は、「自然災害」「取引先の廃業などによる売上の減少」がともに46.8%で最多、「感染症」が13.3%で3番目に多く、新型コロナウイルス感染症の影響と思われる被害(「取引先の廃業などによる売上の減少」「感染症」)が上位に入った。また、40.9%が「周囲で何らかの被害を受けたという話を見聞きしたことがある」という結果から、実際に被害を受けたことがなくても、リスクは身近に潜んでいることがうかがえる。
さらに、「被害を受けたことがある」と回答した278名に被害額を聞くと、「法令順守違反」「取引先の廃業などによる売上の減少」「勤務中や移動中における損害賠償」では「1億円以上」という回答も。内部起因のリスクである「従業員からの損害賠償請求(ハラスメントなど)」でも、「500万円~1000万円未満」が22.2%と、中小企業の事業継続を脅かすような被害額が発生していることが判明した。
「まさか自分の会社が…」担当者から実際に聞いたことがあるとの声も
「実際に被害を受けたことがある」と回答した278名に被害を受けた際の考えを聞くと、「何かしらのリスクが発生するのはしょうがないと思う」(64.0%)が最多で、「被害がこんなにも大きくなるとは思っていなかった」(54.0%)、「リスクに対する備えが不足していたと思う」(51.4%)、「うちの会社ではまさか起こらないと思っていた」(46.4%)が続いた。勤め先の企業で被害を受けたことがある人にインタビューしたところ、「うちの会社ではまさか起こらないと思っていた」という回答項目について、実際に担当者がこのように発言していたとの声もあった。
コロナ禍で「取引先の廃業などによる売上の減少」「感染症」8割以上が経営課題として関心寄せる
「取引先の廃業などによる売上の減少」「感染症」は、直近2~3年で増えてきたと思うリスクとして上位に挙がっており、経営課題としての関心度に関する設問でも8割以上が「関心がある」と回答している。現状の対策としては、「補助金などの活用」がもっとも多く(「売上の減少」に対して29.5%、「感染症」に対して22.8%)、次いで「貯蓄」(「売上の減少」に対して23.4%、「感染症」に対して14.9%)と続く。
調査概要
- 調査期間:2021年7月16日(金)~7月21日(水)
- 調査方法:インターネット調査
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調査対象: 中小企業の経営者および従業員
<条件>損害保険契約関与者(決定権あり/選定関与) - サンプル数:1,031サンプル