“不毛な営業活動”で新人は疲弊していく
ひと昔前まで“専マネ”と呼ばれる部下を管理するだけのマネージャーが多かった。しかし近年では自分も契約をとりながら部下を育てるプレイングマネージャー、つまり“プレマネ”が多くなっている。今は自分の契約をとるのも難しい。そのうえ部下や後輩の教育までしなくてはならない。これはかなりしんどい。
たとえば新人営業スタッフを育てるとする。多くのプレマネは「とりあえず1週間、このリストに訪問してみろ」と言って放置する。結果が出ないと聞けば「もっと気合いを入れてやれ」と精神論しか言わない。ここまでひどくないとしても、近しい指導をしているマネージャーは少なくないし、それで部下が育つことはほとんどない。世の中には「こんな指導をされたら絶対に営業が嫌いになるだろうな」という活動をさせられている人が多いのだ。
あるとき、駅で待ち合わせしていると若い営業スタッフ近づいていて「名刺をください」と声をかけてきた。断ったが、しつこく食い下がってくる。理由を聞くと「今、営業研修中でして、名刺を集めているんです」と言っていた。朝から晩まで通りすがりの人に声をかけているという。ひと昔前の営業スタッフでもキツく感じるのに今の若者には耐えられないだろう。こんな指導をしていたら、せっかく採用した有能な人材が辞めてしまうことになる。今でもこんな指導をしていることに驚くばかりだ。
私の事務所には定期的に営業スタッフが飛び込んでくる。あるとき、リフォームの新人営業スタッフが飛び込んできたことがあった。「近所で工事をしますので」とかんたんな挨拶をしたあと、「高性能の新素材が出まして、こんな効果がありまして……」と突然外壁の塗り替えの話をしてきた。塗り替えにまったく興味がないことを伝えると「わかりました……」と力なく返事をした。
疲弊している様子を見かねて「たいへんだね。どのくらい飛び込みしているの?」と聞くと「マネージャーの指示で朝8時30分から暗くなるまでです」とため息交じりに答える。“数打ちゃ当たる”の方針で営業活動を行い、もちろん結果は出ていない。マネージャーに言われるまま、不毛な営業活動を続けているままでは辞めるのも時間の問題だろう。
これは訪問だけではない。研修先でのこと。研修後の飲み会で、ほとんどの新人営業スタッフが「テレアポがつらくて滅入ります」と話していた。その会社のマネージャーに「なぜテレアポをさせているのですか?」と質問したところ“新人営業スタッフに度胸をつけさせるため”と言っていた。精神面の強化について全否定はしない。しかし、これでは成功体験を得られず、やればやるほど営業が嫌いになってしまう。実際、退社する営業スタッフが後を絶たない。
どんなに能力が高い人でも嫌いなことに対しては力を発揮できないものだ。本当は結果を出せる力を持っている人が会社を去っていく。こんな思いをして辞めた人たちは二度と営業をやらないし、周囲の人に「営業だけはやめたほうが良いぞ」と言うに違いない。間違ったやり方のせいで、“営業は辛い”といった悪いイメージが広がってしまう。
ではできるマネージャーはどうやって部下を育てているのだろうか?