野村総合研究所のグループ会社であるNRI社会情報システムは、本年3月に、全国の50歳~79歳の男女3,000人を対象としたインターネット・アンケート調査を実施。シニア世代(ここでは50~79歳の層を指す)の就業実態や意識を中心に、コロナ禍がもたらした影響を把握するとともに、2021年4月から企業に対して努力義務が課された「70歳までの就業機会確保」についての認知度や賛否、さらに兼業・副業への関心や、夫婦間における配偶者の就労への意識等を調査した。
シニア世代の就労状況
アンケート回答者3,000人のうち、就労中の人は45%、求職活動中の人は2%、求職活動は行っていないが就労に関心がある人が5%、非就労で働きたくない人が48%。就労中の人の割合は、男女ともに年齢とともに低下し、特に男性では65歳を境に、就労中の人の割合が大きく低下する。
就労中の人のうち正社員として働いている人は45%、パート・嘱託の人は34%。正社員の割合は、男女間で大きな差があり60歳代の男性の約8割が正社員であるのに対して、女性では3割前後だった。また男性では65歳を境に、正社員の割合が減少し、パート・嘱託の割合が高まっている。
コロナ禍に伴う就労活動の変化
就労者に、コロナ禍の就労面への影響を聞いたところ、「収入が減少した」(36%)がもっとも多く、「労働時間が減少」(28%)、「外出機会が減少」(29%)、「家庭や自分のために時間を割くようになった」(29%)が続いた。また、「テレワークの増加」も 21%あった。
テレワークの増加はシニア世代の健康に大きく影響
テレワーク・在宅勤務が増加した層では、「足腰が弱くなった」「体力が低下した」の回答が5割を超えており、また「体重が増加した」の回答も5割近くに及ぶなど、健康面での影響を感じる割合が高くなっている。特に「足腰が弱くなった」「体力が低下した」の回答比率は、それぞれテレワーク・在宅勤務が増加しなかった人の約2倍となった。シニア世代におけるテレワークの増加に対して、健康面の配慮が必要であることがうかがえる。
「70歳雇用延長制度」に対する認知理解と評価は昨年より上昇
本年4月より開始された「70歳雇用延長制度」の認知度を昨年の調査結果と比較すると、将来、制度の対象となる50歳代後半から60歳代前半の男性層において大きく上昇し、2割を超えた。一方、女性層においては逆に認知度の若干の低下傾向がみられる。
70歳雇用延長制度への評価について、「良い制度だと思う」と「どちらかと言えば良い制度だと思う」の合計を見ると、シニア世代の6割強がプラスの評価をしている。男女・年齢を問わず、プラスの評価をする人の割合は昨年よりも大きく増加している。
兼業・副業に対して高い関心
今後の兼業・副業については、「行いたい」「関心がある」を合わせると就労者の約45%に及んでおり、関心度が高いことがわかる。
兼業・副業を希望する理由(複数回答)としては、「より多くの収入を得たい」が男女とも7割以上で、もっとも多い結果に。それに続くのは「自分のやりたいことができる」(31%)、「自分のスキルを役立てる場が欲しい」(26%)、「時間にゆとりがあるため」(22%)などだった。
配偶者の就労に対する満足度は高く、長く働き続けてほしいと考えている。
アンケート調査の対象者のうち配偶者がいる人は72%の2,148人。この2,148人を対象として配偶者(相手)の就労についての考え方をたずねた。分析に際しては、たとえば妻が考える夫の就労形態の比較対象として、配偶者の有無にかかわらず、同年齢の男性の就労形態を用いている。
配偶者の就労に対する満足度は、同年齢の男女本人の就労満足度よりも高い傾向に。特に50歳代~60歳代前半の夫の就労に対する妻の満足度は、この年代層の男性本人の満足度に対して10段階評価で1.0~1.8ポイント高くなっている。
妻は50歳~64歳の夫に対して、同年齢の男性本人が考えるよりも4年ほど長く働いてほしいと考えている。それに対して、夫が妻に対して希望する働き終える年齢は同年齢の女性本人とほぼ等しくなっている。
働いていない配偶者に、「働いてほしいか」をたずねると、働いていない夫に対して「働いてほしい」と考える妻が多く、夫の年齢が50歳代前半で約6割、50歳代後半で約4割に及んでいる。夫の年齢が上昇するとともにその割合は低下し、70歳代前半になると約2割となる。
一方、働いていない50歳代前半の妻に対して「働いてほしい」と考える夫は約2割にとどまる。
調査概要
- 調査方法:同社が提供するインターネット調査サービス「TrueNavi」によるアンケート
- 調査時期:2021年3月(19日配信、24日回収)
- 調査対象:日本全国の50歳~79歳の男女個人
- 回答者数:3000人(2020年に回答した人は今回の対象外)