リモートワークが営業組織にもたらしたもの
新型コロナウイルスの猛威により、さまざまな業種・業界でテレワークが急激に普及しました。中でもIT業界は、ZoomやTeamsなどのオンラインツール導入に抵抗が少なく、パソコンとネットワーク環境さえあればどこでも仕事ができる職種が多いため、各種調査ではほかの業界と比較すると圧倒的なテレワークの普及率の高さが明らかになっています(参考:2021年4月に実施したアスクルの調査では、IT・情報・通信サービスのテレワーク実施率は83.2%)。
他業界では社員に出社を要請する企業が増える中、IT業界ではアフターコロナにおいてもテレワークを恒久的に採用する動きが主流になっています。実際に、当社が研修を提供している大手~中堅のIT企業では、緊急事態宣言が明けた10月以降もベースはテレワークで、必要に応じて出社させる働き方の方針をとっています。また、当社に舞い込む新規のご相談の大半がオンラインツールを活用した研修・コンサルティングに関する案件でした。
会社までの通勤時間や客先に訪問する際などの移動時間が削減され、その分の時間を資料作成や商談準備に充てることが可能になるなど、テレワークによって営業効率は高まりました。また、自宅で過ごす時間が増えたことで、家族とかかわる時間がこれまで以上に確保できるようになり、育児・介護を理由に離職する営業職の減少にもつながっています。このようなメリットから、IT業界ではテレワークを継続する動きが活発化し始めているのです。
一方で、出社をしない働き方ならではのデメリットも浮き彫りになりました。顧客との関係構築に苦戦する営業が増加したのです。本連載の初回の記事「『攻めの営業』へ転換せよ! 顧客からの引き合いを待つ『待ちの営業』を脱するべき理由」でも触れましたが、オンライン商談では顧客との間に心理的な壁が生じやすく、「以前のように気軽に相談してくれない」「顧客の課題をヒアリングしても本音が聞けない」などの声を、新規開拓営業・ルート営業の両方から耳にするようになりました。この課題を踏まえて売上を上げるためには、「待ちの営業」から「攻めの営業」への転換が重要であることをお伝えし、「攻めの営業」の具体的な手法について前回までの記事で解説しました。
しかし、リモートワークの普及が営業部門にもたらしたデメリットは、実はもうひとつあります。それは、営業組織内のコミュニケーション不足に起因する「社員のモチベーション低下」です。とくに、経験が浅く先輩や上司のフォローが必要な若手営業ほどモチベーションが低下してきている傾向にあります。